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米国における造船関係研究開発助成制度の実施状況と成果活用等に関する調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


序論
 本報告書は2部に分かれている。第1部は1999年から5ヶ年計画で実施中のNSRP ASEプロジェクトについて、各プロジェクトごとに具体的な実施状況を調査したものであり、第II部はNSRP ASE以外の造船研究開発助成制度とそのプログラムの実施状況を調査したものである。
 米国造船業ではかつてないほど造船所間の技術交流が活発に行われているが、その中心となっているのは米国造船造機学会(SNAME:Society of Naval Architects and Marine Engineers)の管理下にある造船研究開発プログラム(NSRP:National Shipbuilding Research Program)である。NSRPは米国造船所の世界市場における競争力の改善を図るため、1970年に産官協力事業として発足した。一時は予算のつかない時期もあったが、現在ではNSRP ASEプロジェクト、NSRP独自プロジェクト、および海軍研究局(ONR:0ffice of Naval Research)から出される各種造船研究開発プロジェクトのまとめ役としてかつてないほどの存在感を示している。ONRはNSRPと相談して毎年多くの造船イニシアティブ(SI:Shipbuilding Initiative)プロジェクト、ONR中小企業研究助成(SBIR)プログラム、0NR中小企業技術移転研究助成(STTR)プログラムを出しており、NSRP ASEプロジェクトと一体となって各種シンポジウムやワークショップで成果が報告され、討論されている。海軍の各種プロジェクト及びNSRP独自プロジェクトについては第II部で詳述する。
 以上のような状況は米国造船業にとっては好ましい状況ではあるが、一方において上記各種の研究開発助成プログラムに参加している造船所と非参加造船所の間の技術格差を広げるという問題点を生み出している。現在米国造船所が実施している研究開発の42%は海軍が助成しており、そのうちの95%は6大造船所に割り当てられているが、それらの実情についてはII−2章で述べる。6大造船所とはバス・アイアン・ワークス(BIW:Bath Iron Works)、ジェネラル・ダイナミックス・エレクトリック・ボート(EB:Electric Boat)、NASSCO(National Steel and Shipbuilding Company)、ニューポートニューズ、アボンデール、インガルスであり、現在の米国造船業界を代表する造船所である。
 造船所の格付けの他の方法はNSRP ASEの各プロジェクトに参加している造船所と不参加造船所という分類である。参加造船所はECB(Executive Control Board)造船所と呼ばれ、6大造船所にアトランティック・マリン、ベンダー造船、カスケード・ジェネラル、ハルター・マリン、トッド・パシフィックを加えた合計11造船所である。つまりECB造船所は大手(first tier)造船所と中手(second tier)造船所の一部によって構成されている。付録1にMARITECHプロジェクトのリスト及びECB造船所で現在実施されている研究開発助成プロジェクトのリストを示す。
 ECBとはNSRP ASEプログラムの実施上の最高決定機関であり、各ECB造船所から1名ずつ選出された委員11名(委員長、副委員長を含む)とNSRPの予算を所掌する海軍海上システム司令部(NAVSEA:Naval Sea Systems Command)、運輸省海事局(MarAd:Maritime Administration)、及び沿岸警備隊(USCG:United States Coast Guard)より各1名の委員が参加し、合計14名で運営されている。現在の委員長はベンダー造船のHarvey Walpert氏である。
 ECB造船所は米国を代表する造船所ではあるが、これらの造船所は常に異なった船型の船を非連続建造する傾向にあり、同型船の連続建造による生産性向上という考え方が定着しにくい環境である。米国で連続建造による生産性向上について云々することができるのは、むしろバージ等を連続建造する非ECB造船所であり、米国の中小型船建造造船所は世界的に競争力が有るという報告書(米国防衛産業協会)もある。また、SENESCO(South eastern New England Shipbuilding Corporation)のように、NSRP ASEの考え方を積極的に取り入れて、大幅な生産性向上を実現している非ECB造船所もあるが、一般的には非ECB造船所の生産性は低い。
 本報告書で紹介するプロジェクトの中にはベンチマーキングといわれるプロジェクトが多い。ベンチマーキングという単語は日本語に訳しにくいが「他と比較して自分の強い所や弱点を知る」という意味であり、NSRP ASEその他のプロジェクトで調査チームを日本、ヨーロッパに派遣して各分野のベンチマーキングが実施されている。
 NSRPや海軍関係のプロジェクトの他に、連邦政府が全面的に予算を支出している研究開発センター(FFRDC:Federal Funded Research and Development Center)で実施されるプロジェクトが多数存在する。造船関係のFFRDC予算の大部分は海軍から出ている。FFRDCの好例は原爆の開発で有名なロスアラモス研究所である。ロスアラモス研究所の運営費用は連邦政府から出ているが、現在管理はカリフォルニア州立大学に任されている。造船関連のFFRDCとしては、クリントン政権の造船奨励策の一つとして設立されたメキシコ湾岸地域海事技術センター(GCRMTC:Gulf Coast Region Maritime Technology Center)はニューオリンズ州立大学に、米国金属処理中核研究所(NCEMT:National Center for Excellence in Metalworking Technology)は民間会社であるコンカレント技術会社(CTC:Concurrent Technology Corporation)に運営が任されている。
 GCRMTCやNCEMTのようなFFRDCでは連邦予算だけでなく、委託研究や共同研究による収益によって研究所が支えられており、必ずしも全てが造船関連の研究開発ではないが、その存在は造船業にとって非常に重要なものになっている。特にGCRMTCは現在米国の大学で最多数の造船学科の学生を抱えるニューオリンズ大学の管理下にあり、さらにアボンデール造船所内にアボンデール/インガルス/ニューポートニューズを傘下におくノースロップ・グラマン造船システム部門とニューオリンズ大学が共同で海事技術センター(UNO/Northrop Grumman Maritime Technology Center of Excellence)を設立しており、米国造船業界における重要性は益々大きくなっている。これらFFRDCプロジェクトについてはII−7章で詳述する。
 NSRP ASEは「造船生産工程」「ビジネス・プロセス技術」「システム技術」「製品設計・材料技術」 「施設・設備」「横断的課題」の6つの主イニシアティブに分けて進められている。そのいずれにおいても共通しているのは、他国、他産業に学ぶ姿勢である。ここで言う他国とは日本とヨーロッパ、他産業とは航空機産業と自動車産業である。1987年の生産性指数を100とした場合、1998年の航空機産業の指数184.2、自動車産業の指数145.1に対し、造船業では112.2と生産性はほとんど伸びていない。
 造船生産工程管理の中ではリーン製造方式、工作寸法精度、ロボット化/自動化の3点が重要事項として進められている。2002年中にこれら3点を主題としたパネル・ミーティングが各1回ずつ開かれ、多くの関係者が集って討論し、他産業の担当者が招かれて、自産業における状況を紹介している。しかし、これら多くの発表が大学やコンサルタントに外注されて発表されているのは気がかりである。現在米国の造船所は人材不足であり、特に研究開発要員が不足している(I−2章参照)。しかしその割にはプロジェクト数は多いため、造船所の技術要員は技術リエゾンが主業となり、技術が根付かない傾向にある。大学やコンサルタントの研究者は自己の研究題目のベンチマーキングから出発し、改良点を自己判断で決めていくので、必ずしも造船の現場に適さない結果が導かれることも多く、結果として入り口研究のみが多くなり、成果が出る前に消えていくプロジェクトも多い。
 
図I−1 航空機・自動車及び造船産業の生産性比較(1987−98)
(拡大画面:57KB)
 
 現在米国造船界はリーン製造方式ばやりである。リーン製造方式は1980年代後半に米国製造業の復権の切り札として登場したものであり、日本のジャスト・イン・タイム製造方式の米国版といえる。リーン製造方式は最低限の操業コストで最大限の販売可能な製品/サービスを生産する方式、つまり可能な限り無駄を切り捨て、構造改革することを前提としている生産方式であるため、顧客の要求が大幅に変った場合の対応が遅くなる等の弱点があった。1990年代初期に米国は顧客の満足度を満たすことに主眼を置いた総合品質管理(TQC)の時代に入りそれと共にリーン製造方式もアジャイル(敏捷)生産方式へと移って行った。現在NSRP ASEで使われているリーン製造方式という言葉は、如何にしてアジャイル(敏捷)性あるいは柔軟性を製造方式の中に取込むかも考慮した新リーン製造方式とも言うべきもので、それをフレキシブル・リーン製造方式とも呼ばれている。







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