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国際海事情報シリーズ77 米国における次世代水上交通システム構築に関する調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


4-3 ダムと閘門
 図4-2はダムと閘門を理解する為の図である。ダムは河川或いは沿岸内水路の水流をせき止めて船舶航行、洪水調節、水供給、発電に利用するせき構造物である。閘門はダムの一部に作られた船舶を上下させる構造物である。付録2(5)表は、2001年USACEが所有或いは管理している水路施設の地域分布を示している。この表では水深3.7m以上の水路を深(Deep)水路と呼んでいる。同表によれば米国全体でUSACE管理の閘門は230個所あり、閘門・閘室の数は275である。つまり場所によっては1個所の閘門に複数の閘門.閘室があることになる。2002年275の閘門・閘室の53%、145閘室は建設後50年を経過しており、現在稼働中の閘門で最古のものは図4-3に示す1839年に建設されたオハイオ川の支流ケンタッキー川の閘門1及び2である。川幅が広く、曲がりの少ない川は大型バージ船団の航行が可能であるが、川幅が狭く曲がりくねった川は小型バージ船団となる。ケンタッキー川は曲がりくねった川の代表例であり、図4-3で下側に位置する町Frankfortから閘門4、3、2、1を通過して北方に流れ、Carrolltonでオハイオ川に合流する。Frankfort/Carrollton間の82マイルに4つの閘門が存在し、各々3−4.3mの高低差となっている
 
 USACEが管理する275の閘室に依る全水面上昇は1,980mであり、閘室1つ当たり7.2mに相当する。オレゴン州にあるジョンディ・閘門は33.5mという全米1の上昇能力を有する(この閘門の高さは、例えば国際航路のパナマ運河(その最高部にあるガツン湖の平均水面高さが海抜25.5m)の閘門と比較しても大きい)。また、貨物輸送で最も忙しい閘門はイリノイ州のオハイオ川閘門No.52で、2001年9,600万トンの貨物を通過させている。一方、レクリエーション用ボートの通過数という点で言えば、ワシントン州シアトルのヒルマンMチテンデン閘門が2001年に延べ48,646隻通過させており、次がシカゴ閘門の35,961隻となっている。
 
(閘門の大きさ)
 閘門は通常、閘室の長さにより3種類に分けられる。15%の閘門・閘室は閘室の長さが305−366m、60%は同183−305m、25%は同183m未満である。閘門の巾は大部分が33.5m以下に抑えられている。この366mの閘門は、17隻のバージと曳船を同時に上下させることが出来るが、183mの長さのものは、バージ8隻と曳船の上下が限度である。閘門・閘室の大きさとバージ船団の大きさにより、単位時間当たりの貨物の通過量が制約を受けるが、長さ183m未満の閘室を有する小型閘門の多くは、1930年代或いはそれ以前に建設されたものであり、代替或いは抜本的リハビリ工事が必要となっている。特に現在のバージ船団は12隻以上が通常となっているため、小型閘門を通過する際は例えば船団を半分ずつ通過させ通過後再編成することになり、MTSとしても時間とコストの損失が大きい。
 
(閘門の近代化工事)
 1960年、USACEはオハイオ川の閘門近代化を開始し、バージ船団を一度に通過させることが出来る366m閘室を増設した。この閘門近代化工事は現在も続けられている。オハイオ川とミシシッピー川の合流点に新しいダムが建設され、Olmstedに一対の366m閘室が作られ、更にLouisville近くのMcAlpine閘門に第2の366m閘室が新設された。また、テネシー川のケンタッキー閘門やニューオリンズのGIWWにある内港閘門にも近代的な366m閘門が建設された。さらに類似の工事がペンシルバニア、ウエストバージニア、アーカンソーでも進行中である。これに加えて幾つかの閘門のリハビリ工事も行われており、これら全てを合わせると内陸水路閘門で現在$35億が投資されており、今後10年間に続々と完成する。図4-4は現在366m閘室の新設やリハビリ工事が行われている閘門を示した図であるが、閘門の大型化は、オハイオ川、下部ミシシッピー川で7個所、リハビリテーションは上部ミシシッピー川を中心に5個所となっている。
 
(MTS効率化における障害)
 内陸水路に対する投資は、毎年$1億7,000万程度で推移しているが、燃料税からの収入は$2億5,000万あり、更に1999年末時点で$3億8,500万の資金がIWTFに残っている。バージ業者はこれら余剰の資金を水路の近代化に使うべき旨主張しているが、問題は簡単ではない。閘門の近代化を真に必要としているのはミネアポリスとセントルイス間669マイルのいわゆる上部ミシシッピー川と言われる地区の小型閘門群である。これらの閘門は建設後60−70年を経過しており、近代化が望まれている一方、これらの閘門を全て366mとする費用は総額$10億と見積られており、加えて環境団体の圧力もあることから、その改造は連邦政府も思うようにいかない状況である。なお、上部ミッシシッピー川閘門を全てについてリハビリ工事をしようとすれば、それだけで$3億3,000万に達すると言われている。
 
 一方、上部ミシシッピー川の小型閘門群の非効率さ故に船団が遅れることによる経済的損失は、少し古いデータになるが1996年で$9,980万と見積られており、この区間の閘門の近代化を急がないと米国の穀物の輸出競争力が益々落ちることとなる。米国の穀物の生産コストは南米諸国に比べて必ずしも安くはなく、将来の米州自由貿易地域(FTAA)の発足を控え、上部ミシシッピー川の閘門の近代化を進めて欲しいというのが農業団体やバージ業者の言い分である。
 
図4-2 内陸水路におけるダム及び閘門
資料提供:USACE
 
図4-3 ケンタッキー川プロファイル
KENTUCKY RIVER MAP AND PROFlLE
 
MAP
 
PROFILE
*Pool Above McAlpine Dam, Ohio River
資料提供:USACE
 
図4-4 全米で改修工事が行われている閘門
(拡大画面:143KB)
資料提供:USACE







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