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米国における造船関係研究開発助成制度の実施状況と成果活用等に関する調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


I−2 MARITECHの成果
 MARITECHコストシェアリング・プロジェクトは米国造船業が競争力ある船舶設計、正当なマーケット戦略、近代的建造方式、先進技術により高い生産性を確保し、安くかつ納期を守れる体制を確立し、米国造船業を世界造船市場に復帰させようとした施策の一つであり、そのため付録1に示す60のプロジェクトが3段階に分けて実施された。
 
・第1段階――期近技術の開発43件(新船型開発32件、船舶建造技術11件)
・第2段階――先進技術の開発8件
・第3段階――NSnetの開発9件
 
 つまり件数にして全体の72%は期近技術の開発に費やされており、さらにその74%は新船型の開発となっている。MARITECHで開発された船型は新タイトルXIと抱き合わせにはなっていない。つまりMARITECHで開発された「競争力ある船型」を使用しなければタイトルXIを受けられないわけではなく、タイトルXI申請の船型のほとんど全ては造船所が自助努力により開発した国内向けの船型であり、もともとMARITECHがなくてもジョーンズ・アクトのおかげで受注できた船である。MARITECHの期間中何隻かの船が輸出されているが、その大部分はもともと米国の造船所が得意であったプロダクト・タンカーが中心であり、MARITECHで32隻もの新船型が開発されたにもかかわらず、それらが輸出されて世界造船市場復帰の突破口となったと言うレベルの成果は得られていない。しかも、輸出船のほとんど全てが採算割れといわれており、ニューポート・ニューズ造船などは、商船建造から撤退してしまった。もちろん5年問で3億5,240万ドルも費やされたプロジェクトであり、部分的成果はあってしかるべきである。
 MarAdが2002年に作成した「海事研究と技術開発についての議会報告」ではMARITECHの成果として下記5点が挙げられている。
 
・EBは各船につき設計費700万ドル、建造費1,400万ドルの節約に成功した。
・アボンデールは鋼材加工ラインを新替してT−AKRシーリフト船建造のサイクルタイムとトン当たりの加工コストを減らすことができた。また、将来建造される強襲揚陸艦LPD−17の生産性は20%上昇すると予測している。さらにMARITECHのおかげでARCOのタンカーを受注することができた。
・アトランティック・マリンはCAD/CAM及び工場内のコンピューター・ワーク・ステーションを利用することにより製品精度が向上し、手直しが減って作業工数は20%減少した。
・トッド・パシフィック造船所はフェリーの建造工数が30%減った。
 
 1998年のNSRPによる「MARITECH高度造船エンタープライズ、戦略的投資計画」もMARITECHの成果について言及しているが、具体的成果は示さずMARITECHのおかげで米国の9つの有力造船所が協力とチーム作りの有用性を悟り、将来の米国造船業の存続のために成果があったと述べているに留まっている。
 以下MARITECHの成果を下記3点に絞って考察する。
 
・正当なマーケット戦略の下に競争力ある船型が選ばれたか?
・生産性の向上に役立ったか?
・第3段階のNSnetの開発は成功であったか?
 
 世界の輸出船市場で競争している造船所の多くは自社の設備に合った船型の船を繰り返し建造することによって、長い間にわたって不具合点を直し、工数を下げ、競争力ある船型を自分のものにしている。正当なマーケット戦略の下に競争力ある船型が選ばれたかどうかの問題は、米国造船業にマーケット戦略やそれを支える基盤が存在したかの問題である。この問題を掘り下げるために米国造船業の実体を見てみる。
 米国には合計250の民間造船所と船舶修理工場及び海軍工廠等5つの公共船舶修理工場が存在する。米国造船業の1998年の総収入は102億ドルであり、この85%は上位10社が稼ぎ出している。また総収入の3分の2である67億ドルは6大造船所によるものである。6大造船所の仕事はほとんど艦艇の新造で、商船は1996〜00の5年間で米国全体の商船建造量の11%しか建造していない。また1998年の民間造船所の従業員は89,000人、公共修理工場従業員は23,000人であった。造船・造機その他の専門技術者は北部大西洋岸約5,000人、南部大西洋岸約2,500人、メキシコ湾岸約2,000人であるが、太平洋岸や五大湖は修理工場が多く、専門技術者は無きに等しい。しかし専門技術者数の多い南北大西洋岸にしても、ECB造船所を除くと一社当たりの専門技術者数は極端に少なくなる。マーケティング、セールス及び管理関連従業員数は南部大西洋岸7,000人強、北部大西洋岸3,000人弱、メキシコ湾沿岸5,000人弱となっている。
 造船所及び修理工場が32事業所しかない南部大西洋岸に7,000人もの従業員がこの分野で雇われているのはニューポートニューズ造船所を抱えているためである。ニューポートニューズ造船所では連邦購買規則(FAR:Federal Acquisition Regulation)に定められた、納入業者との取引契約、定期的点検や監査のために膨大な人員を抱えており、本来の意味での商業マーケティングをしている従業員は1人もいない。77の造船所及び修理工場が存在するメキシコ湾岸は米国で最も商船が建造されている地域であるが、技術者はインガルスとアボンデールに集中しており、マーケティング、セールス、管理関連従業員も似たような傾向であり、とても自社で真の意味の商船技術の開発や国際マーケティングを実施する体制にはなく、かろうじてECB造船所のみが設計会社やコンサルタントの助力を得て新船型開発やマーケティングを実施できる状況である。
 船型開発に際して、ECB造船所はかなり外国造船所の力を借りている。それ自体はやむをえないことであったと思われるが、一方において外国で成功している船型をそのまま利用しようとする安易さも感じられる。船型開発そのものは良くても、高くて納期を守れない造船所には絶対に発注されないという点を理解しなかったことでDARPAは失敗を犯した。MARITECHの74%が新船型の開発に注力されたのは問題点の把握を誤っており、税金の無駄使いであった。米国の世界造船市場におけるシェアは2000年の段階で世界10位であり、確かにMARITECH以降1%を回復しているが、この大部分は新タイトルXIによるものであり2005年には世界全体で40%のオーバー・キャパシティが囁かれている世界造船業の中で、米国が船舶の輸出を考えるのはいささか見当違いとなっている。







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