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2002年度欧州造船政策動向調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


II. 引渡し前融資
 KEXIMの引渡し前融資について、CESAは、国がコントロールする銀行による受益者への資金の移転(第1条1.(a)(1)(i)の意味の融資)の疑念があると主張した。特に、KEXIMの金融措置は、韓国の造船事業者に、韓国の金融市場において造船事業者が他の方法で得ることが出来る条件よりも有利な条件で金融上の支援(融資面の利益)を供与するものであることから、その融資を受ける者に「利益」を与えると主張している。さらに、欧州委員会は、鋼線についての相殺措置に関する2件の調査12において、この種のKEXIMの金融措置が相殺可能な輸出補助金であると既に結論付けているとCESAは主張した。
 
 KEXIMの国内供給者に対する船積み前融資は、輸出に対する金融に必要な資金を韓国の輸出者に供与することを目的として、韓国の輸出者に対する金融措置を供与することにより明白に輸出活動を条件としていることから、ASCM第3条1に基づき「法令上輸出が行われることに基づいて・・・交付」されており、また、それゆえ、それらの措置はASCM第2条3の規定によりそれ自体が特定性を有する、禁止される輸出補助金であるとCESAは主張した。つまり、CESAは、上記の措置がASCM附属書I輸出補助金の例示表(k)項の「例外規定(safe havens)」には当てはまらないと主張した13
 
説明
 KEXIMは、いわゆる「引渡し前信用」制度の下で、造船所に対して船舶建造にかかる金融支援を行うことを目的として、造船所に対して輸出契約と結び付いた融資を供与している。その名称にもかかわらず、引渡し前融資制度は、造船所と買主との間の契約の支払い条件に依存するものではなく、また、買主に対して造船所により、または、造船所を通じて供与される信用と決して結び付いたものでもない。すなわち、引渡し前融資は、純粋に建造にかかる金融を目的として造船所が利用可能なものであり、合意された支払い条件に依らず契約を扱えるものである。
 上記に照らせば、当該制度は、買主に供与される信用と幾分結び付いた印象を与える「信用」と呼ぶよりは、引渡し前金融と呼ぶ方がより相応しい。
 
 当該引渡し前融資制度の資格要件は、「国内供給者向け輸出融資」制度に対して適用される資格要件に類似している。また、「国内供給者向け輸出融資」制度についての信用要件の基準は、所要の変更を加えた上で適用される。しかしながら、引渡し前融資を供与する上での条件(例えば、頭金の最低額、最長償還期間等)は、船舶輸出信用了解が適用されないことから、「国内供給者向け輸出融資」の供与にかかる条件とは異なっている。例えば、引渡し前融資の最長償還期間は、引渡し後30日となっている。さらに、輸出者の他に、資材供給者もまた引渡し前融資を受けることができる。
 
 引渡し前融資額の上限は、輸出契約金額から借り手が既に受け取った現金支払い額を差し引いた額の90%までである。
 
 KEXIMは、韓国ウォン建てと同様に外貨建ての引渡し前融資に対して、変動金利を適用している。外貨建て及び韓国ウォン建ての変動金利は次のように決定される。
 
(1)外貨建て変動金利
 外貨建て変動金利は、基準金利、最小スプレッド、期間リスク・スプレッド及び信用リスク・スプレッドの総計により決定される。
 
- 基準金利:当該外貨のLIBOR金利
- 最小スプレッド:最小金利は、外貨借り受けの資金調達コストに管理費用及び利掛けを加えて決定される。
- 期間リスク・スプレッド:期間リスク・スプレッドは、2〜3年の償還期間の融資に対して[]%ポイントが上乗せされる。融資期間が2年に満たない場合には、スプレッドは上乗せされない。期間が3年を超える場合には、期間が3か月増すごとに[]%ポイントが上乗せされる。
- 信用リスク・スプレッド:申請者との交渉によりKEXIMが行った信用評価に基づき、最大[]%ポイントまでの信用リスク・スプレッドが上乗せされる。借り手の信用評価が一定水準を下回った場合、または、担保物件の価値が未払い融資残高を下回った場合には、追加の信用リスク・スプレッドが上乗せされる。
 
(2)韓国ウォン変動金利
 韓国ウォン変動金利は、最優遇金利、信用リスク・スプレッド及び特別調整スプレッドの総計により決定される。
 
- 最優遇金利:最優遇金利は、韓国産業銀行(KDB)が発行する産業金融債(Industrial Finance Bonds)の市場利回りに基づいて決定される。
- 信用リスク・スプレッド:KEXIMが行った信用評価に基づき、最大[]%ポイントまでの信用リスク・スプレッドが上乗せされる。借り手の信用評価が一定水準を下回った場合、または、担保物件の価値が未払い融資残高を下回った場合には、追加の信用リスク・スプレッドが上乗せされる。
- 特別調整スプレッド:KEXIMは、国内市場の状況、産業市場及び金融市場の動向及び市場金利を勘案した上で、必要に応じて特別調整スプレッドを上乗せできる。
 
 引渡し前融資は、1999年に総額4兆770億ウォンにのぼり、KEXIMの金融総額(9兆4600億ウォン)の43.1%を占め、2000年には総額2兆6510億ウォン、KEXIMの金融総額(7兆5960億ウォン)の34.9%に減少している。
 
関係する造船所
 調査した全ての造船所が引渡し前融資制度を利用している。
 
評価
 調査期間中、KEXIM及び調査に協力した造船所は、KEXIMによる金融措置の個別の条件に関するあらゆる情報は機密情報であると判断し、また、KEXIMによる金融措置の条件に関する情報の開示は全て深刻な商業上の損害をもたらしうると判断した。このため、制度全体の一般情報のみしか得られなかった。
 
資金面の貢献
 融資は、第1条1.(a)(1)(i)の規定による資金の移転である。したがって、KEXIMの融資は上記条項の規定による資金面での貢献に該当する。
 
利益
 利益は、造船所が市場金利でない融資を受けてきた範囲において存在する。特に、ASCM第14条(b)の規定によれば、政府による貸付けは、当該貸付けを受けている企業が当該貸付けに対して支払う額と当該企業が市場で実際に同等な商業的貸付けを受ける場合に当該商業的貸付けに対して支払う額との間に差がない限り、利益をもたらすものとみなしてはならない。この場合において、利益は、手数料の差を調整した後のこれらふたつの額の差額とする。
 
 利用可能な情報によれば、引渡し前融資の供与において、KEXIMが普通の商業的金融機関と異なる振る舞いをしたことが強く示唆されている。KEXIMは、1999年報において、「本行(KEXIM)は、商業的金融機関から十分な貿易関連金融を受けることが困難であった輸出入事業者に対して各種金融制度を提供することにより(経済)回復に貢献した。」と自認している。
 
 このように、KEXIMが、民間金融機関が事業に対して金融措置を提供しようとしない場合に、韓国企業に対して引渡し前融資を供与したことを年報は示唆している。言い換えれば、これらの企業は信用力が十分ではなかったと考えられる。
 このことは、大宇へ供与された融資により例証される。1999年未に大宇の未払い融資残高は14億ドルであり、そのうち10億ドルは正常(normal)に達しない格付け、即ち、警戒(precautionary)、不十分(substandard)または疑問(doubtful)に分類されるものである。2000年報において、状況は明らかに悪くなっている。ワークアウト中の大宇グループ企業のKEXIMに対する未払い融資残高は、22億ドルにのぼり、そのうち19億ドルは警戒(precautionary)、不十分(substandard)または疑問(doubtful)に分類されるものである。
 
 いずれにせよ、大宇や漢拏のような事実上倒産した企業に対して、現代のような財務的に強い企業に対する融資と同等の金利で融資することは、リスク評価が純粋な商業べースで行われなかったことを示している(下記の表参照;財務報告書からの情報)。加えて、0%や1%の利子を生む融資の存在は商業的に正当化され得ない。
 
三湖
短期借入れ
一般融資条件の年利:
1999年 10.75−11.5%
これらにはKEXIMからの有担保融資を含む。
 
現代重工業
短期借入れ
一般融資条件の年利:
1998年 10−15.75%
1999年 8.2−12%
2000年 8.2−9.95%
 
長期債務
ウォン建て融資−KEXIMからの引渡し前金融:
1998年 9%
1999年 8.14−8.17%
2000年 8.32%
 
外貨建て融資−KEXIMからの引渡し前金融:
1998年 Libor+0.70−3.58%
1999年 Libor+1.81−2.80%
2000年 Libor+1.98−2.80%
 
大宇
長期債務
韓国の銀行からのウォン建て融資
1997年 1.0−12.4%
1998年 1.0−12.4%
1999年 最優遇金利−最優遇金利−4.5%
2000年 0%−11%
 
韓国の銀行からの外貨建て融資
1997年 Libor+0.15%−2%
1998年 Libor+0.50−2%
1999年 Libor+2%−2.50%
2000年 0%−Libor+2%
 
 加えて、欧州委員会は以前の調査において、KEXIMの引渡し前融資は「・・・同等の商業的融資と比べて一般に低い金利で供与されており、それゆえ、融資の受け手に利益を与えている」14と結論付けた。
 
 以上のことから、引渡し前融資制度は、融資の受け手に利益を与えたと考えられる。
 
輸出要件
 引渡し前融資は輸出契約の存在を条件とすると韓国政府は明言している。加えて、KEXIMが明らかにし、また、造船所が説明しているように、韓国からの輸出産品の製造に必要な資本を供与することが、まさにこの制度の目的である。従って、この制度は、ASCM第3条1(a)の規定に基づく輸出補助金に該当すると結論付けることができる。
 
禁止補助金問題
 輸出補助金は、「輸出補助金には当たらないものとして附属書Iに規定する措置は、この条の規定又はこの協定の他のいかなる規定によっても禁止されない。」と規定するASCMの注釈5の規定に当てはまらない限り禁止される。
 
 当該融資はASCM附属書Iの関連規定の「例外規定(safe haven)」に該当すると韓国政府は主張した。その点に関し、当該融資は以下のように規定されているASCM附属書I(k)項第1小段落の「例外規定(safe haven)」に該当すると主張された。
 
 政府(又は政府の監督の下にある若しくは政府の権限の下で活動する特別の機関が輸出信用に用いる資金を自ら獲得するために実際に支払わなければならない利率(又は輸出信用に用いる資金と償還期間、他の信用条件及び通貨を同一にする資金を獲得するために国際資本市場において借入れを行ったとしたならば支払わなければならなかったであろう利率)よりも低い利率で輸出信用を供与すること又は輸出者若しくは金融機関が輸出信用の供与を受けるために負担する費用の全部又は一部を支払うこと。ただし、政府が輸出信用を供与すること及び費用を支払うことが輸出信用の条件について相当な利益を与えるために行われる場合に限る。
 
 韓国政府は、(i)当該融資は、資金調達のために実際に支払わなければならない金利を上回る利率で貸し出されており、(ii)当該融資は相当な利益を獲得するために利用されていないと主張している。
 
 一般的に言って、韓国の造船所に対して供与される融資は、上記条項の規定における輸出信用には該当しないということを上述の情報は示している。特に、これらの融資は、買主に信用を供与する(そのような信用は上述の輸出融資制度により取り扱われる)ことを目的として造船所が利用できるものとしているわけではなく、また、船舶の引渡しの時点を越える期間に及ぶものでもない。このように、(k)項の第1小段落が適用されないことから、外貨建て融資がいかなる場合にもLibor金利を上回る利率でなされた事実は重要ではないのである。
 
 このことは、どのような制度が(k)項第1小段落の規定に適合する制度であるか、即ち、「輸出信用の条件について相当な利益」を確保する制度であるかを測るための判断基準によって、さらに立証される。引渡し前融資は、輸出信用の供与を含んでいないので、この分野において輸出者に相当な利益も取るに足らない利益も確保できないのである。
 
 上述の分析から分かるのは、引渡し前融資は、何らかの資本財の韓国からの輸出に従事する製造事業者に供与される単なる製造にかかる融資であるということである。当該融資の目的は、資材コスト、賃金及び管理費など、船舶の引渡しまでに必要な製造コストに対して資金を手当てすることである。その意味で、当該融資は、輸出を条件とする直接的な補助金に該当し、ASCM附属書I (a)項に該当するものである。
 
 上述の要素は、引渡し前融資制度がASCM第3条1に規定される禁止される輸出補助金に該当するとの結論に導いている。
 
影響
 引渡し前融資が利用可能であるということは、韓国の造船事業者に廉価な営業資本という形で直接的な競争上の優位性を付与するものであることから、特に加害的である。このことは、tail-heavyな支払い条件、例えば、船価の70%が引渡し時に支払われるような支払条件の契約については、より重要性を有する。先に説明したように(B.1章参照)、tail-heavyの支払い条件は、買主にとっては魅力的であるが、通常、造船所への支払い額が後にずれ込むほど理論的には高い船価となるはずである。しかしながら、引渡し前融資の供与は、より高い船価を課さなければならない必要性を除去し、一方で、買主に対して魅力的な条件の提示を可能にするのである。

12 Commission Regulation 618/1999及び619/1999(1999年3月23日)(OJ L79)
13 CESAは、禁止されるものではないとしても、そのような助成は、悪影響をもたらすものであることから、ASCM第5条の規定により相殺措置の対象となると主張している。
14 Commission Regulatuin 618/1999(1999年3月23日)(OJ L79)の第128段落を参照。







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