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平成15年度 通信講習用 船舶電気装備技術講座(電気機器編、初級)

 事業名 船舶の電気装備に関する技術指導等
 団体名 日本船舶電装協会 注目度注目度5


2・1・5 自動電圧調整器
(1)用途
 自動電圧調整器(通常AVRと略称される。)は交流発電機の電圧を自動的に精度を高く一定に保つための装置で,ブラシレス式交流発電機では是非共組合せ使用が必要であり,また,自励式交流発電機でも負荷条件によって指定の電圧範囲を保ち難い場合及び一定電圧の維持を特にきびしく要求される場合に採用される。
(2)交流発電機用AVRの原理
 図2.12は交流発電機の電圧を一定に保つためのAVRの原理図である。
 AVRは発電機電圧VOACをあらかじめ定めた基準電圧Viに等しく保つため図のようにVOACを直流に変換しVoとし,Voを増幅器の入力にフィードバック(出力信号を入力側に戻すこと。)して基準電圧Viと比較する。比較して誤差ε(=Vi−Vo)があれば,この誤差信号を増幅し,増幅された信号によってサイリスタ等を用いた適当な装置を制御して界磁電流を調整し,発電機電圧が基準値に等しくなるよう補正動作を行う。
 増幅器の利得(出力対入力の電圧又は電力の比を言い,増幅度とも言う。)は大きいほど制御誤差は小さくなり,電圧精度は良くなる。ただ利得が大き過ぎると応答の行き過ぎ動作が甚だしくなり,そのため安定度が悪くなるので,電圧精度との関係において適当な値に選ばれる。
(3)AVRの形式
 最近のAVRは,その増幅動作をする装置がIC,トランジスタ,サイリスタ等によって半導体化され,小型化された上,高性能のものとなっているが,現在に至るまでに多種多様なものが船用として使用されている。それらの内,代表的なAVRの形式を下記に示す。
 
図2.12 AVRの原理図
 
(a)サイリスタ式AVR
 現在使用されているAVRは大部分がこの方式である。
(b)パワートランジスタ式AVR
 充電発電機のような小容量の発電機に使用されている。
(4)船舶用AVRに必要な要素
 船舶用交流発電機がその使用条件に対応して好ましい動作を発揮するために,AVRに必要とみなされる特性上の要素は次のようなものである。
(a)別電源を使用しないで,電圧確立が確実にできること。
(b)電圧精度のよいこと。整定状態で設定電圧に非常に接近した範囲内に電圧を維持できることを意味している。
(c)応答の速いこと。負荷電流の瞬時的変動等によって発電機電圧に変動が生じた場合,電圧を変化前の状態に戻す動作の速いことを意味している。
(d)制御範囲が広いこと。負荷電流が零から過電流領域まで変化したり,また,力率が変化しても指定電圧を維持できることを意味している。
(e)短絡事故発生時に遮断器を確実に動作させるために充分な大きさの発電機持続短絡電流を流すことができること。
(5)サイリスタ式AVRの回路構成
 現在最も広く使用されているサイリスタ式AVRの代表的な一例の回路構成について述べる。AVRは図2.13のブロック線図で表すことができる。
 
図2.13 AVRのブロック線図
 
 下記に各回路について概説する。
(a)電圧検出回路
 発電機電圧を変圧器によって制御に都合のよい電圧まで下げ,シリコン整流器D1によって直流に変換し,コンデンサC1によって平滑化し,基準電圧と比較できる信号に直す回路である。
 
図2.14 AVRの電圧検出回路
D1: ダイオード
C1: コンデンサ
R: 可変抵抗器
 
(b)基準電圧比較回路
 発電機端子電圧に比例した前記信号電圧とツェナーダイオード等で作った基準電圧を比較し,図2.15に示す如く,その誤差信号を取り出す。このような働きをする回路が基準電圧比較回路である。ツェナーダイオードは定電圧ダイオードとも言い,ある一定の電圧を超えると急に電流が流れ始める性質があるが,温度変化による特性上の影響が少なく5〜6V程度の電圧のものが通常使用される。
 
図2.15 ツェナーダイオードによる電圧比較回路
 
(c)増幅回路
 この回路はトランジスタ等を用いて誤差信号を次段のパルス位相制御回路(サイリスタの点弧時点を制御する回路)を動作させるために必要な信号の大きさに増幅する回路である。
(d)パルス位相制御回路
 この回路はサイリスタ点弧用パルスの位相制御角を制御する回路である。この回路の代表的なものとしてユニジャンクショントランジスタ(UJT)を使用した回路例を図2.16に示す。
 
図2.16 UJTを使用したパルス位相制御回路
D2: ダイオード
Q: トランジスタ
UJT: ユニジャンクショントランジスタ
C2: コンデンサ
Z2: ツェナーダイオード
R: 抵抗器
 
 UJTはベース端子B1,B2間電圧のほぼ半分の電圧をエミツタ端子Eに与えると,エミツタとベースB1間は急に導通状態となる特性がある。図2.16の回路ではベースB1,B2間に20Vの電圧を与えておき,コンデンサC2を充電していくと,充電電圧VC2が約10Vに達した時点でコンデンサC2の電荷はUJTのエミツタを通じて放電しパルス出力を得ることができる。したがって,コンデンサC2の充電電流を誤差信号によって調整すれば,パルスの位相制御角αを適当な大きさに制御することが可能である。このパルスはサイリスタを直接制御するか,又は増幅して使用される。
 この回路では,サイリスタの電源と同位相の電源からツェナーダイオードZ2を用いて,台形波状の電源を作り,サイリスタの電源と半サイクル毎に同期をとってパルス位相の制御を行っている。電源とパルス,出力の位相関係を図2.18に示す。
(e)サイリスタ出力回路
 サイリスタ(ここではSCRを指す。)はアノード(陽極),カソード(陰極)端子間に電圧を与えておき,ゲートからカソードに向って電流を流すと導通状態となり(点弧し)アノード,カソード間の電圧を零にすると非導通状態となる素子で,きわめて小さなパルス入力で大きな出力電力を制御できる素子である。
 サイリスタ出力回路は,このサイリスタを使用し,図2.17に示す如くパルスの位相制御角αを制御して出力を制御する回路である。
 
図2.17 サイリスタのゲートパルスと出力電圧波形
A: アノード端子
K: カソード端子
G: ケート端子
 
図2.18 パルス位相制御回路のパルス波形と出力電圧波形
 
(f)ダンピング回路
 この回路は電圧の乱調を防止する回路で,通常時間的変化量を取出すための微分回路を用いる。







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