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国際海事情報シリーズ77 米国における次世代水上交通システム構築に関する調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


3-3 MTS2020像
 3-1節でMTS2020のビジョンとその達成方法を紹介したが、MTS報告書には構成要素についての具体像は何一つ示されていない。一方、港湾のように新ターミナルの立案から設計、建設迄長期間を要する構成要素は、早々と自港の2020像を作成し、パンフレット化してポートセールスに努める等対応は様々である。
 MTS報告書は、各輸送モードの結合部が2020年の貨物・乗客の増大に対し最大の弱点であり、各モードをコスト効果の高い方法で結ぶことが必要であると指摘している。例えばLA/LB港は、MTS報告書発表の時点では1日当たり20,000台のトラックと30編成の貨物列車を捌いていたが、2020年には同50,000台のトラックと100編成の貨物列車が必要になると予想されている。一方、MTS報告書は、現在の港湾アクセス水路と投錨地は2020年の貨物量を捌くには全く不完全であると指摘している。MTS2020ビジョンは、現時点で世界一流とは言えない米国のMTSインフラを、技術の最も進んだ、安全で、セキュリティが高く、高効率で、有効且つ世界的に競争力ある、ダイナミックで環境に優しい世界最高のインフラに作り替え、2020年の貨物・乗客の増大に対処しようとするものである。そこで、本節では、LA/LB港、オークランド港及びポートランド港の将来計画を通してMTS2020像をみてみる。
 
(LA/LB港の将来計画)
 カリフォルニア州運輸及びロジスティックス局は、2020年迄の貨物増大量に対処するプロジェクトと助成金を模索している。カリフォルニア州も、各輸送モードの接合部分の輸送力を強化することを強調している。カリフォルニア州MTS諮問会議は、2003年2月に州内のMTSインフラ及び資金調達について報告書を出している。この報告書では、ISTEA及びTEA-21の資金がMTSの貨物輸送関連に投資されておらず、かろうじて通勤用を主とするフェリー・ボート及びターミナルに若干投資しているのみである点を問題視している。
 カリフォルニア州の諸港は、米国海上貿易の40%のシェアを持ち、特にロサンゼルス港、ロングビーチ港、オークランド港は表2-8に示す通り、2001年の港別コンテナ取扱量の上位1、2、5位を占めている。
 LA/LB港のコンテナ取扱量は、2001年には960万TEUであったが、2020年には3,600万TEUに増加するものと推測されている(参考資料13)。2-4節で述べたように、CSCLは同社の2020年計画の環として、8,100TEUの超メガ・シップ5隻の建造を韓国の三星重工に発注した。これらの船舶は、2004年末から2005年始めにかけて引き渡され、香港、上海その他のアジアのハブ港とロサンゼルス港間に就航の予定である。この超メガ・シップ用として、CSCLは44.5haの専用ターミナルをロサンゼルス港に建設中である。しかし建設に先立ち法律で定められた環境評価を実施しなかった為、現在4基の超メガ・シップ用コンテナ・クレーンが据え付けられた時点で連邦裁判所から建設のストップを命ぜられている。港湾建設コンサルタントDMJM+Harrisは、2003年前半LA/LB港の2020年鉄道マスター・プランを完成した。このマスター・プランは、現状非能率なコンテナの鉄道への積み替えを効率化し、生産性を向上させることを目的としている。
 
(オークランド港の将来計画)
 オークランド港のコンテナ取扱高は、2001年の160万TEUから、2020年には480万TEU迄増加するものと予想されている。この貨物に対応するため、オークランド港では幾つかの公的及び民間機関が連携し、カリフォルニア地域間インターモーダル・システム(CIRIS)の実現性を検討中である。CIRISは、サンフランシスコ湾(オークランド港)と中央高原部(ストックトン)間にコンテナ専用シャトル鉄道を開設することを提案している。このシャトル鉄道は、中央高原南部のフレスノや北部のサクラメント迄の延長が可能である。但し、鉄道の設置は民間投資により行われるのが通常であるので、SAFETEAの枠組みの中では実現しないであろうというのが識者の見方である。カリフォルニアMTS諮問会議では、CIRISは陸上混雑を減らす目玉事業であり、民間資金或いはSAFETEA以外の公的資金を見出して実現したいと意欲的である。CIRISの設備投資及びオペレーション費用は、$4,800万と見積られている。
 カリフォルニア州で必要とされるMTSプロジェクト費用は、北部カリフォルニア$69億、南部カリフォルニア$165億と言われている。このうちオークランド港関係のインフラ費用として見積られているのは$8億9,800万である。オークランド港では、コンテナ・バージによる内陸水路及びサンフランシスコ湾内諸港へのフィーダー輸送も検討しているが、現時点ではコスト的に引き合わないと考えられている。
 
(ポートランド港)
 オレゴン州のポートランド港は、2020像をパンフレットにまとめて配布している。表3-2は2000年時点での船種と訪船数別の米国上位25港を示したものである。ポートランド港は9番目のコロンビア川諸港の中に纏められているが、コロンビア川をバージで運ばれてきた貨物はポートランド港からアジア諸国に輸出され、輸出量が多くなっている為、今後ポートランド港の重要度は益々高くなる。
 前述のとおりコロンビア/スネーク川はミシシッピー川水系に次ぐ重要な河川水路であり、小麦の輸出は米国全輸出量の37%に達し、米国第1位を誇っている。コロンビア川におけるコンテナのバージ輸送は1983年に開始され、現在年間25,000−30,000TEUのコンテナが運ばれている。表3-3は2020年時点のポートランド港の貨物量予測である。コンテナについては、2000−2020間の輸出コンテナの伸びを年率0.1〜4.4%増、輸入コンテナの伸びを同0.7〜4.2%増と見積っている。同港のMTS2020構築計画に際しては、この表3-3の2020最大予測値が使用された。また、バルク・グレーンの取扱量については、2020年に輸出される穀物は下限で560万トン、上限で1,000万トンと予測されている。これは年率0.1−2.9%の伸びに相当する。アジアに穀物を輸出する場合、ミシシッピー水系を下ってニューオリンズからパナマ運河経由で輸出するよりも、コロンビア/スネーク水系のポートランド港経由で輸出する方が低コストであることが、この取扱量の伸びの背景にある。このポートランド港の取扱い貨物の増減は、コロンビア/スネーク川の貨物の増減に大きく左右されるが、この水系は現在一つ大きな問題を抱えている。それはコロンビア川に合流する直前の4つのスネーク川下流ダムを廃止し、鮭を呼び戻そうとする環境団体の動きである。これらのダムが廃止されると、多くの貨物がポートランド港から西岸の他の港に移っていくものと見られているが、2008年には最終結論が出される予定である。
 
 ポートランド港は、表3-3の貨物の増加に対し、基本的に図3-1に示す現存する4つのターミナル(T2、T4、T5、T6)のうちの3つについて、インターモーダル輸送能力増強等により対処しようとしている。具体的には、T4について、トヨタ埠頭の再開発を実施するほかバルク貨物能力強化の為2,133mのループ鉄道引込線を増設する。図3-1下段に示すT5について、図右側のバルク倉庫を2倍に強化し周囲にループ鉄道を増設するほか、左側のコロンビア川穀物埠頭にも鉄道引込線を入れる。T6についても新規埠頭の完成のほか鉄道、トラックの引込線を強化する。さらにコロンビア川水路改善プロジェクトに組み込んでT6コンテナ埠頭の水深を12.1mから13.0mまで浚渫するほか、ポートランドを通過する国道5号線(I-5)への取り付け道路を増設する。
 
表3-2 船種別訪船数上位25港(2000年)
 
Top 25 U.S. Ports by Cargo Vessel Type and Calls, 2000a
(Capacity in thousands of deadweight tons)
aOceangoing self-propelled vessels 1,000 gross tons and above.
bIncludes chemical and gas.
cIncludes other Bay area ports.
dIncludes all Hampton Roads area ports (Norfolk, Newport News, etc.)
eIncludes all Columbia River ports (Vancouver, Portland, Astoria, etc.)

SOURCE: Lloyd's Maritime Information Services, Vessel Movements, computer file London, January 2001.
 
資料提供:ロイド
 
表3-3 ポートランド港貨物量予測(2000−2020)
Facility Volumes 10 - Year Capital Plan, 20 - Year Forecast
  2000 Actual Volumes 2010 Capital Plan 2020 High Forecast
Containers (TEUs) 290,000 Allows for Flexible Growth 677,000
Breakbulk (MT) 585,000 Existing Capacity Allows for Growth 880,000
Automobiles (Units) 385,000 Accommodates One New Customer 503,000
Bulk Grains (MT) 2,919,000 Meets Growth Potential 10,000,000
Bulk Minerals (MT) 3,827,000 Facility Modernization and Storage Capacity Upgrades 5,720,000
資料提供:ポートランド港湾局
 
図3-1 ポートランド港ターミナル
 
ターミナル配置 T2−T6
(拡大画面:139KB)
 
2020改造計画例 T5
資料提供:ポートランド港湾局







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