1985/09/19 朝日新聞朝刊
新防衛計画の内容
政府が18日の閣議で決めた中期防衛力整備計画(61―65年度)の内容は次の通り。
【1】 整備方針
61年度から65年度までの防衛力整備に当たっては、「防衛計画の大綱」(51年10月29日国防会議及び閣議決定)の基本的枠組みの下、これに定める防衛力の水準の達成を図ることを目標とする。その際、国際軍事情勢及び諸外国の技術的水準の動向を考慮し、これに対応し得る効率的な防衛力の整備を図るため、陸上、海上及び航空自衛隊のそれぞれの各種防衛機能について改めて精査し、資源の重点配分に努める。このほか、各自衛隊の有機的協力体制の促進及び統合運用効果の発揮につき特に配意する。
具体的事業の推進に当たっては、次のことを重視する。
1 航空機、艦艇、地対空誘導弾等装備の充実近代化による本土防空能力及び我が国の周辺海域における海上交通の安全確保能力の向上に努めるとともに、我が国の地理的特性を踏まえ、師団の近代化・編成の多様化、洋上・水際撃破能力等の強化による着上陸侵攻対処能力の向上に努める。
2 正面と後方の均衡のとれた質の高い防衛力の整備を図る。このため、特に、情報・偵察・指揮通信能力、継戦能力、即応態勢及び抗たん性の向上並びに技術研究開発の推進を重視するとともに、教育訓練体制等の充実による練度向上及び隊員の生活環境の改善に配意する。
3 防衛力の整備、運用の両面にわたる効率化、合理化の徹底を図る。
【2】 主要整備内容
1 本土防空能力
(1)防空迎撃能力を充実近代化するため、迎撃戦闘機(F15)、早期警戒機(E2C)を整備するとともに、迎撃戦闘機(F4EJ)の能力向上について、試改修の結果を踏まえ、別途検討の上、必要な措置を講ずる。
(2)重要地域の防空火力を充実近代化するため、地対空誘導弾(ナイキJ)を地対空誘導弾(パトリオット)に換装するほか、地対空誘導弾(ホーク)改善用装備品を整備する。また、短距離地対空誘導弾、新高射機関砲等を整備する。
2 周辺海域の防衛能力及び海上交通の安全確保能力
(1)艦艇による防衛能力を充実近代化するため、護衛艦、潜水艦、掃海艇、ミサイル艇、補給艦等を建造する。
護衛艦の建造に当たっては、対潜能力の充実とともに、対艦及び対空能力を向上するためミサイル装備化を推進する。その際、別途行う洋上防空体制の在り方に関する検討結果を踏まえ、護衛艦の対空ミサイル・システムの性能向上について検討の上、必要な措置を講ずる。
(2)航空機による防衛能力を充実近代化するため、固定翼対潜哨戒機(P3C)、対潜ヘリコプター(新対潜ヘリコプター=艦載型=を含む)、掃海ヘリコプター(MH53E)を整備する。
3 着上陸侵攻対処能力
(1)洋上・水際撃破能力を強化するため、地対艦誘導弾を整備するとともに、支援戦闘機(F1)の後継機に関し、別途検討の上、必要な措置を講ずる。
(2)火力、装甲機動力、対戦車火力を充実近代化するため、戦車(新型戦車を含む)、火砲、装甲車、対舟艇・対戦車誘導弾発射装置を含む対戦車火器等を整備し、師団編成の多様化を図るとともに、空中火力を強化するため、対戦車ヘリコプター(AH1S)を整備する。
4 輸送力及び機動力
輸送力及び機動力を強化するため、輸送機(C130H)、輸送ヘリコプター(CH47)等を整備するほか、輸送艦艇の整備を図る。
5 情報・偵察・指揮通信能力
(1)警戒監視及び情報収集能力の向上を図るため、引き続き、自動警戒管制組織の近代化、各種情報収集手段の整備等を行う。また、OTHレーダーについて、その有用性等に関し別途検討の上、必要な措置を講ずる。
(2)航空偵察能力を強化するため、現有の迎撃戦闘機(F4EJ)の一部を偵察機に転用する。
(3)指揮通信能力の向上を図るため、防衛通信網の近代化を推進するとともに、通信衛星の利用等各種施策を推進する。
6 即応態勢、継戦能力及び抗たん性
(1)即応態勢の向上を図るため、戦車の一部を北海道に転用配備して当該地域における初期対処能力の向上を図るとともに、引き続き、機雷・魚雷の実装化等各種施策を推進する。
(2)継戦能力及び抗たん性の向上を図るため、引き続き、弾薬の備蓄、基地防空火器の整備、重要施設の地下化等各種施策を推進する。
7 教育訓練体制及び救難体制
教育訓練体制及び救難体制の向上を図るため、中等練習機(T4)、救難飛行艇(US1A)、新型救難ヘリコプター等の航空機及び訓練支援艦等を整備する。
8 人事及び衛生
所要の隊員を確保し、士気の高揚を図るため、隊員の処遇改善等所要の人事、衛生諸施策を推進する。
9 施設
装備品の取得、部隊等の編成に必要な施設を整備するほか、隊員の生活環境の整備充実、弾薬施設・訓練施設等現有施設の改善充実を図る。また、引き続き、基地周辺対策を推進する。
10 技術研究開発
新対潜ヘリコプター(艦載型)システム、各種誘導弾その他の装備、器材等についての研究開発を推進し、技術研究開発の充実を図る。
11 在日米軍の駐留支援
日米安保体制の円滑かつ効果的な運用に資するため、引き続き、在日米軍の駐留を支援するための各種施策を推進する。
12 その他
(1)空中給油機の性能、運用構想等空中給油機能に関する研究を推進する。
(2)洋上防空能力の向上を図るため、各種装備の組み合わせによる効率的な洋上防空体制の在り方について、速やかに検討を行う。
【3】 整備規模
前記2に示す装備品のうち、主要なものの具体的整備規模は、別表の通り。
【4】 所要経費
この計画の実施に必要な防衛関係費の総額の限度は、昭和60年度価格でおおむね18兆4000億円程度をめどとするが、各年度ごとの予算の編成に際しては、一層の効率化、合理化に努め、極力経費を抑制するよう努力するとともに、その時々の経済財政事情等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ、これを決定する。
【5】 計画の見直し等
この計画は、随時必要に応じ見直しを行い、3年後には、その時点における経済財政事情、国際情勢、技術的水準の動向等を踏まえ、新たに作成し直すことについて検討する。
▽陸上自衛隊 |
戦車(新型戦車を含む) |
246両 |
火砲 |
277門 |
装甲車 |
310両 |
地対艦誘導弾 |
54基 |
対戦車ヘリコプター(AH1S) |
43機 |
輸送ヘリコプター(CH47) |
24機 |
地対空誘導弾 |
4個群及び |
(ホーク)改善用装備品 |
教育所要 |
▽海上自衛隊 |
護衛艦 |
9隻 |
潜水艦 |
5隻 |
その他 |
21隻 |
自衛艦建造計 |
35隻 |
(トン数) |
約6.9万トン |
作戦用航空機 |
128機 |
固定翼対潜哨戒機(P3C) |
50機 |
対潜ヘリコプター
〔新対潜ヘリコプター(艦載型)を含む〕 |
66機 |
掃海ヘリコプター(MH53E) |
12機 |
▽航空自衛隊 |
作戦用航空機 |
87機 |
迎撃戦闘機(F15) |
63機 |
輸送機(C130H) |
7機 |
輸送ヘリコプター(CH47) |
12機 |
早期警戒機(E2C) |
5機 |
中等練習機(T4) |
93機 |
地対空誘導弾(パトリオット) |
5個群 |
〈注〉
1 海上自衛隊の自衛艦建造トン数については、護衛艦の対空ミサイル・システムの性能向上に関する検討結果により、変動することもあり得る。
2 航空自衛隊の作戦用航空機の整備機数については、支援戦闘機(F1)の後継機に関する検討結果により、変動することもあり得る。
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