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2002年度欧州造船政策動向調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


B.2.5 法廷管理による破産処理手続き
B.2.5.1 説明
 韓国の法律では、3種類の倒産手続きが規定されている。
 
会社再建手続き:負債リストラを通して支払不能企業の再建を図る、裁判所の監督の下での手続き。裁判所が指名した管財人が会社の運営を行い、監査人が企業の資産と債務を評価し、担保付債権保有者は担保物件に関してアクションを起こすことを禁じられる。会社再建手続きでは、倒産企業の現職経営陣は、通常、裁判所の指名による管財人により置き換えられる。裁判所は、会社再建計画が完全に実施されるまで、その施行の監視を継続する。
 根拠となる法律は、会社再建法(1962年12月12日、Act No.1214、1999年12月31日に最終改正)
和議手続き:多様な負債リストラ方法を通して、支払不能企業の再建を行う手続き。裁判所は、債権者が合意に基づく和議案を策定する段階で調停役を果たす。会社再建手続きと違い、裁判所の役割は和議案を承認することにより終了し、その後、和議案の実施は債権者の監督の下で再建企業自体が行う。大企業は和議手続きを利用することはできない。和議手続きは、担保付債権保有者及び株主の権利に影響を与えない。韓国企業が和議手続きを利用する主たる理由は、現職経営陣がそのまま経営権を保持することができるからである。
根拠となる法律は、和議法(1962年1月20日、Act No997、2000年1月12日に最終改正。
破産手続き:支払不能となった企業を清算し、事業を整理する手続きであるが、この手続きは個人も利用可能である。破産手続きは、担保付債権保有者の権利に影響を与えない。
根拠となる法律は、破産法(1962年月20日、Act No.998、2000年1月12日に最終改正)。
 
 韓国における3種類の倒産手続きのうち、調査の対象となった2企業(大東と三湖)は、会社再建手続きのみを利用しているため、本分析では、当該手続きのみを扱う。
 
 会社再建手続きは、当該企業を管轄する裁判所の監督の下に行われ、支払不能に陥った企業の再建のための企業リストラ方策を提供する。このように、上記の手続きは本質的にワークアウト手続きと目的を同じくする。さらに、会社再建計画が債権者会議において債権者により採用されなかった場合、会社再建手続きは終了する。それゆえに、再建計画に債権者が同意することが、支払不能に陥った企業の再建に必要不可欠である。会社再建についての債権者承認の採択には、(a)無担保債権全体の3分の2以上の債権を保有する無担保債権保有者の同意、かつ(b)担保付債権全体の5分の4以上の債権を保持する担保付債権保有者の同意が必要とされる46
 
 この点で、会社再建手続きにおける裁判所の役割は、主として、関係者すべての権利が守られることを担保することであり、裁判所には当該企業にリストラ支援を供与するべきかどうか、また支援額、またはその種類についての決定権はない。これは、完全に債権者が決定権を有する。
 
会社再建手続きの下での措置
 一般に、これらの法的破産手続きにおいて採用される再建計画には、負債繰り延べ、債務の出資転換、利子軽減、債務免除、その他の債権者の権利の修正、調整が組み込まれるのが常であり、これはワークアウトのプロセスと同様である。
 
倒産手続きを受けた造船所
 
 漢拏重工大東造船は会社再建手続きを受けた。
 
三湖重工(旧漠拏)
 漢拏は1977年に創設された。1997年12月6日、漢拏は倒産し、裁判所に会社再建手続きの適用を申請した。1998年11月、再建計画の一部として、RH Engineering & Heavy Industries Co. Ltd.(“RHHI”)が、漢拏の残存する資産及び債務を承継するブリッジ(負債処理のための中間)企業として設立された。再建計画に従って、1999年9月18日にRHHIは漢拏重工から造船及び建設機器事業部門を買収した。1999年10月27日に債務の出資への転換が完了し、RHHIは三湖重工と改名した。漢拏は現在、清算手続きに入っている。漢拏の債権者(すべて金融機関である)はまた、相当額の債務及び利息を貸し倒れとして処理することに合意した。
 
 詳細はANNEXを参照のこと。
 
大東
 大東造船は、TBR調査に協力しなかった。大東は株式非公開の有限会社であり、30,000DWT〜80,000DWTの中型船の建造を専門にする純粋な造船会社である。
 
 大東造船は、1997年1月30日に倒産し、1998年8月20日に会社再建手続きに入った。債権者は負債繰り延べ計画を承認し、利息を免除した。
 
 詳細については、ANNEXを参照
 
B.2.5.2 補助金分析
資金的貢献
 韓国における再建手続きでは、主要債権者グループが存在する。これは通常、最大の債権者の集団であり、債権者委員会として負債リストラの条件の交渉責任を負うものである。それゆえに、漢拏及び大東の負債リストラの場合、主要債権者が公的機関であったかどうかを調査することは理にかなっている。さらに、当該企業の未払い債務の66%47を超える債務を保有している無担保債務の保有者は、リストラの決定を行うことができるため、公的機関がそれ以上の割合を保有しているかどうかに限定して分析する。
 
 上記の点に鑑みて、漢拏と大東の未払い債務の66%以上を保有している主要金融機関は次の通りである。
 
漢拏:KDB、KAMCO、KEXIM、Chohung、CBK、Nara merchant Bank、釜山銀行、光州銀行、IBK、KEB
大東:KDB、釜山銀行、Shinan Bank
 
 大東は、欧州委員会の調査に協力しなかったため、判明した事実のみ。
 
 上記の事実から、これらの2つの造船所の裁判所による倒産手続きに、大宇の場合とほとんど同一の銀行が関与しているということがわかる。この事実に照らしあわせれば、先のワークアウト・プロセスの分析を適用することができる。
 
資金的貢献についての結論
 上記の分析に照らし、会社再建手続きにしたがって漢拏と大東に供与された支援は、ASCMの第1条1(a)(1)(iv)に規定される資金的貢献にあたる。
 
利益
 漢拏及び大東に供与された利益は、直接債務免除による債務免除額、債務の出資への転換額、償還期間の繰り延べ、利率の調整により節約された利息額からなる。漢拏の受けた利益総額は、2兆630億ウォン(15億USドル)、大東造船の利益は634億ウォン(4,830万USドル)と推定される。
 
 会社再建手続き中の漢拏は、貸付信用もなく、株式信用もなかった。大幅な負債リストラ後ですら、関心を示す投資家はいなかった。特に、漢拏グループは、コンサルティング会社と再建コンサルティングで合意に達したが、同コンサルティング会社は漢拏の正味資産価値及び会社清算時の価値を評価した後、漢拏の資産及び未払いの債務のすべてを引き受ける会社を設立することを提案した。未払いのローンの未払利子の免除、担保付き融資の52%の免除、無担保融資の78%の免除、支払保証義務の80%の帳消しといった寛大な負債リストラが実施された後に、コンサルティング会社が手配するブリッジ・ローンにより、未払いの債務は全額支払うという内容であった。
 
 しかしながら、コンサルタントが提案したブリッジ・ローンによる負債リストラは、国内外の投資家が関心を引きつけられなかった。その結果、裁判所によって指名された管財人が、改訂再建案を作成し、さらなる負債リストラのパッケージを提供した。(詳細は補遺参照)。
 
 大東と漢拏の主要な債権者48は、KDB、KAMCO、KEXIMであり、大宇の分析の際に説明したように、すべて国家経済の発展の支援を目的とする公的機関である。これらの公的機関の損失について、韓国政府が無制限に肩代わりすることを考えれば、これらの公的機関は純粋に商業ベースではない決断を下す余裕があり、実際そうしていることは明らかである。
 
 最後に、先の大宇の分析で説明したように、独立した民間銀行の商業ベースの判断による措置に、債務の繰り延べが含まれていたと仮定しても、リストラが行われた債務の総額(漢拏、大宇だけで38億USドル)は、最終合意に達したパッケージは、非常に寛大なものでであり、大宇及び漢拏の債権者が吸収した損失は、政府の支援があるという確証がなければ、自らが相当な財政難に直面している民間商業銀行が受け入れられるような額ではないことを示している。
 
特定性
 大宇の分析の際に説明したように、造船所支援はASCMの第3条により輸出補助金(Export Contingent)と見なすことが可能である。それにかかわらず、支援が漢拏に特定的であったことを示す強い根拠がある。
 
 先に説明したように、会社再建手続きは、適用企業を所轄する裁判所の監督の下で行われ、支払不能に陥った企業の再建のためのリストラ措置を企業に提供する。そのため、会社再建手続きは、本質的にワークアウト・プロセスと目的を同じくする。会社再建手続きとワークアウト・プログラムの間の大きな違いは、ワークアウト・プロセスでは金融機関自体が法廷外で実施するのに対して、会社再建手続きは裁判所の監督下で行われることである。ワークアウト・スキームに関する定性の分析を類比により適用する。
 
適格性は自動的ではなく、債務額についての客観的尺度は存在しない。
 韓国政府及び韓国造船工業会(KSA)はまた、会社再建手続きスキームの参加の適格性については、受益者の更正の見込み(バイアビリティ)に基づいて金融機関が独自で決定するため、客観的であり、同スキームには特定性はないと主張している。ASCMの第2条1(b)は、(補助金の)交付当局に「補助金の交付を受ける資格及び補助金の額に関する客観的な基準又は条件」を制定することを義務づけ、「交付を受ける資狢は自動的に付与されるものであり、かつ当該基準及び条件が厳格に遵守されていること」としている。
 
 適格性の問題について、韓国政府は、適格性基準を満たす企業はすべて会社再建手続き適用を申請することができるとした。しかし、適格性は、候補企業から債権を有する銀行への申請に限られており、負債繰り延べ計画の承認は自動的ではない。実際の計画は、債権を有する銀行により、その件限りの特別な決定によるという事実に鑑みれば、リストラ・パッケージは一件一件違い、当該債務繰り延べ計画の当事者である企業にしか影響しない。銀行が企業に援助を供与するかどうかの決定は、純粋に任意裁量による。実際のところ、韓国政府は、決定は任意ベースで行われていると主張している。法により定められた義務行為はなく、同様の状況に対する措置が異なった場合の罰則も存在しない。企業が援助を受ける適格性が自動的ではない結果、債権者は「更正の見込みのある」企業に対する援助の供与を拒否しても、更正の見込みのない企業に援助の供与を認めても、その行為を正当化する必要はない。
 
 さらに、債務免除金額についての客観的な条件は存在しない。債務免除金額の決定は債権者の裁量に完全に任されている。それゆえに、会社再建手続き中の企業にそれぞれ異なる金額の債務免除が与えられることもあり得る。実際に漢拏及び大東に関して、この状況が発生している。両社は同じ手続きの対象となっていたにもかかわらず、負債免除の種類及び金額は、関連した銀行の任意裁量により全く異なるものとなっている。両社の手続きには殆ど同一の債権者(特にKDB)が関係していたことを考慮すれば、さらにこの点は顕著になる。
 
 手続きにおける裁判所の役割は、主として、すべての関係者の権利が守られ、再建計画が「公正、公平かつ実行可能」49であることを担保することであり、裁判所は当該企業に援助を供与するべきかどうか、また支援の種類や金額について決定権を保有しない。決定権は完全に債権者が有する。たとえば、債権者が更生の見込みのない企業に対して、債務の完全免除の支援を供与すると決定した場合、これに異議を唱えることはない。このような場合に裁判所は、債務免除を与えるうえで、他の関係者の権利が損なわれないことを担保するだけである。それゆえ、裁判所の監督下での手続きにより供与された補助金であったも、特定性があると考えることができる。
 
事実上の特定性:漢拏は主要な受益者である
 ASCMの第2条1(c)によれば、表面的には特定性が認められない場合にも、とりわけ、限定された数の企業による補助金の利用、特定企業による補助金の支配的な利用、特定企業に対する均衡を失した多額の補助金の交付が存在すると信ずるに足る理由がある場合には、補助金は事実上、特定的であると見なされることがある。
 
 適格性に関して、韓国産業銀行(KDB)のウェブサイトでは、決定は必ずしも中立的、客観的に下されるわけではないとしている。特に、「企業リストラ活動において、KDBはどのような役割を果たすのか?」という問いに対して、KDBの上級マネージャーは次のように答えた。「KDBは債権を有する他の韓国の銀行と協力して、一時的な資本流動性の不足に悩まされている企業56社を特定し、それぞれに合わせたワークアウト・プログラムを通じてこれらの企業の回復を支援している。商業銀行は大幅なリストラを実施しており、新たに信用を供与する能力が限られているため、KDBはいくつかの信用度の高い、輸出志向の企業と、一時的な資本流動性の問題を抱えている中小企業を選択的に支援している。50。上記の発言が、KDBの英語ページの、FAQ(よくある質問)のページに記載されているという事実は、KDBがリストラに際して使用される法的手続きの形式、すなわちワークアウト・スキームであるか、裁判所の監督の下でのリストラであるかにかかわらず、ある種の公共政策上の目的を追求することが、自らの役割であると認めていることを示している。それゆえに、KDBは、特定のカテゴリーの企業、すなわち輸出志向の企業に有利な裁量を行使したことは明らかである。市場の性質から、造船会社はほとんどの場合輸出志向である。実際、調査の過程で得た情報に基づくと、調査期間中に受注した契約の殆ど全ては韓国以外の顧客によるものであった。それ故に、漢拏及び大東は「選択的に支援される」企業の中に容易に含められた。
 
 更に、FSSによれば、韓国の22の商業銀行、特殊銀行は、2000年に総額13兆6,000億ウォン、1999年に15兆7,000億ウォンの赤字を出している。KDBだけでも2000年の赤字は1兆4,000億ウォンにのぼる。漢拏一社の債務リストラによる貸し倒れ額が推定1兆8,000億ウォン51(詳細は補遺を参照)の水準にあることを考慮すれば、漢拏に不釣り合いに巨額の助成が供与されたことは明らかである。
 
造船産業:主要な受益者
 大宇(DSME)及び漢拏は、銀行の貸し倒れ総額に対して、不釣り合いに巨額の補助金を交付されていることがわかる。両社に対する支援の影響を合わせると、造船部門が特別待遇を受けていることが立証され、それゆえ同じ造船産業内の大東のような他の会社に対する支援も特定的と考えられる。
 
 結論として、会社再建手続きにより、漢拏及び大東に交付された補助金は、ASCMに照らして特定的である。

46 会社再建法第205条
47 被保証債権者の場合は75%
48 詳細は附属書ANNEXを参照
49 会社再建法232条
50 KDBウェブサイトはhttp://www.kdb.co.kr/
51 調査対象期間(IP)の負債免除に呼応する







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