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船舶解撤の新たな進展と今後の展望

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


2.3 最近の用船動向
 
 2001、2002両年のタンカー市場における用船者の行動には、以下のような特徴が見られた。
 
・EU諸国向けのトレードにおける船齢の高いシングルハル油送船の用船の大幅減:スポット用船状況の報告を見ると、英国/大陸向けに用船されたVLCCの平均船齢は、1999年の16年から2000年にはわずか9年に低下している。船齢26年のアフラマックス「プレスティージ」号が2002年11月にスペイン沖で沈没したことから、この低船齢化傾向は今後も続くものと思われる。同様に、多数の新造船が地中海燃料油輸送に参入したため、多数の高船齢ハンディサイズ船がこの市場からはじき出された。イタリアは燃料油の輸入に大きく依存していて、しかもこの品目の輸送に利用可能な新型のダブルハル船が払底していたため、同国の数船主が2000年にハンディサイズ・タンカーを発注していた。
 
・これに対応して、様々なEU外市場(主としてスエズ以東の発展途上国)向けに用船されたタンカーの平均船齢の上昇:例えば1999年にインド向けに用船されたスエズマックスでは船齢14年が代表的だった。しかし同年末に「エリカ」号が沈没して以降、2000年にEU向け航路から同種の船舶が排除された結果、インド向けスポット用船された同種タンカーの平均船齢は21年に上昇した。
 
・一部の大手用船者(主として石油会社)における高船齢船(特にシングルハル油送船)忌避傾向の高まり:これは過去3年間における目立ったタンカー事故に伴う不利な報道によるものである。30タンカー市場が堅調で需給がきわめて逼迫していた2000年には、船齢が高すぎる船でさえ、採算の取れるレートで定常的に起用されることができた。しかし2001年から2002年のかなり最近の時期まで用船市場が軟化すると、用船者は新型船を確保することが容易になり、高船齢船を避けることができるようになった。多数の石油会社が今では、先ず自社の検査員に精査させてからでなければ高齢船は用船しない。しかし船質に対するこのこだわりは普遍的な趨勢ではなく、一部の用船者は依然としてコストだけを基準にして用船を決めるようである。
 
・一部の積取地域や特定の仕向地について高船齢船の運航機会減少:北海などの積取水域から用船される高船齢船の比率は現在ではきわめて低くなっている。そのためこの種の船舶は、中東湾岸、黒海および東地中海など、まだ忌避の度合いの低い積取地域からの運航に依存度を高めている。
 
・中東産油国の生産量削減に続く洋上備蓄関連用船の削減:従来は多数の高齢VL/ULCCにとって、これが働き場所であった。31この備蓄用船がなくなったため、貨物の減少とシングルハル船需要の低下がもたらす影響を深刻化させた。
 
・兼用船需要の著しい低下:2000年のタンカー市況が上向きで船腹需給が逼迫していた時期には、兼用船は、この船種の平均船齢が高いにもかかわらず、石油トレードで定常的に契約を得ることができた。しかし2001年にタンカー、ドライバルクとも市況が軟化すると、兼用船のスクラップ売船が増加した。この趨勢は2002年に入っても続いている。
 
・中国向けトレードに新型専用船、対2000年比増:これは中国で新港湾の開発により、一部の輸入ターミナルが1990年代建造の大型化したVLCCを受け入れられるようになったことが一因となっている。さらに中国系の用船者が2001年にTankers Internationalのプールとの取引を増やしたという事情もある。このプールのタンカーは、業界の平均よりも遥かに近代化が進んでいる。そのため中国向けトレードでは旧型船の利用が減少した。2002年の現時点までに中国向けにスポット用船されたVLCCの平均船齢は、2000年の13.7年から11.5年に低下した。
 
 乾貨トレードでは、タンカー輸送におけるような、新規規制立法の大きな動きはまだない。しかしIMOの海上安全委員会が2002年12月に会議を開いてバルクキャリアの安全性問題を検討し、今後新造されるバルクキャリアにはダブルハルを義務づけるという提案も取り上げられた。バルカーの構造的強度を高める他の様々な手段も検討され、またポートステートの検査官が「リスクあり」と判定された船舶の検査を重点的に強化することを通じて、安全性改善を図る方法も討議された。会議の開始に先立って、IACS加盟の有力船級協会が、荷役中および航海中の損傷に船が耐える能力を向上させようとする、いくつかの新しい提案を公表した。前部ハッチ、デッキ艤装品、船側フレームなどに付加的な保護を加える規定も含まれている。しかしながらIACS加盟各船級協会は、結果的にどんな措置が導入されようとも、それはIMOと緊密な協議を経てから導入するという方針を力説した。32本報告書の第4章に概説するように、同委員会の勧告はまだ正式なものではなく、従ってその実施時期は未確定である。
 
 タンカー部門と対照的に、乾貨船の用船パターンにおける大半の変化は、明らかに用船者主導で生じたものではなく、ポートステート・コントロールの強化を反映するものである。主要な輸入ターミナルないし地域では、現在受入許容船舶について船齢の上限を設けている。このうち最も顕著な例が、日本向けトレードにおける15年上限、韓国、中国の場合の18年上限などである。33これに対してヨーロッパ市場は選択性があまり高くなく、旧型船を未だに定常的に受け入れている。ただし一部の企業は受け入れる船舶について船齢制限を設けている。34積取地域について見れば、対応する船齢制限は存在しないものの、一部の国では国内の輸出ターミナルにおいて貨物を積み取ることができる船舶について厳密なガイドラインを適用している。これは比較的新型の船舶の利用を優遇する政策といえる。
 
2.4 その他の運賃市況の要因
 
 その他の要因としては以下が挙げられる。
 
・2002年現時点までにおける米国の原油調達の中東依存度低下:これにより中東湾岸/USガルフ航路のULCC用船が2001年より大幅に減少した。中東原油輸入量は2001年1−8月の2.63mb/dから2002年同期では2.23mb/dに減少した。これは2001年末にかけてULCCの解撤を増加させた大きな要因である。
 
・ヨーロッパの近場供給源、特に旧ソ連(FSU)への依存増大:2001年にはヨーロッパのOECD加盟諸国のFSU石油輸入量は、2000年の3.2mb/dから3.6mb/dに上昇し、2002年にはさらに伸びている。2002年の1−8月のこのトレードの平均輸送量は4.2mb/dt近くにまで達した。そのため西欧向けトレードはトンマイル・ベースで需要が減退し、従って西欧向けVLCCの運航量が大幅に縮小した。
 
・高齢船に対する需要低下により新型ダブルハル船と旧型シングルハル船との中古価格の較差拡大:例えばブローカー筋の推計では、1999年末と2001年末では、船齢5年のダブルハルVLCCと10年のシングルハル同型船では、価格差が15.5百万ドル前後から25.5百万ドルに開いたといわれる。
 
2.5 「プレスティージ」号の沈没:油送船解撤に及ぼし得る影響
 
 2002年11月に81,564dwtのアフラマックス・タンカー「プレスティージ」号がスペインのガリシア沖で沈没した事故は、EU域内の油送船トレードに深刻な影響を及ぼすことになる模様である。同船の沈没以後、PSC検査に関するパリMOUのガイドライン実施を強化するために、欧州各国が措置を講じている。「プレスティージ」号事故からわずか数日以内にフランス当局は、自国に寄港する船齢15年以上の全船を(船種を問わず)点検するという計画を発表し、この方針は2003年1月1日に発効すると伝えられている。同日からスペインは、「重質油」を積載した全てのシングルハル船が自国の港、ターミナル、錨地に立ち入ることを禁止する。35この禁止措置は船齢、船籍を問わず、この種の全ての船に適用される。スペインはさらに、環境を危うくすると自国が判断する船舶を規制し、そのような船舶がスペインの経済専管水域内を航行することを制限することになる。EUトレードでは高齢船の使用は既に他の多数の地域より少なくなっているが、この措置によりこの種の船舶の運航はさらに減少することになろう。
 
 「プレスティージ」号事故の影響で、その他にも以下のような展開が考えられる。
 
・重質燃料油貨物に対する規制の徹底強化−少なくともヨーロッパ域内において:欧州閣僚理事会は12月6日に会議を開き、EU領海内で重質燃料油貨物をシングルハル・タンカーで輸送することを全面禁止すると発表した。この決定は2003年1月1日に発効し、EU領海を単に通過する船にも適用される。貨物油の流出があった場合には、重質燃料油による汚染は浄化が困難ということから、この水域のトレードにはダブルハル船のみが受け入れられるという決定が下された。これが全面的に施行されれば、結果的にバルチック海域からの燃料油輸送にも、シングルハル油送船の使用が禁止されることになる。このトレードに従事する船はEU水域を通過することを避けられないからである。この新たな規制が発効するのを待たずに、スペインとフランスは既に、自国海岸線から200海里以内を燃料油貨物を積載したシングルハル船が通過するのを禁止する一方的措置を取ろうとしている。これは、国連海洋法条約「UNCLOS」に定められているように、国際海洋法で認められたあらゆる船舶の自由航行権と理論的には矛盾するものであるが、なおかつ実施に向かっているのである。36
 
・高船齢シングルハル・タンカーの繰上げフェーズアウト実施:欧州理事会は12月6日の会議で、この種の船舶を全て、貨物油の種別に関わりなく、2010年以降EU水域内のトレードで運航禁止とすることを決定した。(これに対してIMOの規則は、船型と船齢により一部のシングルハル船の運航を2019年まで認めている。)もともと「エリカ」号沈没の直後にも、シングルハル船の繰上げフェーズアウトに関する同じような要求が出ていた。しかしその際には欧州理事会はその要求を取り下げて、MARPOL条約付属書I規則13Gに定められたIMOのフェーズアウト・スケジュールに従うよう説得された。
 
・EU諸国によるポートステート・コントロールの強化:2002年12月初旬にEUは欧州海上安全局(EMSA)を設置した。この機関がその権限をフルに発揮する段階に至った暁には、加盟各国に対し、それぞれの港に寄港する船舶のうち検査の対象とするものの比率を十分に確保する義務を忠実に履行させることになる。このポートステートコントロール強化により、油送船に限らず、船種に関わりなく全てのサブスタンダード船に対する圧力が高められることになる。同じく12月初旬には、提案された新海上安全規則が実現した場合にEU水域立ち入り禁止となる66隻のブラックリストを欧州理事会が公表した。その内訳はドライバルクキャリア49隻に対してタンカーは16隻に過ぎず、残りの1隻は客船である。66隻の大半は船齢20年を大きく超え、過去の事故記録からして「きわめてリスクが高い」旗国に登録された船である。
 
・他の地域における高齢船の営業運航に対する公的規制強化:例えばイスラエルは既に、2003年2月15日以降、船齢20年超のタンカーが、紅海岸のエイラトに寄港することを禁止すると発表している。また25年超の船舶は、同日よりイスラエル地中海岸のアシドッド、アシュケロン、ハイファ寄港が禁止される。37
 

30
例えば「エリカ」事故以外にも、2001年6月に船齢25年のVLCC「ヘンサン」号が沈没している。
31
At end-October 2001年10月末現在、中東ガルフで短期の洋上備蓄に8隻のVL/ULCC、計2.9mdwtが使用されていたが、12月末までにその用船契約が更新されないまま全て期限切れとなった。うち2隻はその後解撤され、他に1隻がFPSO改造向けに売却された。
32
IACSの新提案が実施に移される可能性もまだ定かではない。
33
備考:日本向けトレードに従事する船舶に対する15年の船齢上限は法定要件ではなく、国内港湾当局が多年にわたって運用してきた方針である。これは日本のターミナルの多数が漁港に近く、従って環境問題が高い優先順位を与えられるためである。バルク運搬船に関わる事故を減少させるために、港湾当局は新型船のみを使用するよう求めている。
34
ただし2002年にドライバルク市況が好転したため、一部の用船者はその要件を緩和している。
35
これらの新規則の適用に関して、スペイン当局は重質油を重質原油(すなわちAP 20°の原油)、燃料油およびアスファルトと定義した。
36
しかし逆にいえば、ポートステートはUNCLOSの第56条および73条により、汚染を防止し海洋環境を護る権利を認められているのである。
37
船齢制限がエイラトの方がきびしいのは、同港が湾内に位置していて、油流出があった場合に汚染被害が大きくなる恐れが高いためと思われる。







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