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国際海事情報シリーズ77 米国における次世代水上交通システム構築に関する調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


2-3 MTSの地域特性
 MTSの構築は、水上輸送の地域特性に合致したものでなければならない。本節では、米国における国際、国内貨物輸送の地域特性及び海事産業の代表として造船業及び船舶修理業の地域特性を概観する。表2-3は、2000年における国際貨物の米国各地域の輸出入先をコンテナ船、タンカー、ドライバルク船及びその他の船種に分けて示している。
 また、米国では、その経済的結びつきから以下の通り地域分けを行うのが通常である。
○Far West地域(カリフォルニア、オレゴン、ワシントン)
○Southeast地域(アラバマ、フロリダ、ジョージア、ルイジアナ、ミシシッピー、ノースカロライナ、サウスカロライナ、バージニア)
○Middle Atlantic地域(デラウエア、ワシントンDC、メリーランド、ニュージャージー、ニューヨーク、ペンシルバニア)
○Southwest地域(アリゾナ、ニューメキシコ、オクラホマ、テキサス)、
○Puerto Rico地域(プエルトリコ、バージン諸島)
○Northeast地域(マサチューセッツ、ニューハンプシャー、ロードアイランド、コネチカット、メイン)
○Plains地域(アイオワ、ネブラスカ、ノースダコダ、サウスダコダ)
○五大湖地域、アラスカ地域、ハワイ地域
 
(国際海上貨物輸送)
 コンテナ貨物は、Far West諸港と極東アジア、東南アジア間の輸送が多く、全体1億3,230万トンの40%、5,640万トンに及んでいる。大西洋岸(Middle Atlantic、Southeast、Northeast)とヨーロッパ/地中海間のコンテナ貨物は、全体の17%に留まっており、西岸に比べれば少ない。
 
 タンカーの輸送で一番多いのはSouthwest地域とラテン・アメリカ間の輸送であり、全体5億3,700万トンの20%、1億770万トンとなっている。隣接するSoutheastも含めると32%の1億7,140万トンに達するが、これらの大部分は石油の輸入である。米国はサウジアラビア、ロシアに次いで世界第3位の石油生産国であるが、同時に世界第1位の石油消費国でもある。2002年1月から10月までの10ヶ月間に消費された石油の57.7%は輸入石油であり、輸入先はイラクを含む10ヶ国で80%を占める。国別ではカナダ(16.9%)、サウジアラビア(13.5%)、メキシコ(13.3%)、ベネズエラ(12.6%)の順となっているが、近年メキシコやベネズエラ等のラテン・アメリカ諸国からの輸入が多くなっている。これら近距離のラテン・アメリカ諸国から輸入される原油は中型タンカーで運ばれ、テキサスやルイジアナ沿岸の港で陸揚げされる。サウジアラビア等遠距離から大型タンカーで運ばれてくる原油は、ルイジアナ沖洋上揚貨基地等で陸揚げされ、パイプラインで精油所に運ばれるが、米国ではこの大型タンカーに対応できる港湾施設の不足が石油輸入における大きな障害となっている。
 ドライバルク貨物はSoutheast地域が中心であり、この地域とヨーロッパ/地中海間、極東/東南アジア間及びラテン・アメリカ間の輸送が均衡している。均衡3地域で合計1億4,520万トンとなり、全量3億5,590万トンの41%を占める。Southeast地域は、ミシシッピー川経由で運ばれる穀物のアジア、ヨーロッパへの輸出窓口であるルイジアナ港を抱えており、またテキサスを含めてプロジェクト用大型貨物その他のブレーク・バルク貨物の輸出入地域としても知られている。最近Southeast地域とラテン・アメリカ諸国間の貨物輸送の伸びが注目され、各港湾はラテン・アメリカ海上貿易用ターミナルを増強している。さらにSoutheast諸州とウエスト・バージニア、ケンタッキー、テネシー、アーカンソー、プエルトリコを加えた諸州は同盟を結成し、2020年までに2000年の3倍になると予想されるラテン・アメリカ諸国と米国との間の貿易に対処するMTSの在り方を研究している。一方、五大湖輸送においては、ドライバルク貨物輸送の比率が高く、地域の全量4,440万トンの91%、4,030万トンを占めている。
 
(国内水上貨物輸送)
 表2-7は、2000年における国内タンカー、国内ドライカーゴ船、国内タンク・バージ及び国内ドライカーゴ・バージの輸送地域特性を示した表である。国内タンカーの場合、その37%はアラスカからの原油の積み出しである。アラスカ原油の積み出しの97%は自航船に依存している。アラスカ原油は大部分西岸の精油所に運ばれるが、一部ハワイにも送られている。内航のドライカーゴ船輸送についても五大湖の占める割合は高く、全量2億7,580万トンの30%に及ぶ8,250万トンが五大湖水運で占められている。なお、表2-7中のRocky Mtは、コロラド、アイダホ、モンタナ、ユタ、ワイオミングの諸州を示している。
 国内タンク・バージ輸送では、Southeast地域が全体の36%を占めている。2-2節に記載したバージ輸送の経済効果に関するUSCGの要約中に出てくるNortheast(ニューイングランド地方)地域の家庭暖房用ガソリンの大部分は、Middle Atlantic地域の製油所で精製されたものがバージで運ばれていることが本表からみてとれる。
 国内ドライカーゴ・バージ輸送は、Southeast地域が全体の47%と半分近くを占めている。五大湖からSoutheast地域迄バージで運ばれてくる量も全体の15%と多い。
 なお、国内のコンテナ水上輸送については、例えばバージ輸送に関してはMARADがコンテナ・オン・バージとして推進しているが、自航船であれバージであれ未だ少なく、纏まった統計として発表されていない。
 
(各地域の水上輸送の特性)
 各地域の水上輸送の特性は以下のとおり。
(1)西海岸
 国際貨物では、コンテナ貨物が圧倒的に多く、国内貨物ではアラスカ原油のタンカー受入れターミナルが多い。精製された石油は、タンカー或いはバージにより主として西海岸諸港に輸送される。西岸には沿岸内水路は無く、沿岸バージはより厳しい海象条件に耐え得るものが必要とされる。
 
(2)メキシコ湾沿岸
 ブレーク・バルク貨物輸送の中心であるとともに石油輸入の中心でもある。中型タンカーでラテン・アメリカ諸国から運ばれてくる原油は、接岸後揚貨パイプラインで、また大型タンカーで中東から運ばれてく原油は、ルイジアナ洋上揚荷基地または特定貨油分貨基地で揚荷され、パイプラインでメキシコ湾沿岸或いは東岸の精油所に運ばれ、精製される。精製された石油製品は、更にパイプラインまたはバージで消費地に輸送される。メキシコ湾沿岸は、メキシコ湾・オフショア石油の為のサプライ船、GIWWで使用される曳船、バージ等の為の民間造船業も含め、商業海事活動が米国で最も盛んな地域である。
 また、Southeast地域やテキサス等メキシコ湾沿岸諸州は、今後急速な伸びが予想される対ラテン・アメリカ貿易に対処する必要に迫られている。
 
(3)東岸
 東岸諸港もコンテナ貨物の増加が問題となっている。東岸諸港は、大西洋経由のヨーロッパ・地中海貨物が多いが、南部に行くに従いラテン・アメリカ、カリブ諸国貨物が多くなっている。最近の傾向としてパナマ運河経由で運ばれてくるアジアからの貨物が急増しており、極めて短期間でヨーロッパからの貨物を追い越すものと予想されている。さらに東岸地帯はパイプラインの発達した地域であり、貨物のフィーダー輸送を行うジョーンズ・アクト船やバージは、パイプラインや外航船との激しい競争に晒されている。
 
(4)五大湖
 製鉄関係のバルク・カーゴが基本貨物であるが、近年その量は減少し、ビジネスは一般的に停滞している。五大湖水運の停滞は外国鉄鋼製品のダンピング輸入に原因があると言われ、その後鉄鋼製品輸入に高関税がかけられたが、五大湖の鉄鋼産業関連のバルク輸送は増えていない。五大湖水運は鉄鋼業依存度を減らすことが急務となっている。
 
(造船業及び船舶修理業の地域特性)
 米国には合計250の造船所及び船舶修理場が存在するが、業界収入の85%は上位25社が得ている。特にゼネラルエレクトリック社及びノースロップグラマン社傘下の6造船所(バス、エレクトリック・ボート、ニューポートニューズ、インガルス、アボンデール、NASSCO)が、業界総収入の2/3を殆ど艦艇の新・改造で得ているという構造となっている。従って、これ迄述べてきた商業貨物輸送の地域特性が、造船業の地域特性に直接的に結びつく度合いは少ない。
 
 図2-2は、1998年における艦艇/商船別、地域別造船業及び船舶修理業の収入を示した図である。全体的にもメキシコ湾沿岸が一番多く、艦艇と商船の割合がほぼ同等であり、米国で一番商船建造の多い地域となっている。北部大西洋岸、南部大西洋岸は、ともにメキシコ湾沿岸の70%程度であるが、何れも殆ど艦艇の新造・修繕である。
 メキシコ湾沿岸は、比較的地域のMTS構築との結びつきが強い。メキシコ湾沿岸は、漁業、オフショア石油開発、内陸水路支援の為の造船業を必要としており、現実にそれに応える形となっている。このメキシコ湾沿岸と南北大西洋岸で、業界全収入の83%を占めている。西岸はアジアとの海上貿易は盛んであるが、これらの外航船が米国の造船所で改造や修繕を実施することはなく、収入は業界全体の13%に留まっている
 
表2-7 米国の国内水上貨物輸送の地域特性(2000年)
(単位;1,000メトリックトン)
国内タンカー
U.S. Domestic Tanker Trade Flow by Region, 2000 (Thousand metric tons)
KEY: - = not available.

SOURCE: U.S. Army Corps of Engineers, Waterborne Commerce Statistics Center, Waterbome Commerce of the United States, calendar year 2000, computer file.
 
国内ドライカーゴ
U.S. Domestic Dry-Cargo Vessel Trade Flow by Region, 2000
aLess than 500 metric tons.
KEY: - = not available.
SOURCE: U.S. Army Corps of Engineers, Waterborne Commerce Statistics Center, Waterborne Commerce of the United States, calendar year 2000, computer file.
 
表2-7 米国の国内水上貨物輸送の地域特性(2000年)(続き)
(単位;1,000メトリックトン)
国内タンクバージ
U.S. Domestic Tank-Barge (liquid) Trade Flow by Region, 2000
KEY: - = not available.
SOURCE: U.S. Army Corps of Engineers, Waterborne Commerce Statistics Center, Waterborne Commerce of the United States, calendar year 2000, computer file.
 
国内ドライカーゴバージ
U.S. Domestic Dry-Cargo Barge Trade Flow by Region, 2000
aLess than 500 metric tons.

KEY: - = not available.

SOURCE: U.S. Army Corps of Engineers, Waterborne Commerce Statistics Center, Waterborne Commerce of the United States, calendar year 2000, computer file.
 
資料提供:USACE
 
図2-2 造船業及び船舶修繕業の地域別収入(1998年)
(単位;1,000ドル)
資料提供:DOC







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