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米国における船舶のクリーン推進システム開発プロジェクトに関する調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


1−3 排ガス浄化の取り組み
(大気浄化法;連邦政府と州政府等の関係)
 米国において、本格的な環境立法と環境問題に関する政府機関のスムースな対応が確立したのは全て前述のNEPA以降である。NEPA成立の翌年EPAが設立され、また、大気浄化法CAA(Clean Air Act)が成立した。しかしEPA設立後の最初の10年は、CAAに基づく連邦方針と州や地域の方針との間で軋礫が多く、州や地域と相談しながら具体的対策を進めるようになったのは1980年代に入ってからであった。CAAは水質浄化法CWA(Clean Water Act)と共に州及び地域の独自立法権を認められているが、大気という境界を作りにくい対象に対する規制であるため、CWAよりは立法の自由度はずっと制限されたものになっている。
 但し、CAA成立前に独自の大気汚染防止規定を施行したカリフォルニア州は、完全な独自立法権が認められており、本報告書の中でもカリフォルニア州全体の大気環境規則の中心であるカリフォルニア大気資源局CARB(California Air Resources Board)や米国で大気汚染の最もひどいロサンゼルス、サンベルナルディー、リバーサイド及びオレンジ4郡を含む、南カリフォルニア沿岸大気盆地の大気環境を管理するカリフォルニア南部沿岸大気管理庁の独自規制法が各所に出てくる。その他、CAAがらみで独自の規制法を出しているのはワシントン州のピュージェット・サウンド・クリーン・エア局やアラスカ州であるが、その他の大部分の州は、EPAがCAAの精神に基づいて作成した基本方針を基に自州の大気清浄法を作り、EPAの承認を受けて施行している。但し、ニューヨーク州のように大都会を抱え込む州では、排ガス浄化の取り組みの一部、例えば無公害車関係ではCARBの規則をそのまま採用している州もある。
 
(1990年の改正大気浄化法とその他の法律)
 CAAは公布後何回か改正されているが、最も重要な改正は1990年の改正CAAA(Clean Air Act Amendments of 1990)である。CAAAにはいくつかの重要事項が盛り込まれた。ガソリンの一部を燃焼促進剤(酸化剤、地下水汚染が問題となっているMTBE等)と置き換えた置換燃料使用促進のための酸化剤燃料プログラムOFP(Oxygenated Fuels Program)や、ガソリンの組成を変えて排ガスを浄化しようとするガソリン改質プログラムRFG(Reformulated Gasoline Program)が発足したのもCAAAの指示に基づくものである。その他、CAAAには発電所から排出されるSOxを2010年までに年間8.95百万トンとすることやEPAがNOx削減の具体案を作成すべきことの指示等が盛り込まれている。
 
 CAAAが成立した1990年前後に大気浄化に関し、2つの重要な法案が成立している。1つは1987年の国家器具エネルギー保存法NAECA(National Appliance Energy Conservation Act of 1987)であり、他は1992年のエネルギー方針法EPACT(Energy Policy Act of 1992)である。NAECAはホットウォーターメーカー、エアコン、冷蔵庫といった家庭用、事務所用電化製品のエネルギー効率基準について、DOEが定めることを求めた法律であり、EPACTは政府所有の建物或いは政府がローンを支払っている建物のエネルギー効率基準を定めたものである。更に、1993年クリントン政権により気候変動アクション・プランCCAP(Climate Change Action Plan)が出され、2000年迄に温室効果ガスを1990年の水準とするための44のアクションが示されたが、法律ではなく、自主的参加基準のようなものであったので、現在ではCCAPは機能していない。排ガス浄化の取り組みの中で最も効果的な手段は自動車からの排ガス規制であるが、4−2節で詳述する。
 
(舶用機関の排ガス規制)
 船舶の排ガス浄化については、自動車や工場からの排ガス規制の陰に隠れて規制対象として重要視されない時代が長く続いた。EPAは1994年、CAA213(a)に基づき、37kW以上の非道路用内燃機関(ディーゼルエンジン及びガソリンエンジン)に対する排ガス規制の最終規則を公布した。EPAは引続いて1994年11月9日、舶用内燃機関からの排ガス規制規則(Emission Standards for New Gasoline Spark Ignition and Diesel Compression Engines)に関する規則提案NPRM(Notice Of Proposed Rule Making)を出し、各界からの意見を聴取した。このNPRMの中でのディーゼルエンジンからの排ガス規制値は、NOx9.2g/kW・hr、HC1.3g/kW・hr、CO11.4g/kW・hrであり、上記の非道路用のそれと同じであった(但し、船舶エンジンの場合は、エンジンの出力の上限に関係なく適用される。)。また、このNPRMには1998年以降、本規則を満たさないエンジンは、課徴金を支払わなければならないという条項(同様の条項は、ハイウエイトラック用のエンジンにも規定されており、昨年一部大手ディーゼルエンジンメーカーがこれを達成できなかったため、市場競争力に大きな影響が出ることが懸念されたことで有名)があったため、舶用業界は施行前からかなり真剣に対応していた。しかし、上記NPRM及びその後出された追加規則提案に対する各界の反応を検討後、EPAは舶用ディーゼルエンジンに対する方針を変更し、上記NPRM及び追加規則提案からディーゼルエンジンに関する部分を削除し、とりあえずガソリンエンジンについての規制規則のみを定めることとした。
 
 EPAがディーゼルエンジンに関する規制を先送りした背景には、当時IMOにおいて大型船の排ガス規制MARPOL73/78付属書VIの検討が進んでいたことが上げられる。ディーゼルエンジンについては、その後、先行規則提案を出し、各界の意見を再聴取後、最終規則(Control of Emission of Air Pollution from New Marine Compression-Ignition Engines at or above 37kW)が公布されたのは、1999年12月29日になってからであった。但し、本規則も舶用ディーゼルエンジンの全てを網羅したものではなく、37kW以上の商業用船舶の主機及び補機に使用されるカテゴリー1(気筒当たりの排気量5リットル以下)及びカテゴリー2(気筒当たりの排気量5−30リットル)のエンジンの2004年モデルからの製品を対象としており、2004年以前に建造された船舶やエンジンには適用されない。本規則が公布された時点において、EPAは今後、リクリエーション用ボートに対する基準、37kW以下のエンジンに対する基準、再生エンジンに対する基準、カテゴリー3エンジン(大型船のエンジン)に対する基準を次々と出すことを公約し、順次基準案を提出している。
 
(大型船用エンジンの排ガス規制)
 カテゴリー3エンジンは、気筒当たりの排気量が30リットル以上の大型航洋船用のエンジンであり、MARPOL付属書VIが発効しない前に米国が独自のカテゴリー3規則を出した場合、舶用業界に混乱をもたらすことが懸念されていた。
 付属書VIの発効要件は、国数で15ヶ国以上、その合計船腹量がGTベースで世界商船隊の50%以上の国々が批准した後、12ヶ月後に発効することが定められており、2002年12月31日までにこの条件が満たされなかった場合(これは達成されなかった)は、IMOの海洋環境保護委員会が付属書VIの発効を妨げている障害の究明に当たることが議定書に明記されている。
 EPAは、元来、舶用ディーゼルエンジンからの排ガス規制を時点と技術的内容から3段階に分けて進めることを公言している。
■第1段階(Tier 1)は付属書VIの適用
■第2段階(Tier 2)は前述した1999年12月の最終規則策定時の技術段階
■第3段階(Tier 3)はディーゼルエンジンの排ガス技術が更に進んだ将来技術
という区分けである。米国クリントン政権は上院にその批准を諮らなかったが、2002年5月、ブッシュ政権は批准に関する国内手続を進めることを公表した(この国内実施法案はEPAが作成したが、第1段階だけでなく第2段階まで規制案に規定するか否か等が問題となっている。)。他の海洋環境案件でもそうであるが、米国が批准した場合これに適合しないと米国への入港が規制されるため、他の海運国に与える影響が大きく、付属書VIが2003年以内に発効する確率が高まっている。一方、EPAは2002年4月30日、大型舶用ディーゼルエンジンに対するNPRMを出し、一般のコメントを募集した。規制案の最終取り纏めに関しては、ディーゼルエンジンメーカーや環境団体の厳しい対応が予想され、米国の批准にはかなりの日時が必要と思われる。
 
(燃料の低硫黄化)
 ディーゼルエンジンから排出される大気汚染物質を減らすためには、燃料中の硫黄分の除去が不可欠である(SOxのみならず、その他の有害物質の除去に必要な触媒の被毒防止という点からも不可欠である。)。この低硫黄燃料の導入に積極的なのはヨーロッパである。スウェーデンは既に硫黄が混入していない燃料の使用を要求しているが、英国もすぐ追従の予定である。英国では2005年に10PPm以下、2010年にゼロを目指している。2000年5月、EPAはヘビーデューティー・ディーゼルエンジン中に含まれる硫黄成分に関する基準を出している(Proposed Heavy Duty Engine and Vehicle Standards and Highway Diesel Fuel Sulfur Control Requirements、EPA420−FOO−022 Regulatory Announcement、May2000)。
 EPAは現在、ピュージェット・サウンド・クリーン・エア局、その他ワシントン州の地域団体と共同で、米国最大のディーゼルエンジンのクリーン・エア・プログラムを実施中であるが、燃料中の硫黄成分を減らすことに主眼が置かれており、対象は陸上のトラック、バス、海上の船舶も含む、大規模なものである。







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