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国際海事情報シリーズ77 米国における次世代水上交通システム構築に関する調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


6-2インテリジェント輸送システム(ITS)
 ITSは、5-4節で述べたように国を挙げて各輸送モードで完成を急いでいる輸送情報システムである。MTS ITSは、MTS関係者及び使用者が必要とする情報を、集積、貯蔵、再生、分析して手元に送り届ける電子情報コミュニケーション・システム及びネットワークを集大成したものである。MTS ITSでは、他のモード例えばトラック業界のITSを取込むことが望ましい。取込むことによって、モード内及びモード間の貨物の流動化を最大にすることが可能となる。
 
(ITSのメリット)
 MTS報告書は、MTS ITSの開発により、以下の5点の便益が得られるとしている。
(1)地域港湾コミュニテイから、船舶の位置、キール・クリアランス、水路状態、他船の交通等に関して信頼性の高い情報が船舶にもたらされ、効率の良い、安全な入港が可能となる。
(2)電子及び人工衛星航行により流動性が高まり水路の安全性が増す。将来ITSの信頼性が増した時点でブイ等の航行補助システムの一部が省かれる。
(3)統一した貨物・荷主データ・ベースにより、MTSの効率良い管理が可能となる。一旦ITSに取込まれた貨物・船舶データにより、全ての連邦、州、地域政府の要求事項が処理され、船舶出入港許可同時実施システムが確立される。統一したデータ・ベースの使用は、他モードのITSに取込まれ全体的輸送効率を増大する。
(4)正確な情報に基づくモード/ルート/スケジュールの設定、保守/修理/建造/オペレーション及び研究開発/インフラ投資/料金等の設定が可能となる。
(5)電子海図、自動情報システム、VTS等の近代技術の適用によって海上交通の安全と生産性が増大する。
 
(情報共有)
 これらの便益の基本となっているのは、統一した情報を関係者が共有して効率を上げる、いわゆるモード内及びモード間の情報共有であり、情報共有により技術共有、プロセス統合が可能となり、輸送の流動性が増加する。
 情報コミュニケーション技術(ICT)の取り込みの第1段は、書類ベースの取引及び情報交換を電子化することであり、現在既に導入が進んでいる。第1段で使用されている技術は、低価格コンピューター、バーコード読取り機、自動機器選別タグ、高度データ・ベース・マネージメント・ソフトウエア、電子データ交換基準等が挙げられる。産業界は、これらの技術を顧客の要求に合わせて情報の伝達や取引に使用してきた。インターネットによるeコマースが可能となり、インターモーダル・システムの関係者は大会社であれ個人であれインターネットを介してeコマースを実施するようになった。eコマースがMTSの流動性に果たした役割は大きく、次節で別途取り上げることとする。
 
(リアルタイム・オペレーション)
 現在は、ICTの第2段の変革、即ちリアルタイム・オペレーションの組み込みが進行中である。第2段の変革を推進している技術は、人工衛星コミュニケーション技術である。例えば低軌道人工衛星は、コンテナやその他貨物のトラッキングに利用可能である。このトラッキングは、コンテナ貨物直接でもそれを輸送するトラックや貨車を介したものでも良い。
 その他の技術としては、スマート・カード、全世界的コミュニケーション・ネットワーク、エキスパート・システム・ソフトウエアといったものがある。これらの技術は、荷主、キャリア、荷受け側等の輸送関係者間でのシステム稼動状況及び設備使用情報のリアルタイム伝達を可能とする。第2段技術に基づくシステムは、物流の最初から最後迄の把握を可能とし、安全及びコントロールを最適化するもので、コスト効果と信頼性の高いインターモーダル・サービスを可能にする。
 
(EU ITSの開発)
 米国のMTS ITSは未だ発表されていないが、ヨーロッパではEU ITSを開発中である。ヨーロッパでは、貨物量全体が伸びており、2010年には1995年の2倍になると予想されている。また、域内統合の深化と経済のグローバル化の進展に伴い、国際間の貨物移動量が増加し、EU諸国間の国際取引が増加した。この結果、2000年には$3,000億であった国境ロジスティックスに対する支払いは、2005年には$1兆になると予想されている。そしてeコマース・ベースの貨物の輸送量は、2010年には2000年の10倍になると予想されている。
 このような状況を踏まえ、ヨーロッパでは早くからITSが研究され、既に多くのITSベースの貨物輸送システムが商業的に実用化されている。ヨーロッパでの2000年における貨物輸送シェアは、道路70−72%、鉄道15−16%、内陸水路9−10%、パイプライン5%となっており、トラック輸送が多くなっている(70年代には鉄道28%、内陸水路14%であった)。ヨーロッパでもより環境に優しい鉄道やSSSに切り替えようとするプロジェクトが設けられているが、インフラ整備の遅れ等から物流量の伸びに対応できておらず、近年ようやくコンテナのバージ輸送等のSSSが機能し始めた状況にある。
 
(EU ITSのアーキテクチャー)
 図6-1はEU ITSのアーキテクチャーを示した図である。左側3行が機能モデルである。機能として例示されているのは、到着報告書(Arrival Report)、トラッキング及びトレーシング(T&T)等であるが、これらをリアルタイムで表示する機能は簡単ではない。輸送の各モードは、それぞれ交通マネージメント・システム(TMS)を有しており、また、モード内オペレーターやモードを超えたオペレーターは、自身の貨物輸送マネージメント・システム(FTMS)を有している。
 TMSは固有の輸送モードに適用される交通規則の様なものである。航空産業では安全上の目的から多くのTMSが開発されてきたが、水上交通関連でもヨーロッパで多くのTMSが開発されている。例えば、閘門管理者に対する警告システムはその一例である。危険物運搬船が近づいてくる場合、閘門管理者は警告システムに従って種々の手段を講ずることになる。他船が既に閘門に入っていれば、閘門管理者は危険物運搬船に減速を指示する。場合によっては複数の危険物運搬船が同時に閘門に入ることを拒否する等がある。
 
 何れにせよ荷主にとって一番大切なことは、貨物の到着時間(ETA)を正確に予測することである。例えばあるトラックが道路混雑に出会った場合、会社は自社のFTMSに従って迂回を指示するかもしれないが、各モードのTMS、各オペレーターのFTMSを網羅したITSが完備していれば、更に早く、正確に貨物を送り届けることが可能となる。図6-1の第1列目の潜在ユーザーは、正確なETAを得るため、多様な交通情報をITSで処理した結果を適切なフォーマットで示してくれることを望んでおり、本情報のマーケットは大きい。図6-2はITSに組み込まれるべきTMS、FTMSのリンクを示したものである。TMSは図の左側、FTMSは右側に示されており、お互いに情報を共有して個々のオペレーターが具体的輸送を実施する。
 
(EU ITSに対して交通情報を取り込む場合の要件)
 ITSに交通情報を取込む為の主要注意事項は以下の通りである(参考資料37)。
(1)貨物輸送情報は、信頼可能なリアルタイムのものであること。情報は、貨物の過去及び現在における位置とともに、将来の運輸プロセスも予測してETAを示さなければならない。
(2)高度の情報統合が必要である。情報及び確実な引き渡し/インベントリー・コスト等のマネージメントに基づき貨物の移動に伴って1つの統合されたプロセスが得られる様にする。
(3)電子データ交換(EDI)は、中期的にインターネットに置き換えられる。機械及び人間が読み取り可能な伸長マークアップ言語(XML)が、eビジネスの中心となる。
(4)輸送会社の規模と自動化の程度にもよるが、交通情報が車中でも家でも閲覧可能とする。可能であれば、ナビゲーション・システム、ルート計画ソフトウエア、顧客情報システム(インターネット経由のトラッキング及びトレーシング・ソフトウエア)等と連動させる。
(5)現在TMSとFTMSの統合は開発の初期段階である。
(6)鉄道で現在問題となっているのは、路線会社と貨車運行会社間(注 欧州では、従来の鉄道会社を線路保有・管理会社と鉄道運行会社に分ける上下分離方式が一般的)のオペレーション及び組織上の仕切りの問題である。
(7)鉄道の場合、オペレーション・システムにより情報取得の難易度が異なる。鉄道のシャトル運行は容易であり、貨客混合運行は困難度が増す。
(8)鉄道で重要な情報は、ETAやトラッキング情報ではなく、貨物がどの列車に載っているかである。
(9)海運では、気象・海象情報(潮汐、風、予想ヒーブ等)が交通情報として重要である。
(10)国際海事機関(IMO)では、2003年7月1日迄に300トン以上の船舶に自動識別システム(AIS)を取り付けることを義務付けている。AIS情報は将来船舶交通情報の基本となる。
(11)港湾ターミナル・オペレーターは、ターミナル使用を最適化する為にETA情報の主利用者となる。
(12)内陸水路で必要とされる情報は、氷、水位、閘門、ターミナルの状況である。
(13)EUでは河川情報サービス(RIS)が導入されたが初期段階のものである。AISと電子海図表示情報システム(ECDIS)が、オーストリア、ドイツ、オランダで導入されている。
 
図6-1 EU ITSのアーキテクチャー
 
FIGURE 2 Elements of the THEMIS freight transportation architecture (11): (a) functional model, (b) IT model, end (c) physical model. (HazMat = hazardous materials; Transp. = transportation; Govern = government; T&T = tracking and tracing; Stat/dy. = static/dynamic; Mes spec = message specifications; SW & HW = software and hardware; XML = extensible markup language; Syst. arch. = systems architecture.)
 
資料提供:TRB
 
図6-2 TMSとFTMSのリンク
資料提供:TRB







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