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国際海事情報シリーズ77 米国における次世代水上交通システム構築に関する調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


6. MTS関連主要技術研究開発プロジェクト
6-1 MTS関連研究開発プロジェクト概観
 MTS報告書は、3-1節で述べたように、長期的に競争力を維持する為には積極的且つコスト効果の高い技術開発が不可欠であるとし、個々の機関の利害を超えMTS全体を見通した国家MTS研究プロジェクトを設立する必要性に言及している。しかしながらMTS関係研究費については2003年までの間には余り改善されていない。
 MARADは2002年6月海事研究及び技術開発(Maritime Research and Technology Development)と題する報告書を作成し、議会に報告した。本報告書は米国の運輸技術開発の現状に関し特にMTSに力点を置いて報告したものであり、増大する貨物量を効率良く、安全に且つ環境に優しい方法で処理する為、海事研究及び技術開発に多額の投資を必要とする旨説明している。また、運輸関係の他の部門に比し海事関係研究予算が格段に冷遇されていること、更に海事関係の中でも環境関連の研究予算に比してMTS関係の予算が特に冷遇されていることを示している。
 
(DOTの予算)
 表6-1は、FY95からFY01迄のDOTの研究開発費内訳であるが、MTSイニシアティブをUSCGとともに主管するMARADの予算はFY96以降ゼロである。MARADは、コーディネーターとしてUSCGや他省庁の基金を流用し、管理下にある船舶の現物提供という形で他の省庁と共同開発を進めてきたが、それ等も燃料電池船の開発やバラスト水処理に関する環境プロジェクトが大部分である。MARADは、国家MTS研究プログラムについて、国家造船研究プログラム(NSRP)のような国家と民間のコスト分担を基本とし、第3者機関の下で運営するのが好ましいと考え、幾つかの選択肢を作って検討中である。しかしながら、NSRPも2004年以降の存続が不可能であり、これを支える海軍研究部門の人員も大幅に削減されていることから、国家MTSプログラムの設立はかなり困難な状況である。このMARADの海事研究及び技術開発報告書に述べられている海事研究開発事項について、代表的政府機関について概観する。
 
(MARAD)
 NSRPの前の国家造船研究プログラムMARITECH(1994-98)が実施された当時はMARADの技術陣容も整っており、DODの国防先端技術計画局(DARPA)とともに、全プロジェクト65件の内40件の実施管理に当たった。MARITECHでは、米国造船産業が世界の商業造船市場に再参入する為に必要な船舶設計や造船所近代化の為の研究に主力が注がれた。MARITECHの後継であるNSRPは、MARADの手を離れ全面的に海軍の所掌となった。その他MARADが近年関係してきた研究開発プロジェクトは以下の通りである。
 
(1)荒天下の船舶修繕所からの流出水のトリブチル錫(TBT)濃度を50ppt以下とする研究
 本研究は最初バージニア州先進船舶修理及び保守・センター(CASRM)とMARADの共同開発プロジェクトであったが、EPA、NSRP、バージニア州等が基金参加した。
 
(2)海事エネルギー及びクリーン排出研究プログラム
 エネルギー及びクリーン排出に関する産業界のプロジェクトに対し、各種技術援助を与えるプログラムである。援助の内容は、プログラムの展開、成果及び排出量計測、産業界へのアウト・リーチ及びウエブサイトの開設等である。具体化された援助プログラムには下記がある。
(1)フェリー及びその他の船の代替燃料に関するサンフランシスコ・ワークショップのFHAとの共催
(2)サンフランシスコでの天然ガス燃料フェリーの使用に関するFTAとの共同研究
(3)訓練船Kings Pointerの天然ガス・デイーゼル混焼船への設計変更
(4)フェリーをハイウエー網の一部に組み込む連邦研究の展開
(5)天然ガス及びデイーゼル推進フェリーの排出測定をUSCGの基金で実施。
 
(USCG)
 USCGはMTS関連機関としては最も研究予算に恵まれている。表6-2にUSCG研究予算の使用内訳を示す。表6-2によれば、USCGの研究予算($2,200万)の33%がMTSの改善とサポートに用いられているが、内容は環境や安全に関するものが多く、本報告書の主題である貨物や乗客流動化の為のハードや情報技術に関するものは少ない。
 
(1)インテリジェント水路システム(Intelligent Waterway System)
 本プロジェクトは、水路関係者に有効且つ効率的な水路情報を与えるもの。水路情報はデジタル情報(電子海図、レーダー・イメージ等)、音声放送情報、聴・視覚航行補助情報、無線航行補助情報等の組み合わせである。研究の初期に注力されたのは航路関係予算が減少しても運航の安全と流動性を保証出来る技術の評価であった。技術評価の対象となった技術には、船舶航行用補助装置数を減らす技術、一定の資金で最高の性能を得るための資源配置を定める一体化されたリスク管理方式、貨物及び乗客の効率の良い、安全な流動を可能にする水路設計マリーン情報システムが含まれている。本プロジェクトの中でMTS関連イニシアティブは下記の3点である。
(1)水路マネージメント:交通及び運航評価イニシアティブ
(2)船舶交通マネージメント・イニシアティブ
(3)航行補助装置のシステム解析イニシアティブ
 
(2)リスクマネージメント/決定サポート/資源配分(Risk Management/Decision Support/Resources Allocation)
 この項目のうち水路に関する事項は、インテリジェント水路システムで取扱われている。本プロジェクトでは4件がMTS関連イニシアティブとして記載されている。
(1)先進的汚濁対応に対する予想モデル・イニシアティブ
(2)国際マリーン情報安全システム・イニシアティブ
(3)ポートステート・コントロール対象マトリックス・イニシアティブ
(4)USCG職員の個人傷害を減らし、労働生産性を高める方策イニシアティブ
 
(3)人のエラー減少/疲労(Human Error Reduction/Fatigue)
 本プロジェクトでは下記3件がMTS関連イニシアティブとして実施されている。
(1)商船免許と訓練イニシアティブ
(2)曳航時常時見張りイニシアティブ
(3)商船の乗組員緊張度の改善イニシアティブ
 
(国立海洋大気圏庁(NOAA))
 NOAAは、海図製作、水路・海岸線測量、水位・潮位・海流観測、海洋資源の保護等のほか、油濁に関しUSCGを支援する等幅広い活動を実施している。海事関連の研究開発は国家海洋局(NOS)で行われている。NOSでは、リアルタイム情報及び近未来の予測情報を電子海図の様な近代的形式で与える研究を行っている。また、深喫水タンカーや貨物船に対するキール下深さの予測システムを開発中である。国家気象局(NWS)は、海洋気象情報及び予報を船舶オペレーターに伝達する。NOSの海洋モデルは、NWSの予報モデル及びリアルタイムの気象データを入力して作成される。
 
(DOD)
 DODは、国家安全保障確保のため、海上輸送と造船業基盤整備を図るべく、豊富な軍事技術開発費を海事分野に支出している。民間で使用されている優れた技術を軍事用に転用し、また、軍事技術の民生用への転用を積極的に推進し、舶用資機材の調達コストの低減と海上輸送や造船業の競争力維持に貢献している。DODは、海上輸送について、運輸技術商業化センター(CCDOTT)を設立した。CCDOTTは、議会がスポンサーとなって関係政府機関、企業及び学会を網羅したコンソーシアムが参加しているが、運営の中心はMARADと同センターが置かれているカリフォルニア州立大学ロングビーチ校である。現在開発中の技術は下記である。
 
(1)アジャイル(高速)港湾イニシアティブ
 アジャイル港湾はMTS2020が狙っている技術そのものである。ターミナルにおける革新的貨物ハンドリング技術、貨物システム、貨物トラッキング・システム、港湾の能力を増大する情報マネージメント・システム等が研究されている。
(2)高速シーリフト(HSS)開発イニシアティブ
 速力40ノット以上(目標は50ノット)の軍民両用フェリーの開発。
(3)急速軍事展開技術イニシアティブ
(4)指揮・管理技術イニシアティブ
 
表6-1 DOTの部署別研究費の配分(1995−2001)
資料提供:DOT
 
表6-2 USCGの課題別研究費の配分(2001年)
Description Approximate % of Budget
Investment Areas: Overall MTS Portion
Detect, Identify and Classify Marine Targets 15  
Future Communications & Tactical Data Exchange Concepts 9  
Intelligent Waterway Systems ** 8 8
Risk Management/Decision Support/Resource Allocation ** 15 7
Alternate Energy Technologies 5  
Human Error Reduction/Fatigue ** 8 3
Interdiction Technologies 14  
Aquatic Nuisance Species * 7 7
Oil Spill Response ** 4 4
Total 85  
Special Services: Include Fire Prevention and Ship Structures Committee 15 4
TOTAL 100 33
** Denotes investment areas that include initiatives that affect MTS performance.
 
資料提供:DOT







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