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2002年度欧州造船政策動向調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


第1部 紛争経緯
 韓国に対する欧州の問題意識は、韓国造船業が大幅な設備拡張を実施し、その後破綻に追い込まれた財閥系造船所を政府助成によって再建したことにある。具体的にこれが通商問題として顕在化を始めたのは1999年に入ってからである。以下に1999年初から2002年2月までの主要な動きを時系列的に整理した。
 
1999年〜2000年
 欧州造船業界は1997年から1999年に掛けて破綻した韓国の主要造船会社3社について、その再建手続きがWTO協定に抵触する不公正慣行であるとの強い不満を抱き、ECに対し強い要請を行い、その後EUの本格的なアクションが始まった。EU内の造船助成規則に基づく産業閣僚理事会への報告という形で、韓国の造船問題を公式のテーブルに乗せた後、EU内の貿易障壁規則(Trade Barrier Regulation:TBR)に従って、本件をWTO協定に基づく通商措置に訴える姿勢を示すことで、韓国に圧力をかけた。
 
 1999年末にはこのEUからの申し入れを韓国側が受入、二国間協議が始まった。都合3回の協議を経て、2000年4月には、韓国の経営破綻造船所への政府助成の禁止、船価の改善努力、コスト割れ受注の防止などを盛り込んだ合意文書が仮署名された。しかしながら、その後も船価の回復ははかばかしくなく、同合意文書に基づく二国間協議が開始されたが、「コストの積み上げ比較」による船価モニタリングを主張する欧州と「直近の市場価格との比較」を主張する韓国の溝は埋まらず、協議は不調に終わった。
 
 2000年10月に、欧州造船業界は、韓国政府による自国造船業への公的支援に対する不当性調査の申し立て(TBR提訴という。)をECに提出し、12月にはECによるTBR調査が開始した。
 
2001年〜2002年
 ECによるTBR調査が行われる一方で、韓国造船業界は、マスコミや学識経験者、欧州のシップブローカー等による韓国造船業擁護などのキャンペーンを展開した。
 
 2001年5月にECは、第1次のTBR報告を出し、韓国の大宇のワークアウト、漢拏重工及び大東造船の破産手続き、大宇に対する租税特別措置制限法及びワークアウトにおけるスピンオフ促進税制の適用はWTO協定の相殺措置の対象となる補助金に該当し、また韓国輸出入銀行の輸出補助制度は同協定の禁止輸出補助金に該当する可能性があり、また、これらによりEU造船業が貿易上の悪影響・損害を被っていると結論し、今後二国間協議で解決できない場合にはWTO提訴、さらに韓国輸出入銀行の輸出補助制度については調査を継続することとした。また、一方で韓国の不公正慣行から欧州造船業を保護するため暫定的に造船助成を再開するとする方針を示した。
 
 この圧力で、船価改善策を探る二国間協議が再度開催されたが、約15%の船価改善を求めたEUに対し、韓国は7〜8%を主張し、交渉は決裂に終わった。
 
 その後、WTO提訴についてはEU加盟国内で意見の一致が見られたものの、暫定助成措置の導入をめぐってEU各国の意見が二分した。大手造船業を抱え、造船業保護に積極的なイタリア、スペイン、ドイツなどは暫定助成措置の導入を求めているが、暫定助成措置によるEU域内の競争条件の歪曲化を問題視するオランダ、英国、デンマーク、スウェーデン、フィンランドが反対を示した。これらの反対国は、助成強度の差が域内の競争を歪め、韓国と競合する大手造船所が助成を獲得することで、中小造船所が中心の特殊船等の市場への進出する危険性を問題としていた。
 
 その後複数回に渡り閣僚理事会に諮られながら、特定多数決(各国の投票に異なる重みを持たせた多数決方式)を得る賛成が集まらず、継続審議で議論は先送りされたが、2002年6月、閣僚理事会は(1)暫定助成規則対象船種はコンテナ船、プロダクト・ケミカルタンカー及びLNG船とし、最大助成率は契約額の6%。ただしLNGについては2002年中の調査結果を待って判断するとし、(2)9月末までに二国間協議で解決しない場合に、WTO提訴と暫定助成の両方を実施することを決定した。
 
 2002年8月のソウルでの欧韓実務者協議も成果はなく、9月末のブリュッセルでの欧韓ハイレベル協議においても物別れに終わった。
 
 2002年10月には、暫定措置規則の実施が欧州委員会で決定され、とうとうWTO提訴が実施された。その後WTO協定に基づいて、2国間協議が11月に第1回、12月に第2回と実施され、その間にも勧告からは、欧州域内での慣行等について質問状が出され、2月には欧州から回答がなされた。2国間協議は予想通り解決の糸口が見えそうに無く、今後欧州から紛争処理パネルの設置要請がWTOになされることは確実と思われ、その際には我が国も第3国として意見を述べる用意があるとされている。
 
 2002年以降の欧州と韓国の造船摩擦を巡る状況推移は以下のとおりである。
2002年1月 EU産業担当リーカネン委員、CESAレセプションでLNG船を追加したTBR調査の3月結了を示唆
2002年2月 KSA、LNG船追加TBR調査に関する意見を発表 大手弁護士事務所を起用した報告書で韓国助成とEU造船業の業況の間には因果関係がないと主張
2002年4月 欧州委員会(EC)「第5次造船市場報告書」採択
2002年6月 EU閣僚理事会は暫定助成措置及び9月末までに2国間協議で解決しない場合にWTO提訴と、暫定助成措置の実施を決定
2002年6月 EU韓国2国間の再協議開始
2002年9月 EU−韓国サミットで造船問題言及
2002年9月 EU韓国2国間協議(ハイレベル)会合 双方の理解の溝埋まらず、物別れ
2002年9月 2国間協議の結果(失敗)を閣僚理事会へ報告
2002年10月 暫定助成措置及びWTO提訴規則(TBR)の発動を欧州委員会(EC)決定、WTOへ正式協議要請、官報発出
2002年10月 日本、WTOパネルへの第三国参加を表明
2002年11月 欧州委員会(EC)「第6次造船市場報告書」採択
2002年11月 第1回欧州韓国WTO協議 特段成果なし
2002年12月 第2回欧州韓国WTO協議 特段成果なし
2002年12月 韓国による欧州へのWTO質問状提出
2003年1月 欧州委員会(EC)、将来の造船産業のビジョン策定のため、造船ハイレベル会合を設置(Leadership 2015)
2002年1月 リーカネン委員CESA等主催の新年会でWTOでの韓国追求をスピーチ
2003年2月 韓国による欧州へのWTO質問状に対する回答提出







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