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外洋における油流出事故対策の調査研究報告書

 事業名 海洋における油流出事故対策に関する調査研究
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


2.2 主な油流出事故の概要

2.2.1 Exxon Valdez号油流出事故

(1)発生状況

1989年3月24日、Alaska North Slope(ANS)原油を積んだ全長約300mの「Exxon Valdez号」がアラスカのプリンス・ウィリアム湾のブライリーフで座礁した。この事故で、約36,000トン(約41,000kL)のANS原油が海上に流出した。

 

(2)対応

初期の対応作業は、Alaska Pipeline Service Companyとこれにより通報を受けた米国沿岸警備隊(USC:GUnited States Coast Guard)によって実施された。次いで現場に到着したExxon社の社員は、USCGの連邦現場責任者(FOSC:Federal On-Scene Coordinator)の指揮の下で、残存原油の抜き取り、流出油に敏感な区域の特定・保護、海上からの流出油除去、海岸線からの油の除去の4項目を優先任務として対応作業にあたった。

しかしながら、海上における油回収装置等の機械装置は、その台船として使用する予定のはしけが修理中のため、初期の数日間は大半が使用できず、機械装置による機械的防除・回収はほとんどできなかった。また、この状況で海上対応に関して残された唯一実用的な方法は、分散処理剤の空中散布であったが、現地のFOSCが州政府機関と漁業従事者等、民間のグループ等多くの利害関係者に対して、分散処理剤の有効機能立証実験の実施を決定したため、分散処理剤使用の機会を逃した。これにより、海上における防除作業設備はほとんど有効に活用されず、海上で回収されたのは、油回収装置による回収、約9400t(油含有率約25%のエマルジョン)でしかなかった。なお、沿岸海域への大規模な被害が予想されたため、特に敏感な地域として鮭の孵化場をオイルフェンス等により保護した。

油がプリンス・ウィリアム湾とアラスカ湾の海岸線に到達した後、Exxon社、政府および現地グループの手により海岸線の洗浄が行われた。プリンス・ウィリアム湾外部の海岸線汚染は軽度であったため、シャベル、バケツ等を用いた手作業により除去できた。しかしながら、プリンス・ウィリアム湾内の汚染は深刻で、海岸線は油除去のための洗浄が必要であった。このため海岸線に付着した油は、冷水や高温水により入江に洗い流された後、オイルフェンスで包囲され、油回収装置による回収後、分離と処理に回された。

 

(3)被害状況及び回復状況

事故による油の流出量が世界の大規模油流出事故の中では比較的少なかったにも関わらず、海上における対応が不十分なことにより、海岸線への影響が極めて大きい事故であった。

特に上記のように分散処理剤の有効機能立証実験の要求により、分散処理剤の使用が遅れ、この間に天候が悪化し、暴風雨と高い波によって油をエマルジョン化し、プリンス・ウィリアム湾とアラスカ湾の広い範囲(約2000km)にわたって、海岸線に汚染が及んだ。

また、海岸線洗浄に際し、高温・高圧水を使用したことにより、潮間帯生物や海中の油分解性菌の死亡、あるいは活性低下という防除作業による二次的被害が発生した。

海岸洗浄作業が終了した後の1989年から1990年にかけての冬季に、当該海域海岸線の油量が急激に減少していったことが、プリンス・ウィリアム湾内の16ヶ所の監視場所で収集されたデ―夕から明らかになった。この自然浄化は、当初、冬季の暴風雨による波動作用の効果であると思われていたが、海況の静穏な区域においても同様に油が除去されていることがわかった(Lessard,1997)。この原因は、粘土等微細な鉱物粒子と油中の極性を持った成分との間の相互作用が、海面上及び海面下の油の移動と除去を促進し、重要な役割を果たしているためであるということが後の研究でわかり、海岸線における自然浄化に対する新しい認識をもたらした(Jahns et al., 1991)。

また、栄養塩を散布することにより油分解微生物が活性化し、自然の回復能力に比べて数倍速く回復することがわかった。

 

 

 

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更新日: 2020年9月19日

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