玉沢徳一郎防衛庁長官は三十日の閣議で、一九九五年版の防衛白書「日本の防衛」を報告した。白書はアジア・太平洋地域の安全保障について、多国間対話の重要性を強調し、日本として積極的に参加する姿勢を示している。国連平和維持活動(PKO)について、武力行使を伴うPKOが「すべて成功しているとは言えない」と、国連の役割の限界も指摘した。政府は「防衛計画の大綱」の見直しを始めているが、白書では、冷戦終結後の防衛力整備について「信頼性の高い効率的な防衛力の維持と質的改善を目指す」としただけで、具体的な構想は示していない。
安保対話・防衛交流については、韓国、中国、ロシア、東南アジア諸国との交流を詳述。アジア・太平洋地域は「安全保障観は多様で安保面の一体性が乏しい」とし、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラムなどを例に「全体を包括する多国間の対話に日本も積極的に参加することが重要だ」と主張している。
国連の役割については、武装解除など必要な強制措置が認められた第二次国連ソマリア活動(UNOSOM2)が失敗したことなどを挙げ、国連が新たな方向を模索していると指摘。日本の貢献については、国連モザンビーク活動(ONUMOZ)やルワンダ難民救援活動の実績を示した上で、社会党などが主張するPKO別組織論を「自衛隊の名誉や士気に悪影響を与える」などと否定した。
日本周辺の軍事情勢については、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核兵器開発疑惑や弾道ミサイル「ノドン一号」開発などに触れ、「北東アジアの不安定要因」としている。中国については、経済建設を優先していることから、「インフレ基調、財政赤字から、国防力近代化は漸進(ぜんしん)的に進む」との認識を示している。極東ロシア軍については、「大規模な戦力が蓄積されており、地域の安全に対する不安定要因」と指摘している。
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