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船舶解撤の新たな進展と今後の展望

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


2. 船舶解撤再活発化の原因
 本節では2001年半ば以降の船舶解撤の著しい活発化を呼んだ主要な要素を明らかにする。特に各船種の運賃市況の変化と用船活動の最近の動向が果たした役割を論じる。また世界の解撤能力について最近の展開についても検討する。
 
2.1 船舶解撤動向を決定する一般的要因
 一般に、船舶解撤の動向は以下の要因により決定される。
 
・貨物輸送需要と運賃;両要因の水準が高いほど、船主は船齢に関わりなく所有船の運航を継続する公算が高い。(添付資料A−Demolition3中のA−3−12とA−3−13図「タンカー廃船とVLCCの12ヵ月定期用船料」と「ドライバルクキャリアと鉱石船の廃船とBFI/BDI」の両表参照18)。この原則は典型的なケースではどの船種にも当てはまる。さらに短期的な運賃上昇でも、先行きのトレード条件について船主の期待は急速に変化し、それに伴ってスクラップ売船は急激に減少する。その後用船料が落ち込んでも、解撤市場に放出される船腹量が回復するまでには、かなりの時間差が生じることが多い。
 
・法制上の要因および/または用船者の選好:これらの要因が存在すると、一部の船舶については定期用船が困難になり、その結果、現役船隊からはじき出されることもある。例えばMARPOL付属文書I規則13Gと米国沿岸警備隊が運用する1990年油濁防止法(OPA 90)により、残存するシングルハル船はやがて世界の主要タンカー航路の大半から排除されることになる。石油会社が自社の検査員により厳密な検査を受けた船舶のみを用船する方針が強化されたことも(1999年12月のタンカー「エリカ」号の沈没以来)、最近のシングルハル油送船解撤の増加に寄与している。
 
・船主にとって解撤向け以外に所有船を売却する余地:活き船として売却する機会は、用船市況(すなわち運賃水準)と密接に関連し、また見込用船者がその船に魅力を感じるか否かに左右されるのが通例である。もし市況の先行きが暗く、短期的な復活の見通しがなければ、あまり多数の買手は出てこない。タンカーの場合一つの代案は改造向けの売却である。1990年代末期以降の海底油田開発ブームにより、多数の大型タンカーが専用の浮体式石油貯蔵生産積出設備(FPSO)用として売却された。19この要因がなければ、他に売却の当てがないままに、船主が所有船をスクラップ売船する可能性がさらに高くなる。
 
・船舶設計における新たな展開:この要素は、新型船が旧式船の定常的な利用を困難にすれば、「旧世代」の船舶を商業的に陳腐化させる。新型船の利点としては、航海速度の向上(コンテナ船などの船種では重要な要素である)、燃費の改善、積載能力の増大、安全性/環境保護上の優秀性などが考えられる。
 
・スクラップ価格−低いほど好採算で経営できる解撤事業者が増える。逆にスクラップ価格が上昇すると、解撤船を確保できるヤードは少なくなる。特徴的な現象として、一定水準以上に価格が上がると市場から一時的に撤退する解撤事業者も多い。市場が沈静化して解撤船価格が買い頃になって初めて復帰するのである。これはスクラップ価格というものが、単に解撤に向けられる船腹量だけではなく、スクラップ鉄の総供給量にも支配されるためである。事実、傾向として解撤船腹はスクラップ鉄の総供給量の中でわずかなシェアを占めるに過ぎない。20すなわちスクラップ鋼の供給が逼迫していれば価格は上がる。しかし運賃市況が堅調な時期にこれが生じても、必ずしも解撤に向けられる船腹が大幅に増大するとは限らない。逆にスクラップ鉄の供給過剰が深刻であると、スクラップ船価は下落する。それでもなお運賃市況が低調を極めていれば、解撤の総量は増大する。(ただしその価格水準で採算が取れる解撤事業者の数が、解撤市場に流入する船腹を全て引き受けるに足るほど多いことが前提である。)スクラップ価格の水準のみが、所与の時点において解撤される船腹量を左右する主要因ではない。過去の経験からすれば、解撤市場に流入する船腹供給量は、スクラップ価格がかなり大きく変動しても、あまり反応を見せない。
 
 解撤活動の地理的配分を決定する主要因は以下の通り。
 
・好適な立地条件(通常は主要航路に近い)と適切な地理的条件:例えばインド亜大陸では、潮の干満差が大きく、大型船でも容易に浅瀬に乗り上げさせられることが条件である。さらに考慮すべき条件は気候である(大抵の解撤作業は屋根の下でなく屋外で行われるので、これは重要な条件である)。モンスーンの季節でも、インド亜大陸ではこの基準が満たされる。
 
・船舶解撤から生じるリサイクル材料に対する需要:船舶解撤から生じる鉄系および非鉄系のスクラップ金属、交換部品、機器、その他の金具類に対する国内市場が存在しなければ、大規模な船舶解撤業を維持できる見込みはない。1980年代には台湾の建設業界はスクラップから再生した鋼材の使用を禁止され、これが台湾の船舶解撤業の消滅を招く一因となった。21
 
・政府の政策(船舶解撤を振興および/または規制する):予算措置(例えば輸入船に対する関税あるいは解撤事業者に対する租税の減免)は当該国の解撤ヤードの競争力に大きな影響を及ぼし得る。同様に、中央政府や地方自治体が制定する安全法令が、当該国における船舶解撤業にとって死活的問題になることもある。労働者の安全、職業病予防措置、環境保護等に関する法令が効果的に施行されていないことも、アジアにおける広汎な船舶解撤を支えている要因であるとの主張もある。22(グリーンピースはこれを重大な問題と捉えていて、主要解撤国で関連国内法令を強化すれば、世界の船舶解撤活動をさらに貧しい、規制の緩い国に移動させるだけの結果に終わるとも主張している。)
 
・環境的要因:先進工業国においてこの問題が重大化したことから、船舶解撤は1970年代と80年代にヨーロッパ、日本、韓国から移転する結果となった。23人件費の高騰(次項に述べる)と相俟って、この問題が船舶解撤事業の大半を1990年代にインド亜大陸と中国に移動させたのである。
 
・人件費:当然、人件費は工業先進国よりも発展途上国の方が遥かに低い。さらに解撤事業では臨時雇用の労働者の比重が大きい。彼らは休日出勤手当も、病欠手当も受けることができず、年金制度の保障もない。
 
2.2 2001−02年に特に解撤事業に影響を及ぼした要因
 
 船舶解撤については以上述べた一般的な決定要因もさることながら、2q01以降の解撤急増は以下のような各種の要因から生じた。
 
・あらゆる船型の油送船の平均収益の大幅下落:24これは、主としてOPECの指令によるが、他の産油国(アンゴラ、メキシコ、ノルウェー、オマーンおよびロシア)の同様な措置による、世界の産油量の一連の削減に続いて生じた。4q00から4q01の間に、世界の産油量(従って原油タンカー・トレードの貨物供給量)は78.3から76.8百万バレル/日(mb/d)に落ち込み、252q02にはOPECのさらなる減産により75.8mb/dに減少した。この状況は世界的な景気後退と、それに伴う石油需要軟化によって悪化した。26さらに、需給逼迫の中に石油価格が高騰したことから、日本や韓国などの国は発電用に他の燃料(主として一般炭、一部LNG)への依存を高めた。27
 
・2001年の石油需要軟化の問題は、2000年の中国とインドの石油輸入急増が終りを告げるという形をとって顕在化した。2000年の中国の原油輸入量は0.74から1.41mb/dと殆ど倍増し、またインドの輸入量も0.92から1.36mb/dと著しい伸びを示していた。両国向けのこの石油トレード拡大は、高齢のスエズマックスやVLCCにとって主な働き場所となっていた。28しかし2001年に経済成長が鈍化したため、中国の原油輸入量は1.2mb/dと15%近い落ち込みを示した。インド向けトレードはさらに伸びたが、その伸び率は2000年より低下した(前年度の49%に対して17%)。結局のところ、高齢のスエズマックスやVLCCの稼動機会が減少し、そのことがまた、2001年の両船型のスクラップ売船増加に寄与することになった。29
 
・2000/2001年にタンカー、バルクキャリア、コンテナ船の新規引渡しが大量に生じた中で新型船の供給も増加したこと:2000年にはタンカーの引渡量は20.2mdwtと、1970年代以降最高の水準に達していた。一方ドライバルクキャリアとコンテナ船では、2001年に新造船の引渡量がそれぞれ20.5mdwt、0.64百万TEU(mTEU)と、いずれも記録的な水準に達した。
 
・2001年におけるドライバルク運賃市況の新たな軟化:これはa)船腹の(12.6mdwt)純増とb)貨物輸送需要の伸びが鈍化したためである。主要ドライバルク品目(一般炭、原料炭、鉄鉱石、小麦および雑穀)の海上輸送量は前年比17.5Mtの純増を示した。比較すれば、2000年には船腹量が7.2mdwt増大していたのに対して、これらの品目の輸送量は89.4Mt増加していた。大西洋トレードのパナマックス型バルカーの平均1年物定期用船レートは2000年8月の$11,375/dayから2001年晩秋から末にかけてわずか$6,375にまで下落した。
 
・その他の船種の平均収入の大幅減少、新型船でもトレード条件は著しく悪化:例えばLPG船では、1990年代建造のVLGC(積載能力78,000m3)の12ヵ月定期用船料は2001年前半の0.92百万ドル/月前後から2002年前半には0.53百万ドルに落ち込んだ。(年央から運賃市況は若干上向いたが、2002年の平均収入はまだ過去10年超で最低の水準にある。)同様のパターンはコンテナ船についても見られる。2,750TEU荷役設備なしのコンテナ船の1年物期間レートは1q01末の$21,500/日程度から12ヵ月後にはわずか$7,500/日にまで下落した。
 

18
一般に用船料が堅調であれば、解撤量は低下する。逆に運賃が軟調であれば、解撤は増大する傾向にある。
19
一部情報によると、2001年初以来、13隻2.8mdwt(いずれも80,000dwt超)がタンカー船隊から排除されてFSPOに改造された。
20
例えば中国では、1999年に船舶解撤により生じたスクラップ鋼の総量は、同国でその年解撤された船腹量が4.4mdwtにも上ったにもかかわらず、1.0mtに満たなかったと推計される。国際鉄鋼連盟(IISI)のデータから見ると、1999年の中国におけるスクラップ鋼の総消費量は28mtに近い。すなわち船舶解撤により充足された需要の比率はわずか3%に過ぎず、このことは船舶解撤により生じるスクラップ鉄が総需要量充足に占めるシェアには大幅拡大の余地があることを示唆している。
21
しかし1990年代において電気炉(EAF)製鋼法が急速に世界的に普及したため、スクラップ鉄に対する需要が増大した。従って再生鋼材を建材として使用できない国(工業先進国を含む)でも、鉄鋼業の将来の材料として、船舶解撤から生じるスクラップ鋼に対する需要が生じる可能性がある。
22
パリに本拠を置く国際人権団体連盟は2002年12月に南アジアの船舶解撤ヤードにおける「重大な人権侵害」を非難する報告書を発表した。バングラデシュ、インドとも、このような行為について槍玉に挙げられている。
23
この点についてグリーンピースは、「船舶解撤の移動は、危険廃棄物が世界を駆け巡るのと同じ世界一周経路を通る。少なくとも抵抗が最も少ない道をたどる。国が貧しければ貧しいほど、それだけ多くの廃棄物を持ち込まれる。」と指摘している。(出所:ロンドンで2002年10月に開催された国際海事産業フォーラムで発表された“Towards Clean Ships'(-Breaking)”)。
24
1q01から3q02の間に、新鋭のダブルハルVLCCの1年間期間用船料は$45,000から$23,000/日に下落した。この一般的低落傾向は、イエメン沖で2002年10月に発生したVLCC「リンバーグ」号の爆発事件による突然の短期的上昇で一旦抑えられたに過ぎない。
25
この石油供給量削減は中東からの長距離輸出輸送に著しい影響を及ぼし、特にVLCC、ULCCによる輸送は甚大な打撃を受けた。
26
2001年の世界の石油需要は1980年代以降最低の年間増加率(0.1mb/d)を示した。これに対して2000年の世界石油需要は2.5mb/d伸びていた。
27
2001年度の日本の電気事業連合会加盟10社の一般炭購入量は前年の34.0から39.0MTと14.7%の伸びを示した。同様に2001年の韓国の電力会社のLNG使用量も4.5から4.8MTと6.4%増加した。
28
これらのタンカーは、主に1999年12月のブリタニー沖の「エリカ」号沈没により、船質に対する意識がきびしくなっていた航路から転配されたものである。
29
スエズマックスのスクラップ売船量は2000年の3.0mdwtから2001年には4.1mdwtに、同期のVL/ULCC売船は7.1から8.6mdwtに増加した。







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