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米国における船舶のクリーン推進システム開発プロジェクトに関する調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


4−3 バラード社の技術動向
(バラード社の設立)
 現在燃料電池業界で先頭を走っているとされるバラード社は、PEMFCの開発で知られるようになったベンチャー企業である。創業者であるジェフリー・バラードは、1973年の第1回石油危機の際、アリゾナ州フォートワシュカの米陸軍研究所で電気通信技術を研究していたが、この石油危機を契機として米国政府は資源保存局を新設し、ジェフリー・バラードはワシントンの研究開発部長に就任した。彼の任務は米国のエネルギー自給体制を目標とした長期計画の立案であり、種々の代替エネルギーの可能性とその技術について研究した。しかしながら、省エネルギーのような先進国のエネルギーの一部を節約するという方法では、発展途上国のエネルギー問題も含め問題全体の解決たり得ないことから、新技術の開発が必要と考えた。
 1975年、バラードは南アリゾナのメキシコとの国境に近い場所で、代替エネルギーと自動車や船舶の推進システムに関する研究所を設立した。当該研究所の研究は、当初電気自動車用電池の改良が主テーマであり、燃料電池は研究の対象にはなっていない。(但し、この時期バラードのスポンサーであったジョン・ホートンが全長28mの潜水艇「オーギュスト・ピカール」を所有していたことが、バラードの燃料電池の商業化が船舶用から始まることに繋がっている。)
 1977年、バラードはバンクーバーに移り研究を続けたが、1983年にカナダ政府が官報で低コストのPEMFCの開発を募集したことから燃料電池の開発に取り組むこととなる。PEMFCは4−1節で述べたとおり、1953年以来GEが開発を続け、1964年ジェミニ衛星に積み込まれるまでに成長していたが、純粋な水素と酸素を必要とし、また、高価なプラチナ触媒を必要としたのでその後商業用としては成長していなかった。
 
(カナダにおける燃料電池開発)
 カナダの燃料電池研究の中心はトロント大学、カナダ軍中央研究所及び国家研究振興会である。1970年代後半の時点では、カナダ軍は米軍と情報を交換し合ったり、燃料電池を米国から取り寄せたり、カナダ国内企業に研究を委託する等の活動を行っていた。当時カナダではAFCの研究が主流であったが、AFCが純粋な水素を必要とするのに対し、PEMFCはメタノールのような手に入りやすい液体燃料を低純度の水素に変換して使用することが可能な燃料電池であることから、注目されるようになってきていた。
 カナダ国防省は当初PEMFC技術売却前のGEに対し、PEMFCを潜水艦の推進用に応用するための予備調査を委託したが、その結果、PEMFCに使われているデュポンのナフィオン膜とプラチナ触媒の高価格の問題が浮かび上がってきたことから、前記のとおり低コストPEMFCの開発公募となった。(一方、米国政府は、交通関連の燃料電池開発に関する助成金は殆どPAFCに注ぎ込んでいたが、PAFCは作動温度が高く(200℃)、予熱時間が必要で、出力の急速な変化には向かない等の欠点がある。)
 この契約を受注したバラード社は、カナダ国防省との間で研究委託契約を締結したが、民生用への転換も目標に掲げられていた。この契約は、開発期間3年で、契約完了時に出力50W以上100W以下の燃料電池を3台完成するというものであり、契約金額は$495,000であった。1986年、バラード社はアリゾナの燃料電池会議で、デュポンのナフィオン膜より安価で性能の良いダウケミカルのPEM膜を使って出力が従来の4倍に増加する燃料電池の発表を行い、関係者の注目を集めた。これにより、バラード社の燃料電池が自動車用に使う道が開かれた。1987年にはバラード社は出力1,500kWのPEMFCスタックを完成している。その後同社は、2次、3次とカナダ政府と開発契約を結んでいるが、3次はカナダ海軍の潜水艦推進用燃料電池の開発$948,000、3ヶ年契約であった。
 
(燃料電池の自動車への適用)
 バラード燃料電池が最初に市販されたのは1987年、ジョン・ペリーの小型潜水艇用2kW出力のものであり、第2回目は英国海軍に同じものが出荷された。その後、2kW出力のものをダイムラー・ベンツにリースし、また定置型発電用10kWのものをオンタリオ州にあるダウケミカルの工場に出荷する等、着実に発展していった。
 バラード社の燃料電池の対象は、今日市場として最も有望視されている家庭用発電システムと自動車であり、そのことがバラード社の隆盛を築く基となっている。バラード社にとって当初自動車業界への参入は非常に困難と思われたが、排ガス浄化問題に積極的に関与しているカリフォルニア州のプログラムが転機となった。1988年、カリフォルニア南部沿岸大気管理庁は20年環境計画を策定した。この計画は、汚染産業の徹底的取り締まりのみならず、環境保全技術開発への助成、これら技術の開発及び導入を促進する規制の導入、自動車については1993年以降同庁管区内で購入される乗合交通機関(バスやレンタカー)をメタノール等を燃料とする低排出車とし、1998年以降は一般乗用車を含め一定比率をZEVとするものであった。しかし、1995年、カリフォルニア南部沿岸大気管理庁の上級機関であるCARBは、自動車メーカーと石油会社の反対で1998年の規制を廃止している。その後、ニューヨーク州やマサチューセッツ州でも類似の法案が可決され、バラード社の自動車業界参入に有利な条件が整ってきた。バラード社は大気管理庁から上記規制を実現するための研究助成金を受けている。
 
 1993年ダイムラー・クライスラーがバラード社に4年契約の開発契約を申し入れ、自動車用燃料電池の本格的開発に着手したことはバラード社の大企業化への転機であった。この契約は1997年に再契約され、本格契約となった。ダイムラーの資金援助を受けたバラード社は、94年に圧縮水素を詰めた円筒形のタンクを車体後部座席にある部分の天井に搭載し、出力50kW、最高時速90Kmのミニバン「NECAR1」を開発し、翌1995年には、北バンクーバーで60人乗り、圧縮水素を屋上に搭載し、最大時速95Kmで走るバスを試験走行させた。
 その後96年、屋根に2基の圧縮水素ボンベを搭載し、6人乗り、出力50kW、最高時速110Km、航続距離250Kmの「NECAR2」を開発し、97年には、水素タンク1基を搭載し、航続距離250Km、出力250kWの「NEBUS」及び燃料にメタノールを使い、改質器を後部座席に搭載、定員2名、出力50kW、最高時速120Km、航続距離400Kmの乗用車「NECAR3」を発表した。1998年初旬にはシカゴ交通局に3台、同年後半にはバンクーバーに3台の燃料電池バスが納入されたのに続いて、99年には液体水素燃料を用い、最高時速145Km、5人乗り、出力70kWで荷物を載せるスペースもある乗用車「NECAR4」、2000年には「NECAR3」を改良した「NECAR5」を発表している。ちなみに「NECAR5」の燃料はメタノールである。
 またGMはガソリンの改質に成功し、2010年迄には大手各自動車会社が燃料電池車を大衆価格で販売できるだろうと言っている。GMがターゲットにしている価格は、70−80kW級の燃料電池でkW当り$50、全体で現在の内燃機関の平均価格$3,500位で供給することを目標としている。ちなみに前述のダイムラー・クライスラーの「NECAR4」は出力55kWであるが、燃料システムの価格は$30,000と言われており、kW当たりで$545となり、GMが2010年に目標として掲げているkW当たり$50の10倍以上の価格となっている。
 
(燃料電池の船舶への適用)
 バラード社は、船舶用としても、前述のドイツ海軍向けに潜水艦への燃料電池の適用研究を進めているHDW造船所に対し、評価用としてPEMFCを納入している。同社はまた、オハイオ州アライアンスのMcDermott Technology、Gibbs&Coxと共に米海軍用に水素燃料500kWサービス用発電機を開発中である。







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