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「高速船用水中障害物衝突回避支援装置の開発」の報告書

 事業名 高速船用水中障害物衝突回避支援装置の開発
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


■事業の内容

水中の障害物及び鯨類を探知、又は忌避させて衝突を回避するために、水中での伝播減衰等を考慮した場合、電波や光は使用できず、最も有効な超音波を利用して、探知、又は忌避させる装置を開発しようとしたものである。最終年度にあたる本年度においては、前年度に検討した新技術や改良技術を設計に取り入れて装置の製作を行い、評価試験をしてその試験結果の解析を行った。
(1) 水中障害物探知装置の開発
[1] 試作装置の製作
a. 送受波器及び送受信器の製作
(a) 探知性能を向上させるために音源の送波音圧を上げていくと、圧力変動によりキャビテーション(空洞現象)が発生するので、このキャビテーションを制御するために、振動子の面積を寸法制約のあるところで最大限確保するとともに、送信電力をキャビテーションの一歩手前まで入力でき、最大送波音圧が得られるような送受波器及び送受信器の製作を行った。
(b) 位相合成によるビームを合成し、高い送波及び受波指向性利得が得られるよう多数の素子を配列し、フェーズドアレイを構成する送受波器及びこれを駆動する送受波器の製作を行った。
(c) 外部振動に配慮した耐雑音性のよい構造を有する送受波器の製作を行った。
b. 制御指示器の製作
(a) 船速信号を自動または手動入力し、音波のドップラーシフトを補正の上、相関演算を高速で行う信号処理回路の製作を行った。
(b) 複数回の受信検波信号を加算等の演算処理をする相関演算手法の組み合わせをソフトにて選択可能とし、S/N比の改善を図った回路の製作を行った。
(c) 表面画面を構成する画素の平面空間の演算を行い、特定の一画素のデータとする空間フィルター手法を採り入れ、信号とノイズの識別を行った。
(d) 途切れがちな信号を維持するために、上記の信号処理を終了し、得られたターゲットの信号に対し、1回でも検知した信号レベルを記憶しておき、次回得られた信号と比較し、大きい方の信号を表示する残像方式を採り入れた。
(e) 画面上で障害物であるとの認識を容易にし、かつ視認時間遅れを極力短くするために、P.P.I.(Plan Position Indictor)方式の映像表示回路の製作を行った。
[2] 評価試験
 工場の水槽及び海上にて、装置単体での送波音圧及び指向特性等を計測し、基本性能を確認した後、上記装置を音響ドームに組み込み、ジェットフォイルに搭載し、水中にセットしたターゲットに対する探知テストを行った。
[3] 試験解析及び報告書作成
 評価試験結果をターゲットTS値、探知距離、探知確立及び海象状況等から解析し、試作装置の探知性能について取りまとめを行った。

(2) 鯨類忌避装置の開発
[1] 試作装置の製作
a. 水中スピーカー及び信号増幅器の製作
 周波数帯域が広くて、かつ送波音圧レベルの高い水中スピーカー及び信号増幅器の製作を行った。
b. 鯨類が忌避する可能性のある音源に関する調査結果に基づき、5種類の音を録音したテープの作成を行った。
[2] 評価試験
 工場試験で送波音圧及び周波数特性等を計測し、基本性能の確認を行った。また、スペインCTM社の協力を得て、鯨類が回遊するカナリー諸島海域において、ラスパルマス大学が所有する調査船に試作装置を搭載し、評価試験を実施した。
[3] 試験解析及び報告書作成
 忌避音を発射した時の鯨類の挙動及び反応について、目視、水中マイク、ビデオカメラなどで観察、及び録音・録画を行い、その効果を解析し、取りまとめを行った。

(3) 音響ドームの開発
[1] 試作ドームの製作
a. 音響特性を考慮した材質及び構造を有する音響ドームの各種試作を行った。
b. 高速で航行することにより発生する各種ノイズの低減対策として、主に内部に遮音材を設けた音響ドームとその表面の外側にゴムをライニングした音響ドームの試作を行った。
[2] 評価試験
 試作した各種音響ドームの透過損失及び指向特性を、試験水槽にて計測し、音響特性の確認を行った。又、探知装置のジェットフォイルを使った評伝試験において、走行ノイズの実船計測を行い、データの記録を行った。尚、ゴムをライニングした音響ドームについては、超音波を長期間にわたって照射及び実船に搭載し、耐久試験を行った。
[3] 音響ドームの透過損失と指向特性がドームの内部構造や肉厚にどのように影響されるかを解析した。また、ノイズ対策無しと有りの音響ドームで航走ノイズレベルにどの程度の差が出るのかを計測し、取りまとめを行った。
■事業の成果

本事業の実施により、高速船用水中障害物衝突回避支援装置の個々の構成装置である水中障害物探知装置、鯨類忌避装置、音響ドームの製作について、必要とされる技術の確立が行えたと共に、初期の目標とする性能をクリアーできた。個々の装置についていうと、水中障害物探知装置の開発では、小型で高出力、かつ位相合成により高い送波及び受波指向性をもつ送受波器を製作して見易い映像表示を実現できたと共に、その中の制御指示器の製作では、相関演算手法を含む高度信号処理技術を確立し、平穏な海象で、2mのイルカに相当する小型の物体まで探知できる性能を確認できた。
 忌避装置においては、周波数範囲が広く、かつ送波音圧が高いスピーカー及び信号増幅器を製作できたとともに、5種類の忌避音源を作成し、それぞれの音源について鯨の反応を見たが、中でも10kHzのパルス波に特に反応を示したことを確認した。ここでは、鯨が反応を示したことを確認した。ここでは、鯨が反応を示したであろう音源を特定できたと共に、全く反応を示さない音源についてもデータの収集ができた。
 更に、音響ドームの製作においては、音響透過損失の最も少なく、指向性に優れた材質、構造を確認すると共に、音響ドームの内部特性を把握できた。今回音響ドームにはノイズ対策を施したが、この対策の過程で音響ドーム表面外側に十分な接着力と耐久性を有するゴムライニング技術を確立できた。このライニング技術の確立により、ノイズレベルを約20〜30dB低減させることに成功した。
 今回開発した装置の効用により、高速船における水中障害物との衝突事故の軽減が期待できるとともに、本開発で確立した技術やノウハウを発展させて更に性能の優れた装置の開発に向けての基礎地盤づくりが行え、更なる船舶の安全航行に寄与するものと思料される。





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更新日: 2020年4月4日

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