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「造船CIMSパイロットモデルの開発研究」の報告書

 事業名 造船CIMSパイロットモデルの開発研究
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


■事業の内容

本開発研究の2年目にあたる平成2年度は、平成元年度に実施した接続テストとパイロットモデルの設計を基にして、造船CIMSパイロットモデルのプロトタイピングとその評価並びに造船CIMS具体化構想の検討を実施した。また、本開発研究の成果を間断なく関係先に広く公表するための公開発表会をはじめ造船各社への報告と情報交換等を行うことによりパイロットモデルのプロトタイピングと造船CIMS具体化構想の検討に資することができた。
(1) 実施事項
[1] 造船CIMS具体化構想の検討
a. 造船業務の現状分析
(a) 対象業務の検討
 造船業務の現状を分析するために、広範囲且つ多岐にわたる造船業務のうちからCIMS導入の検討対象とする業務の範囲を決定し、代表的な船種、船型の製品を対象として各々の業務の業務内容及び業務の流れの概要を明らかにした。
(b) 対象業務の整理、分析
 上記で対象と決定した各々の業務について業務内容を階層化し、その機能並びに情報(技術情報及び管理情報)及び物の流れ等の分析を行い、各業務が有する問題点を整理した。
b. 造船業務環境の現状と将来動向の把握
(a) システム化状況の把握
 上記で階層化した業務毎にシステム化レベル(統合化レベル等)、現在稼働中の各社の主要システムの機能、ソフトウェア構成、ハードウェア構成、開発体制、保守体制等について調査し、現在の造船所のシステム化の状況をとりまとめた。
(b) 労働力、生産設備の現状把握
 造船業務へのCIMS導入を検討する上で考慮しておくべき、労働力(造船業務に関係する組織、人員、職種構成等)並びに工場の生産設備(自動化機器等)の現状を調査し、とりまとめた。
(c) システム技術の将来動向分析
 造船CIMSの構築に必要なハードウェア、ソフトウェア、開発手法に関するシステム技術について、約5年後の状態を文献調査を基に行った。
(d) 労働力、生産設備の将来動向分析
 造船を取り巻く外部環境(社会、経済、市場動向等)の動向を踏まえて、造船業務へのCIMS導入を検討する上で考慮しておくべき労働力(造船業務に関係する組織、人員、職種構成等)並びに工場の生産設備(自動化機器等)の将来動向を調査し、とりまとめた。
c. CIMS化方針の検討
(a) 造船CIMSに対するニーズ把握
 造船の各業務での造船CMSに対するニーズを把握するため、実務者を中心にアンケート調査を行った。
(b) 造船CIMSの具体的目標の設定
 造船CIMSの導入により期待される効果を分類、整理し、その導入により達成すべき目標を設定した。
d. 造船CIMS全体像の把握
(a) CIMS化対象業務の抽出、整理
 前述のシステム化状況の現状把握、パイロットモデルによる技術見通しを基にして、CIMS化期待レベル、開発の必要度、難易度を各業務毎に想定し、開発の優先度付け等を行った。あわせて、造船CIMS導入後の業務の主要変化点をまとめた。
(b) システムの全体構成まとめ
 造船CIMSを構成するサブシステムのソフトウェア構成、造船CIMSの運用のためのハードウェア構成、通信ネットワーク等につきまとめた。
(c) サブシステムの仕様骨子まとめ
 造船CIMSを構成する各サブシステムについて入出力データ、データ処理の概要などを検討し、仕様骨子をとりまとめた。
(d) CIMS導入後の造船所の概観
 検討対象とするモデル造船所を想定して、現状の造船所がCIMS導入によってどのように変化するかにつき検討を行い、生産性、生産設備、労働力等の観点からCIMS導入後の造船所の姿を第1次案としてとりまとめた。これは、パイロットモデルの総合評価の結果に基づき平成3年度に見直すことを前提としている。
(e) システム技術上の課題の整理、評価
 開発手法、応答速度、使いやすさ等のシステム技術上の課題をユーザの立場及び開発者の立場から整理し、評価した。
e. 造船CIMS実現方法の検討
 平成3年度に行う「造船CIMS本格開発への提言のとりまとめ」のための基礎資料として、システムの開発、導入、運用方法に関する予備調査を行い、一般的な考え方をまとめた。
f. 経済性評価方法の検討
 平成3年度に実施する予定の「造船CIMS本格開発への提言のとりまとめ」における経済性評価をまとめるための予備調査として、評価方法を検討した。
[2] パイロットモデルのプロトタイピングと評価
a. パイロットモデルの構築
(a) プロトタイピングのための機能要件の確認
 平成元年度に作成したシステム設計書を基にシステム毎の検証課題を確認し、プロトタイピングの第一ステップとして実際に画面入出力部を中心としたシステムの作成を行い、システムの構築目標を明確にした。
 対象としたのは、次の各システムである。
全体コントロールシステム
主要目・区画配置及び仕様設定システム
構造配置・寸法決定支援システム
配管配置・寸法決定支援システム
工作要領決定支援システム
日程計画支援システム
工程管理システム
プロダクトモデルシステム
データベースシステム
(b) システム構成に関わる技術的検証課題と検証方法の確認
 プロダクトモデルシステム、データベースシステムのシステム上の位置づけやプロセス間通信等、システム構成に関わるハードウェア、ソフトウェアの技術的検証課題を確認し、検証方法を明確にした。
 通信関係では、各種通信方法の効率を評価するための試作内容を検討した。また、データベースではOODB(Object Oriented Data Base:オブジェクト指向型デターベース)とRDB(Relational Data Base:関係データベース)の機能面及び性能面での比較評価を行う方法を検討した。さらに、ウィンドウ処理等のユーザインタフェースに関わる技術課題を明確にするなど、パイロットモデルのシステム構成を明らかにするために必要な項目を洗い出した。
(c) プログラム作成
 各システム及び技術検証のための試作システム毎に機能要件を満たすためのアルゴリズムをまとめ、コーディングを行った。
(d) ユーザ要件の確認
 各システムの機能毎に、作成されたプログラムについてユーザによる機能確認、評価及び開発者による再コーディングを繰り返し、ユーザ要件を明確にした。処理速度に関する機能要件等、プロトタイピングでは実現できない項目については、対象となる処理の在り方を想定してユーザ要件書にまとめた。
(e) システム全体のプロトタイピングまとめ
 各システムの必要部分を結合し、パイロッモデル全体としてのプロトタイピソグを行って、機能的、技術的な総合評価を行った。また、平成元年度に作成したシステム設計書にプロトタイピングで確認した機能要件を折り込み、改訂した。
b. プロトタイピング手法の評価
(a) プロトタイピング手法の評価方法の検討
 プロトタイピング手法の評価方法を検討し、プロトタイピングの作業に関して収集すべきデータの項目とそのまとめ方を検討した。
(b) プロトタイピング評価のためのデータ収集
 抽出された作業項目に関して日毎の記録をとり、データの収集を打った。
(c) プロトタイピング手法の評価
 パイロットモデルのプロトタイピングをとおしてプロトタイピング手法の特徴を明らかにし、従来型の開発手法との比較によってその劾果を評価した。ユーザ要件の確認の作業をとおしてユーザと開発者双方の満足度、感想などの評価も行った。
[3] 報告会の開催
a. 平成元年度事業の成果発表会
 本開発研究に参加していない造船各社を含め。広く一般に公表することを目的として、平成元年度実施内容と成果について平成元年度報告書のレベルで全般説明をし、さらに、事業の目的に掲げた4項目の技術検証課題に関連する実施事項の事例を具体的に説明した。
b. 造船CIMSワークショップ
 本開発研究の成果が間断なく造船名杜に受け入れられ、利用されるよう、開発に参加している造船各社の実務担当者を主たる対象にして、平成元年度に実施したパイロットモデルの設計内容について報告し、造船CIMSに関する意見交換をした。
c. 造船所報告会の開催
 造船業務検討作業部会の課題毎の検討作業を各造船で実施した機会に、平成2年度開発研究の最新実施状況の報告と造船CIMSに関する各造船所の現地との情報交換を行った。
(2) 会議の開催等
委員会    3回
推進部会   5回
作業部会   6回
専任チーム  (財)シップ・アンド・オーシャン財団にて年間集中作業実施
(3) その他
コンピュータ、システム技術に関するセミナー等への出席  24回
ハードウェア、ソフトウェアに関する展示会調査       4回
■事業の成果

造船CIMSパイロットモデルの開発研究の3年に亘る全体計画における2年度の事業として、造船CIMSの具体化構想の検討及びパイロットモデルのプロトタイピングと評価を行い、造船CIMS本格開発への提言を行うための数々の貴重な資料が得られた。また、計画している平成3年度の作業内容に継続できることが確認できた。
 本年度得られた主要な成果は、次のとおりである。
(1) 造船の各業務に必要な大部分の情報を生み出している設計、生産に焦点を当て、それらを階層的にレベル分け及び分野分けし整理することにより、また、別途実施した造船所実務者へのアンケート及び各種報告会での情報交換により、造船の設計、生産の各業務毎に情報処理に関する現状の問題点として、次の項目が把握できた。
[1] 設計ノウハウや実績データを活用した最適設計をするためのツールが不足している。
[2] 設計業務における船殻と艤装間、艤装同士の間の調整が図面を媒体としてなされていることに起因する情報伝達ミスがある。
[3] 設計手順の標準化不十分のため、非熟練者による設計が困難である。
[4] 客先・船級協会の承認取得タイミングの遅れ、購入品メーカ選定遅れ等に起因する後戻り作業発生による設計工数、設計期間、品質確保面への悪影響がみられる。
[5] しっかりした物量情報がタイムリーに得られないことに起因する生産業務での原価、品質、日程等の計画機能への悪影響がみられる。
[6] その他
(2) 本開発研究参加各社のシステム統合化レベル、応答速度等のシステム化程度、並びに主要システムの機能、構成、問題点等を調査し、システム化の現状として次の点が把握できた。
[1] 設計部門では単独のシステムが大半で、統合化部分が少ない。性能設計分野における性能・仕様検討と決定、各設計分野における配置決定と一品情報決定等に一部統合化がみられる。
[2] データ整合性チェックを支援するシステムが不足している。
[3] システムの操作性は、満足できる程度であり、製図システムの出力の程度は高い。
[4] 詳細設計からの一品情報を基に材料取り、ネスティング、NC切断、NCマーキングにつながった一定レベルのシステム化がみられる。
[5] 素材、艤製品等の納期・在庫管理システムが稼働しているが、一方、品質計画、工作要領設定、検査等はすべて人手に頼っており、生産工程における船台工事、進水後工事等の後工程においては、独立システムすらない。
[6] その他
これらの点を考慮し、一方、造船CIMSを実現するために必要なハードウェア、ソフトウェア等のシステム技術の予測を行い、造船CIMSの狙うべきレベルを見極め、造船CIMS全体像に反映できた。
(3) 本開発研究参加各社の労働力及び主要生産設備の現状調査と、それを基にした将来動向予測を行い、システム化の必要性として次の点が把握できた。
[1] 労働力については、現状の年齢構成も偏ったものとなっているが、lO年後から極端な高齢化がはじまり、50才以上の作業者が大半を占める状態になり、その後ベテランが一挙に減少する。
 この対策として、一元化された設計、生産の情報システムを構築し、べテランのもっている知識の継承が可能な知識ベースを確立し、その情報を活用して、設計部門では定型的な業務を可能な限り減少させ、生産部門では設備化と自動化による効率化と省人化を図り、女性技術者や定年退職者を活用できる仕組みを整える必要がある。
[2] 生産設備については、すでに実用化されている合理化設備のより一層の性能向上と適用拡充を図ると共に、塗装や搬出等のための新しい合理化設備の導入が必要である。また、小組立工程までは少なくとも船殻、艤装共に素材の搬入から一貫した自動化が、組立工程以降についても製品の大きさ、形状の複雑さ等が小組立工程までとは大きく違うため、一貫した自動化は難しいと判断されるが、部分的、局所的な適用が必要である。この合理化を効果的かつ効率的に達成するためには、造船固有の生産業務のための技術情報のあり方及び製造技術の明確化を行い、汎用設備の活用の基に造船独自の設備を開発することが肝要である。
(4) パイロットモデルのプロトタイピングを通じて、平成元年度にパイロットモデルの各システムに対して整理した技術的課題が検証され、造船CIMS全体像での実現機能、システム構成に反映できた。
 また、この過程でプロトタイピング手法が有効であることが確認できた。
(5) 17のサブシステム(即ち、設計管理、基本計画、性能設計ほかの各アプリケーションプログラム)とプロダクトモデルシステム及びデータベースシステムの19システムから成るシステム構成を決定し、各サブシステムと業務との対応、各サブシステムのつながり、並びにソフトウェアのモジュール構成とハードウェア構成を検討することにより、造船CIMSの全体像を明らかにできた。また、その導入による造船所の生産設備内容、コンピュータシステム、組織、労働力の質等に予測される変化を整理できた。
(6) 2.3節に示した造船CIMSについて、その開発方法、導入及び運用方法、経済性評価方法の考え方につき検討し、平成3年度に予定されている造船CIMS提言取りまとめのための次の指針を得ることができた。
[1] 開発方法については、プロトタイピング手法による開発と実用化を並行して実施するのが良いことを基調とする。
[2] 開発範囲については、システムの階層化を極力図り、ソフトウェアのレイヤ毎に、購入か開発か、開発ならば共同か個別か、いずれが最適であるかを見きわめること。





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更新日: 2020年4月4日

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