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国際海事情報シリーズ77 米国における次世代水上交通システム構築に関する調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


4. MTS構成要素の改善プロジェクト
4-1 港湾ターミナルと船舶とのインターフェース
 米国には300を超す港湾と1,900に及ぶターミナルが存在するが、それらを利用する船舶が大きくなるにつれ、埠頭の長さや係留設備の配置、荷役設備の能力等の問題が各所で指摘されている。特に液体貨物を運ぶタンカーやバージの場合、ターミナル設備の不備は貨油の洩れに繋がる可能性もある。米国の港湾ターミナルの所有・運用形態は複雑であり、ターミナルの改善は困難であるが、国際コンテナを取扱う諸港では貨物量の増大に対処して多くの改善が進められている。本節では、西岸及び東岸の代表的コンテナ港の改善状況を概観し、ターミナルの配置、コンテナ取扱い機器、荷役ITシステム等がMTSの全体的効率向上に及ぼす影響について検討する。
 
 コンテナ・ターミナルの建設や改造には莫大な投資を必要とするが、貨物の量、顧客の要求その他将来の状況を事前に完全に把握して、建設後は手を加えないという様なことは不可能であるため、最初からなるべく広いコンテナ・ヤードを確保し、将来の変化にフレキシブル且つ最小のコストで対応出来るよう計画することが原則となっている。広いコンテナ・ヤードは、ヤード内のコンテナ移動用機器が変更された場合にもフレキシブルに対応することが可能である。しかしながら、広すぎるコンテナ・ヤードでは、時としてコンテナが遠くに保管されることになり効率が落ちるという問題がある。
 
(ワシントン州タコマ港)
 西海岸で急激にコンテナ取扱量が増加している港の一つにタコマ港がある。タコマ港は2002年に147万TEUを取扱い、初めて隣接するシアトル港を抜いた。同港はアラスカとのコンテナ貨物が多く、2020年におけるコンテナ取扱量を350万TEUと見込んで能力向上を進めている(参考資料23)。
 同港は2000年に主要港湾チャンネルであるブレア水路(長さ2.65マイル)を掘削し、水深を14.6mから15.5m迄増深し、メガ・シップ就航に備えた。また、マースク・シーランドとCSXラィンが使用するAPMターミナルは183m延長されて670mとなり、現代海運が使用しているワシントン・ユナイテッド・ターミナルは2001年に24.2haから32.4ha迄拡張され、埠頭に接続する鉄道は5軌道で総延長5.2km、2段積コンテナ貨車52台への同時積込みが可能である。
 しかし、タコマ港で最も重要なのは、ピアス郡ターミナルの建設である。このターミナルは2004年に供用開始が予定されているが、LA/LB港以北では西岸最大のメガ・ターミナルとなる。ターミナルの面積は96haであり、エバグリーンにより運営されるが、初年度から120万TEUを処理するよう計画されている。また、西岸の港では唯一、ストラドル・キャリアを使用してコンテナの移動、積み重ね、貨車への積み込みを行ない、増大する貨物量に対処しようとしている。
 また、このターミナルは西岸で初めてIT及びデータ収集システムを使うターミナルとなる。このITシステムは、2003年のILWUとPMAの新しい労働協約により使用が可能となった。さらにこのターミナルには17.8haのインターモーダル鉄道ターミナルが入っている。
 
(ワシントン州シアトル港)
 シアトル港では2002年にメガ・ターミナルT-18の拡張工事を完成し、全体で年間200−250万TEUの処理が可能となっている。このターミナルは、民間と公的機関の連携による資金調達により完成されたものである。拡張後のT-18は埠頭が5、コンテナ・クレーン5基、40ftコンテナ25,000個用コンテナ・ヤード、2段積みコンテナ2列車に同時に積み込むインターモーダル・ヤードを備えている。本拡張プロジェクトにより、T-18の広さは44.5haから81haへと拡張され、タコマ港ピアス郡ターミナルと並んで北部太平洋沿岸の2大重要ターミナルとなっている。
 タコマ港とシアトル港は地理的に近いこともあり、そのインターモーダル枝線ファースト・コリドー(FAST)は両港を包含して計画され、既に一部施行されている。ターミナルT-18では、ターミナルを最も効率良く、生産性の高いものとする為にタイド・ワークス・テクノロジー社の開発した船舶からターミナルへのコンテナの動きを最適化するアプリケーションとコンピューター・システムを採用している。タイド・ワークス社(http://www.tideworks.com/eng/index.html)は船舶用ターミナル・オペレーション・ソフトウエアのフル・メニューを開発している若い会社であるが、この分野では大手となっている。
 
(バージニア州ハンプトンローズ港)
 東岸ではハンプトンローズ港とNY/NJ港のメガ・ターミナル計画が注目を集めている。ハンプトンローズ港のコンテナ関連施設は、2つのコンテナ・ターミナル(ノーフォーク、ポーツマス)、バージニア内陸港及び上記2ターミナルと内陸港を結ぶインターモーダル鉄道からなっている。ノーフォーク・ターミナルは同港で最も大きなターミナルであり、埠頭が1,310m延長され、ターミナルの処理能力は以前の2倍となった。
 同ターミナルは世界最大級のスエズマックス・クラス(高さ66.7m、横方向22列に対応)のコンテナ・クレーンを装備しており、1時間にコンテナ40個を吊ることができる。また、ブレーク・バルク貨物を取扱うニューポートニューズ・ターミナルがあり、鋼材やプロジェクト貨物が処理されている。
 更にハンプトンローズ港を管理するバージニア港湾局は、コニー・アイランド・メガ・コンテナ・ターミナルを計画中である。このターミナルは243haの広さを有し、埠頭長さ2,560m、15基のスエズマックス・クラス・コンテナ・クレーンを有し、ターミナルの中にインターモーダル鉄道路線が引き込むことにより年間250万TEUの処理が可能であり、搭載能力10,000−2,000TEUのスエズマックス・クラスのメガ・コンテナ船の接岸が可能となる。
 
(NY/NJ港)
 NY/NJ港は、2003年上半期にアジア貨物が急増(2002年同期比で、極東からの輸入が38%、東南アジアからの輸入が31%増)し、ロジスティックス企業も大消費地である米国東部にディストリビューションセンターの整備を進めていることから、その処理能力の向上が求められている。
 しかしながら、地形的に拡張が難しく、スタッテン島への拡張が唯一の可能案であるが、その他のターミナルは既存設備の処理能力の向上に頼らざるを得ない状況である。NY/NJ港の全てのターミナルは、ターミナル内に鉄道設備を新設するか、延長するかの改造工事を実施している。
 2003年3月、NY/NJ港湾局はスタッテン島にあるホウランドフック・ターミナル内に$7,250万の費用でインターモーダル鉄道ターミナルを新設する計画を発表した。このターミナル建設用地は、プロクター・ギャンブル社が所有していた15.4haの土地を2000年12月に港湾局が買収したものである。本ターミナルに関連し、NY/NJ港湾局はインターモーダル鉄道に関し、更に投資を実施しようとしている。具体的には、廃線となっているスタッテン鉄道を再生してこのターミナルの貨物をニュージャージー州内の全国貨物鉄道網に接続する為の投資であり、同鉄道をニューヨーク市経済開発公社から$3,200万で買収するとともに、再生したスタッテン鉄道をニュージャージー州の全国鉄道網、CSXとNorfolk Southern鉄道に接続するための新線建設に対する$5,700万の投資である。
 
 NY/NJ港湾局は港湾全体のターミナルの拡張、港湾アプローチ・チャンネルの増深、インターモーダル施設に総額$15億を投資中であるが、その内$3億5,000万はホウランドフック・ターミナル向けである。他の大きなプロジェクトはニュージャージーのマヘア・ターミナルに対するインターモーダル鉄道ヤードの移設・拡張である。改造後マヘア・ターミナルの鉄道ターミナルは、隣接するマースク・シーランドの関連企業APMが運営するターミナルの貨物と共有され、年間100万TEUの処理が可能となる。図4-1は改造後のマヘア・ターミナルの概要である。マヘア・ターミナルのマーケティング資料によれば、同ターミナルのコンテナ取扱い能力は改造後2倍となり、北米最大のターミナルとなる。埠頭の総延長は3,000m、水深13.7−15.2m、全自動ストラドル・キャリアによるコンテナ移動、コンテナ・ターミナル・マネージメント・システム(e-CTMS)、ペーパーレス・ゲート・システム、隣接空コンテナ置き場等を備えている。鉄道ヤードは軌道総延長13.7km、オーバーヘッド・クレーンを使ってコンテナを積込む。
 NY/NJ港のP&Oネドロイド・ターミナルでもストラドル・キャリヤ・オペレーションへの変更、クレーン設備の最新化、インターモーダル鉄道設備の拡張、新ゲートシステムの採用、その他のターミナル・マネージメント・システム等の導入により、年間100万TEU、コンテナ・ヤードの単位面積当りの処理能力14,800TEU/haの実現をめざし、2003年中に第2期工事を終わっている。なお、コンテナ・ヤードの単位面積当りの処理能力が、西岸諸港の平均で13,760TEU/haという状況を鑑みると、米国東海岸港湾の効率の低さが理解される。
 
図4-1 改造後のNY/NJ港MAHERターミナル
資料提供:MAHER
 
4-2 インターモーダル枝線
 本節では、インターモーダル枝線の改善プロジェクトの代表として、シアトル/タコマ地区で進められているFASTコリドー・プロジェクトと、LA/LB港のインターモーダル枝線としてその成果が喧伝されているアラメダ・コリドーについて紹介する。
 
(FASTコリドー・プロジェクト)
 シアトルとタコマはピュージェットサウンドに面し、相互距離40マイル、国道5号線(I-5)で結ばれシアトル/タコマ空港を共有する兄弟都市である。シアトル港とタコマ港の貨物が急増しているのは前節で述べた通りである。FAST・コリドーの正式名称は、シアトル・タコマ地区貨物輸送戦略コリドー(Freight Action Strategy for the Seattle Tacoma Corridor)である。
 FASTコリドー・プロジェクト(http://www.wsdot.wa.gov/mobility/fast/)が実現されれば、タコマ港とシアトル北25マイルのエバレット港間の鉄道と道路の数十の平面交差部は全て跨線橋或いは地下道となる。FASTコリドーの資金は、連邦、州、地域政府及びこの地域に乗り入れている2大鉄道会社の連合体による共同出資に依っている。2002年現在$4億の費用で第1期工事が進行中である。資金の集まり具合により完成には6−8年の歳月が必要とされており、第2期工事として$1億6,000万が予定されている。FASTコリドー・プロジェクトはシアトル、タコマ、エバレット3港の貨物輸送の競争力を高める為に広い地域の一般道路とインターモーダル枝線道路を改良するもので一般車両の受ける恩恵も大きい。
 
(アラメダ・コリドー)
 アラメダ・コリドーは、ロサンゼルスのダウンタウン近くのインターモーダル鉄道ターミナルとLA/LB港を結ぶ距離20マイルの貨車専用鉄道であり、2002年に営業が開始された本格的インターモーダル枝線である。このコリドーを運営しているのは、アラメダ・コリドー輸送公社(ACTA http://www.acta.org)である。
 
 アラメダ・コリドーにより、この区間の90マイルの鉄道が統合され、また、都市部分を通過する約10マイルが巾15.5m、深さ10.1mの切通し式の半地下構造により200に及ぶ平面交差が廃止された。この結果、この区間の貨物列車の運航速度は、以前の時速10−20マイルから同40マイルにアップした。アラメダ・コリドーは前述のように公私にわたる協力機関から集められた$24億の資金により、予算もスケジュールも予定通り完成されたが、その裏には長い歴史がある。
 アラメダ・コリドーの建設の話が持ち上がったのは20年も前の1983年である。アジア及びラテン・アメリカに近い両港の貨物量が急速に伸びた為、両港関係者は数年かかってアラメダ・コリドー輸送公社(ACTA)を作り上げた。アラメダ・コリドー建設資金$24億の拠出元は両港が$4億、債券発行$11億6,000万、DOT$4億、ロサンゼルス郡メトロポリタン運輸公社$3億4,700万、その他連邦、州基金等である。1994年12月22日関係者全員がコリドーの予算を最終的に承認し、鉄道会社がコリドー完成の暁には必ず利用するという趣旨の覚え書(MOU)に署名した。このMOUでは3つの鉄道会社(現在はBNSFとUPの2社)が40ftコンテナ1個当たり$30、20ftコンテナ1個当たり$15の使用料を払うことで合意している。資金集めがスタートしたのは1995年に入ってからでこの時点でコリドーは現実のものとなった。







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