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米国における船舶のクリーン推進システム開発プロジェクトに関する調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


おわりに
 以上、船舶のクリーン推進システム開発プロジェクトについて述べてきたが、実体ビジネスにおいては燃料経済の影響は大きく、化石燃料の割安感は当分持続されるので、技術革新といっても内燃機関の改善の域を出ないものが多い。但し、改善や機器のシステム化であったとしても、それが社会のニーズに合っていれば新たな市場を創造し、また獲得することができる。
 
 本報告書では、その一例としてコンバインド・サイクル、特に米国で最もポピュラーなガスタービンと蒸気タービンの組み合わせを紹介したが、2つのエンジンを組み合わせて全体の効率を上げるこの方式は今後色々な組み合わせで出てくるものと思われる。DOEは1990年代SOFC燃料電池とマイクロガスタービンを組み合わせ、発電効率60%を達成するプロジェクトを実施している。2−5節ではABBがマイクロガスタービンと燃料電池のコンバインド・サイクルを開発中であることを紹介した。エネルギー密度の関係で舶用に直接適用できるものは限られるが、コミューターフェリーとして豪州でソーラーフェリー(太陽電池+ディーゼル発電機)が運航していることを考慮すれば、太陽電池とガスタービン、太陽電池と燃料電池というようなものも可能性としては考えられる。 問題は、何を売りにするかであろう。
 
 また、本報告書は、今後船舶の電気推進化が進むことを示唆している。燃料電池もその動力源として期待されるが、それ以前の段階でもPODシステム等の活用範囲は益々広がるであろう。3−3節高温超伝導モーターや3−4節リムドライブ・プロペラは正にその開発である。いずれも艦艇及び商船を対象としており、海軍の長期間の助成を受けて開発中のものである。特に、リムドライブ・プロペラは開発度が高く、近い将来の実用化が可能である。
 
 さらに本報告書ではあまり具体的には触れなかったが、これら以外にも将来の技術革新の種はいくつも転がっている。天然ガスは舶用エンジンの燃料として入り始めているが、水素はこれからである。しかし、1−4節で紹介したように、MARADはAF5で水素内燃機関の実証試験を実施することになっている。また、4−5節MARADの燃料電池プロジェクトで紹介した「Hydrogen on Demand」方式のメーカMillennium Cell社では、水素を燃料電池以外の水素燃料内燃機関用にも売り込むことを当面の目標として開発を進めている。
 それがGTLの形で供給されるのか、或いは純粋水素の形なのかは今後の推移を見る必要があるが、将来のエネルギーの担い手は水素である。水素燃料舶用内燃機関は、コストや安全性確保の問題等があってそう簡単には実用化されないであろうが、上記MC社の製品がそうであるように燃料電池の開発と対になって困難点も一つ一つ解決されていくものと思われる。
 
 最後に、将来の推進システムとして最も期待される燃料電池推進船であるが、かつて連邦政府機関が結集して連邦政府燃料電池推進船プロジェクトを立ち上げたことがある。EPAが1−3節で述べた1994年11月の舶用内燃機関からの排ガス規制規則を出す直前で、連邦政府機関で船舶を所有運航している海軍、陸軍工兵隊、USCG、NOAA、MARAD等が集まり協議した。何回か会合を重ねるうち、当時の技術では燃料電池推進船が唯一の現実的なクリーン船であり、連邦政府として燃料電池船の開発を急ぐべしとの結論に達した。その結果、1994年9月、EPAの環境技術イニシアティブの中に燃料電池推進船開発プロジェクトが組み込まれ、海軍海洋観測船T-AGOSを燃料電池推進に改造するための種々の技術検討が実施された。当時の技術水準ではPEMFCは100kW以上の高出力は望めず、また、6気圧中で作動させなければならないので舶用としては不向きであり、ディーゼル油改質燃料を用いるMCFCを採用するとの結論に達していた。しかし、その後、EPAの舶用ディーゼルエンジンに対する規制の基本方針が変更され、本プロジェクトは完成されなかった。
 こうして現在、燃料電池の開発については仕切り直しの状態にあるわけであるが、ブッシュ政権の成立以来、燃料電池については大きな注目が集まっており、2002年1月にDCで開催された船舶排ガスの浄化に関する会合において、ミネタ運輸長官は「あらゆる交通分野での燃料電池の使用を促進」すべしとの指示を大統領から受けている旨述べ、舶用分野への燃料電池の適用に強い意欲を示した。本報告書では、第4章燃料電池と水素燃料として纏めたが、正直なところ舶用システムとして一般的に利用されるにはまだまだ技術開発やコストダウンが必要である。しかし、本報告書でも触れたコミューターフェリーをはじめとして実証実験を通じて経験を広げていけば、その用途も広がるものと思われる。欧州でも燃料電池の舶用ユースに関する研究が進みつつあるとの情報が伝わる中、船舶の心臓ともいうべき次世代推進システムに対する我が国の対応が期待される。
 
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