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米国における船舶のクリーン推進システム開発プロジェクトに関する調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


4−2燃料電池の政策動向
(DOEの技術開発戦略)
 1−2節で述べた包括的国家エネルギー政策の中で、DOEは第1−2表に示すように、ゴール1エネルギーシステムの効率改善の目標、同2交通、産業、建造物各部門のエネルギー効率を2010年までに抜本的に向上させることを掲げ、そのための技術開発を促進すべきことを強調している。目標を達成するための具体的戦略として示されているのは下記三戦略である。
 
■戦略1−交通部門は97%のエネルギー源を石油に依存し、国家全体の石油消費量の2/3を消費している。実施すべきポイントは下記である。
■乗用車の燃料効率を2010年までに現在(1997)の3倍に改善する。
■より軽く、クリーンなヘビー・デューティー・エンジンを開発する。
■航空用エンジンのエネルギー効率を向上する。
■2005年までに交通部門で燃料電池を実用化する。
 上記の実現の手助けとして、クリントン大統領は革新的技術を用いた燃料効率の高い車を買う消費者に対し$3,000−4,000の税クレジットを与えている(付録3)。米国政府の未来車像は2010年に80mpg(mile per gallon)を達成し、ゼロ汚染で、加速性能、航続距離、安全性、その他は現在の最高性能車と同じで且つ価格的に安価なものである。エンジンとしては(ハイブリッド車か)燃料電池車を挙げている。燃料電池車は現在のガソリン車よりも排気が70−90%クリーンであり、また、米国の自動車の10%が燃料電池車に切り替わると石油輸入量が年間130百万バレル減少する。燃料電池車が大衆車として量産されるためにはより軽く、安くなければならないが、研究スピードが加速されているので2005年には実用化のメドがつくと考えられている。この関係で、船舶関係では、4−5節で述べるMARADの燃料電池関連の諸プロジェクトが着々と進行しており、その他第2章で述べた舶用ヘビー・デューティー・エンジンの改善も進んでいる。
 
■戦略2−米国のエネルギーの1/3を使用する産業部門の技術開発の推進。
■2010年までに米国の6大エネルギー消費産業分野の消費量を25%削減する。
 6大産業分野とは森林及び製紙産業、製鉄、アルミニューム、金属鋳造、ガラス、化学工業である。技術開発手段として挙げられているのは、革新的タービン・システム、コジェネレーション、材料センサー・コントロールの技術革新等である。
 
■戦略3−米国のエネルギー消費量の39%を消費している建造物部門の消費量を2010年迄に半分に減らすことを目標に法整備、技術開発を進める。
 建造物部門では建物自体のエアコン、防熱方式等の改善や太陽エネルギーの積極利用等、種々の技術革新が考えられるが、エネルギー供給方式も次第に分散型発電方式に切り替わっていく。これらの技術を結集した家をBP(Best Practices)ホームと呼んでいるが、既に10,000戸以上のBPホームが試験的に建設されている。
 BPホームの購入には無公害車の購入と同じく税特典が与えられている(付録3)。今から20年後にはオフィス、ショッピングモール、その他の商業用ビルは分散型発電方式が一般化して、余剰電力を販売するところも出てくるだろうというのが米国政府の予測である。建造物用の燃料電池が普及するためには、燃料電池の発生する熱が冷房用に利用できなければならず、そのためには運転温度が100℃を超えても耐えられるシステムにしなければならない。
 発電用燃料電池は既に市販されている。燃料電池は電気と共に熱及び温水を出すので、建造物用熱源として優れている。また、分散型発電なので、送電によるロスもない。燃料電池で生産される温水は清浄であり、使用前の処理は不要である。ハイアット・リージェンシー・ホテルの一つでは、現在、燃料電池発電によりホテルのピーク消費電力の20%、ヒーティング用熱源の90%及び温水の一部を供給している。現在の発電用燃料電池は比較的高価であり、設計改良、製造の自動化等でコストを半分とする必要があるが、これらの技術の達成は5年後と見られており、その時点では燃料電池発電が更に一般化されると見込まれている。PAFCの効率は36%程度であるが、他形式の燃料電池では50%も可能であり、排熱の利用も考慮すれば85%の効率も可能となる。また、一般家庭用燃料電池発電装置を売り出している会社もあり、燃料電池が米国の排ガス浄化に及ぼす役割は徐々に大きくなっている。(第4−2図)
 
(交通部門での燃料電池開発)
 付録3「The President's Climate Change Technology Initiative」が発表され、国家エネルギー政策の中で燃料電池が脚光を浴びたのは1998年4月のことであったが、それまで米国で燃料電池が国家エネルギー政策レベルで論ぜられることはなかった。米国では船舶を対象とした燃料電池のプロジェクトは小規模に留まっており、大部分の努力は自動車に向けられてきた。自動車用燃料電池の主役はむしろ民間であり、それもむしろ隣国カナダのバラード社であった。バラード社については次節で詳しく述べるが、上記DOEの政策が発表された頃にはバラード社の動向は政策を動かす程の力を持っていた。
 1999年4月20日、カリフォルニア州政府、バラード社、自動車会社のダイムラー・クライスラー、フォード、石油メジャーのシェル、テキサコ、ARCO等により、燃料電池の燃料の開発や供給体制のあり方を探る「カリフォルニア燃料電池パートナーシップ」と称する共同体が組織された。これは燃料電池自動車の共同開発、実証テストの官民連合が発足したことを意味し、遅れてDOEを始め、日本を含む多くの企業が参加している。このパートナーシップの発足は、カリフォルニア州における低排出車プログラムLEVP(Low-Emission Vehicle Program)の実施と関係がある(注)。2000年11月、カリフォルニア・パートナーシップは、西サクラメント市内に燃料電池車本部をオープンした。開所式にはホンダや日産を含む世界中のメーカが燃料電池車を展示している。
(注)LEVPは自動車を排出の程度に従って、低排出車LEV(Low Emission Vehicle)、極低排出車ULEV(Ultra−Low Emission Vehicle)、ゼロ排出車ZEV(Zero Emission Vehicle)に分け、州内で販売される新車の一定割合をZEVとするプログラムで、その比率は1998年(2%)、2001年(5%)、2003年(10%)と、次第に多くしようとするものであった。その後、CARBは1995年11月、ZEVの定義を改正し、「(有害物質の排出量が)殆どゼロに近い車」と変更した。2001年1月、CARBは更にZEVに関する改正を出した。これによると、CARBは2003年のZEV市場占有率10%はそのままとし、新たに2018年には新車販売量の16%をZEVにすることを求めている。
 カリフォルニア・パートナーシップが結成されて以来、このパートナーシップを中心に大規模な開発が進められているが、燃料電池自動車の市場普及のための糸口は見えてきていない。燃料電池の価格は現在のところ非常に高額であり、また、水素の供給方法についても制約が大きい。自動車については、現在の燃料インフラをそのまま使うことができるガソリンやエタノールを燃料とする燃料電池が最も望ましいが、ガソリンを使って排ガスをクリーンにすることは困難を伴う。GMとエクソンは2000年8月、ガソリンを使う燃料電池車の共同開発に成功したと発表したが、GMは燃料電池の価格を現在のガソリン車用エンジンと同じ$50/kWにできるのは2010年になるだろうと言っている。
 
(欧州の動向)
 欧州では、燃料電池に限らず、EU連合をあげて船舶への新技術の適用を支援している。オランダ政府は1995年以来、300人乗りの燃料電池推進観光船の開発を進めてきた。使用している技術は圧縮水素を使うSPFC(Solid Polymer Fuel Cell)である。
 ドイツでは、シーメンスの250kW PEMFCを推進用を含むハイブリッド電力用に使用する潜水艦建造プロジェクト(注)が進んでいる他、ZeTec社は22人乗りの出力5kW浅喫水燃料電池推進小型客船プロジェクトを進めている。
(注)ドイツ海軍がシーメンス社に発注した水素燃料PEMFCを搭載した潜水艦212A(長さ56m、排水量1,450トン)は、単体出力30−50kW水素燃料電池9基を搭載し、2002年海上公試、2004年3月に引き渡される予定である。ちなみに本艦を建造するHDW造船所は、ギリシャ、イタリア、韓国の海軍からも同型艦を受注している。このうちイタリア向けでは燃料の水素を水素吸蔵合金に貯蔵することとし、これを潜水艦の耐圧殻の外側にバラストとして搭載している。なお、本潜水艦の水素燃料の供給にはAir Products and Chemical社が燃料供給基地を建設することになっている。
 
 2002年に入り、ワルチラはオランダのHaldor Topsoe社と250kW以上の舶用及び発電用の燃料電池の開発契約を結んだ。Haldorは触媒とエネルギー変換の分野で実績を上げてきた会社であり、燃料電池の分野では過去5年間SOFCの開発に注力してきており、オランダ国立研究所が中心となって進めているオランダSOFC燃料電池プログラムに10年この方関与してきている。ワルチラはまた、EU連合が進めている商船への燃料電池適用プロジェクト(FC-Ship Project)でも中心的役割を果たしている。FC-Shipは24ヶ月プロジェクトであるが、コストの50%はEU連合が助成している。FC-Shipはノルウェーを含む21の機関が参加し、客船を含む燃料電池船の概念設計を行う予定である。
 
第4−2図 分散型燃料電池発電装置
出典:参考資料4







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