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国際海事情報シリーズ77 米国における次世代水上交通システム構築に関する調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


6-3 貨物・乗客及び船舶のトラッキング・システム
 トラッキング及びトレーシング(T&T)は、図6-1の中で、EU ITS機能の重要事項に挙げられている。そしてMTS報告書でも、T&TをMTS2020に備える3つの重要な情報マネージメント・システムの1つに挙げている。T&Tで大切なことは、情報データが各輸送モードに継ぎ目無く流れ、同じ情報が同時に各方面で利用されることである。
 T&Tは、9/11テロの前からセキュリティ対策としてその重要性が指摘されていた。MTS報告書は、MARAD、USCG、USCSが、他の政府機関や民間と協力して、国際コンテナ貨物、軍事貨物、その他の貨物、乗客及び船舶に対するT&Tシステムを開発することを求めている。また、コンテナ貨物の場合タグ・システムの開発が望ましいと指摘し、その際1998年インターモーダル・グループが実施したインターモーダル貨物識別技術ワーク・ショップその他のワーキング・グループで得られた結果を取込み、技術の基準化、データの流れ、手順に力点を置いたものであることを求めている。
 
 このT&Tシステム開発の要請については、9/11テロにより技術開発が加速されることになった。T&Tは、セキュリティのみならず、国際貨物の税関事務のスピードアップ、危険物事故対応の迅速化、その他流動性の増加等により輸送の生産性、安全性、環境性を増加させるものと期待されている。
 
(コンテナ貨物用タグ及び電子シールシステム)
 国際コンテナは、個数が多いこと及びT&T技術開発の遅れから、セキュリティ上最も危険なものとされている。コンテナ貨物用のタグ・システムやそれと併用される電子シールシステムは、以下の通り様々なものが開発され、評価が行われているが、コスト、信頼性等の面で課題が残るため、その仕様が確定していない。
 
(1)RFID(Radio Frequency Identification)タグ
 RFIDは、移動体は全てトラッキング可能な、比較的新しい技術である。このシステムは、識別コードその他のデータの入っているICチップを内蔵した暗号タグを使用している。本システムの中心となっているのは、読取機と呼ばれる部分である。港湾ターミナルの地面に埋め込まれた数千個のトランスポンダーが電子グリッドの役を果たす。例えば、クレーン・アームに取り付けられた読取り機は、地中のトランスポンダーが発信する通過中のコンテナの暗号タグ情報を受信して、リアルタイムの位置、行き先、内容物等の情報を通報する。途中で武器や爆発物等が混入しないよう電子シールと併用する必要がある。
 RFIDの欠点は、過酷な条件下を移動するコンテナには不向きであり、特に空気中の塩分で故障しやすいため、信頼性の向上が研究課題となっている。
 
(2)光学シールと電子シール(Electronic Seal)
 RFIDタグと光学シールを組み合わせたコンテナ港湾システムについては、2003年時点で少なくとも4社が販売しているが、ある製品には、GPSレシーバーも組み込まれており、コンテナが閉じられた後何者かが開けた場合は、タグが光学シールからの開口情報及びGPSからの位置情報を記録する。光学シールの場合、1回で使い捨てのものは$5、10年間再利用可能でGPSレシーバー付きのものは$200といわれている。
 また、ワシントン州カナダ国境では、コンテナに光学シールの代わりにより詳細なデータを記録し、また、自動的に読取可能な電子シールを使用して、通関の迅速化と不正貨物を発見するイニシアティブが発足している。
 
(船舶のT&T)
 船舶自体のT&Tに関しては、SOLASに基づき、2003年7月1日より船舶自動識別システム(AIS)の取り付けが国際的に義務付けられている。
 AISは、船舶に搭載された諸航海機器、即ちジャイロ・コンパス、ECDI、レーダー、GPSナビゲーター等と結合され、自船の位置、速力、方向、貨物、船級、目的地等の諸情報を、リアルタイムでVHFにより付近航行中の船舶や陸岸に通報する。船舶の識別番号、旋回率、速力、位置精度、経度及び緯度、対地コース、進行方向等は2−10秒おきに通報され、船舶のIMO番号、ラジオ・コールサイン、船名、船種、貨物、船体主要寸法、喫水、目的地、ETA等は6分毎に通報される。
 
 AISは、船舶のT&T機能によりテロ対策に役立つのみならず、通常の船舶航行時の安全確保や閘門等の効率的な運用にも役立つものと期待されている。特にミシシッピー川のような河川航路の場合、曲がりが多く、レーダー障害が多いことから、航路では効果的である。河川航行でレーダーが実用的なのは1−1.5マイルの範囲であり、条件が良くても2−3マイルであるが、AISは20−30マイル先から他船の情報を知らせてくる。また船舶は、陸上基地やブイのAISトランスポンダーから天候、水位、視界、風速、風向等の情報を得ることに加え、内陸水運では次の閘門の利用状況等を事前に知ることが可能となる。なお、米国で最初にAISの設置が義務化されたのは、セントローレンス運河(2003年3月31日)である。
 
(米国内でのAIS設置義務付け)
 USCGは、300GT以上の国内船の全てにAISの装備を義務付けている。更に以下のVTS地区及び船舶移動報告システム地区(VMRS)を航行する特定の船舶(漁船を含む長さ19.8m以上の商業船、長さ7.9m以上で出力600hp以上の曳船、1人以上の旅客を搭載する100GT以上の船、旅客50人或いはそれ以上を搭載する旅客船)は、AISを装備することが求められている。
○VTS St.Mary(2003年12月31日)
○VTS Borwick湾、VMRSロサンゼルス/ロングビーチ(2004年7月1日)
○VTS下部ミシシッピー川、VTSポート・アーサー、VTSプリンス・ウイリアム・サウンド(2004年7月1日)
○VTSヒューストン/ガルベストン、VTSニューヨーク、VTSピュージェット・サウンド、VTSサンフランシスコ(2004年12月31日)
 
(MTSとeビジネス)
 eビジネスは、輸送のインフラストラクチャー及びサービスに対する使用が急速に伸びているが、これにより輸送サービスを改善し、生産性を上げ、コストを下げるものと期待されている。eビジネスの一部と定義され商品の取引を電子的に行うeコマースは、2000年5月から2001年5月の1年間で、世界中の取引高が$3,600億から$6,300億へと急増し、それにつれて輸送に与える影響も増加している。eコマースを含めたeビジネス全体の会社間取引は、2004年には世界全会社間取引の29%、$5.7兆に達すると見込まれており、eビジネスが輸送に与える影響は益々増大する。
 
 貨物輸送の分野では30年以上前からEDIが使用されていたが、インターネットが一般化される迄はあまり広く使用されなかった。現在ではEDIも順次インターネット化されている。ロジスティックス・サプライヤーは、地域道路情報、交通マネージメントの為のITS、オペレーターのルート計画を総合して最終的に貨物輸送ルートを定める。
 これ迄eビジネスで流れる貨物に対し、港湾や鉄道は大きな努力を払ってきた。海運の世界では、eビジネスは海運会社、港湾、荷役会社、インターモーダル・サービス・プロバイダーの生産性を上げてきた。港湾は、eビジネスの情報を基に、船舶の回転時間や埠頭の使用計画をより正確に事前に作成することが出来、荷主や顧客は、信頼性の高い情報が早く届くので船舶が海上にあるうちに輸入許可が得られる。
 eビジネス貨物T&Tシステムは、コンテナ貨物には特に有用である。但し港湾の中にはeビジネスを実施していない、或いはEDIシステムからインターネット・システムに切り替えていない港湾も存在し、これを全世界に普及させることが一つの問題となっている。
 eビジネスが普及している主要港湾では、天候、埠頭、潮位等の情報を前もって提供しており、また日常業務をペーパーレスで実施して管理費の節約を図っている。また、eビジネスでは各モード間を情報が継ぎ目無しに流れる利点も大きい。今後MTSインターモーダル・システム全体に、港湾と同じレベルのeビジネス・システムが張り巡らされることが期待されている。
 
(コンテナ輸送とeビジネス)
 コンテナの場合、港湾から接続する鉄道へ如何に情報が流れるかが問題である。アラメダ・コリドーのようなインターモーダル枝線と港湾間のeビジネス・システムは、現在開発中である。幹線鉄道の貨物ターミナルから先は鉄道のシステムに依存することとなるが、米国の鉄道は必ずしもeビジネスに熱心ではない。これは、鉄道の大顧客である米国政府が鉄道のeビジネス化をリエンジニアリングするのが遅れており、また、サプライ・チェーン全体で基準化や相互運用性の確保がなされていないという背景も一因である。
 現在カナダ/米国の鉄道で実施されているインターネット情報は、配車要求の作成及び伝達、積荷証書の作成及び伝達、請求書の回覧及び支払い、荷主の貨物移動情報へのアクセス、顧客作成のT&T情報の使用程度であるといわれている。eビジネスでは、サプライ・チェーンの何処か1個所でも対応していなければ、そこがブラックホールとなる。このため、顧客からの貨物ETA等に関する質問に回答するため、MTS関連部署は多くの職員を雇用している。MTSインターモーダル・システム全体のeビジネス・システム或いはITSを早期に完成してこの様な無駄を排除することが求められている。
 
6-4 水路関連情報システム
 水路関連情報システムに関し、MTS報告書は、水路測量・天候情報(Hydrographic and Weather Information)及び水路運航管理情報(Waterways Traffic Management Information)に関する情報マネージメント・システムと情報インフラストラクチャーを構築することを求めている。
 
(MTS報告書の勧告;水路測量・天候情報関連)
(1)NACは、水路及び港湾における現在及び将来の海洋及び気象状態、位置データ、運航補助情報、船舶運航情報等を総合した運航情報システムを作り上げる詳細な計画を作成すること。USCG、NOAA、USACE及び国立地図院(NIMA)は、地元関係者と協力してシステムを作り上げなければならない。
 
(2)NOAAは、USCG及びUSACEとともに地元及び地域の関係者と協力し、海洋物理量リアルタイム・システム(PORTS)の設計、改善及び設置に努める。
 
(3)NOAA及びUSACEは以下の事項に関し調査する。
(1)電子海図がカバー出来る範囲の拡大。
(2)最新の水路測量及び海岸線観測情報の取り込み。
(3)電子航海チャート(ENC)に高解像度深度情報やドッキング・チャートの様な詳細データを取込んで質を高める。
(4)NOAAは現在15−20年をかけて実施しようとしている測量予定を早める。
(5)NOAAは常時水路使用者とコミューニケートし、重要な地域の水路測量結果が、時宜を得た、正確且つ信頼出来る水路情報であるかを定期的に見直す。
(6)NOAA及びUSACEは水路測量時データの精度を増し、データ集積の効率を増すため、DGPSを備えたマルチビーム及びサイドスキャン・ソナーやリモート・センシング等の最新の技術を使用する。
 
(MTS報告書の勧告;水路運航管理情報関連)
 船―船間、船―陸間の音声交信は、周波数干渉と混雑の為都市部において益々交信が困難になっている。水路における安全航行確保には運航管理が必要であり、また船舶運航者は水路で発生している全ての事象、他船の船員や積荷等全てのことを知る必要があることから、以下の事を行う。
 
(1)地元関係者と協力して各港に特有な交通管理システムを作り上げる。
(2)情報を集めそれを利用者に伝達するに当り、各種技術を比較してコスト効果の高い技術を利用する。
(3)港湾関係者と協力して音声交信問題の解決法を検討する。無線周波数については、連邦通信委員会(FCC)と協議する。
(4)運航、交通マネージメント、その他の安全関連情報(AIS、DGPS等)の通信手段として、非音声モードによる方法を研究する。
(5)各港湾で通常時及び非常時に別々の船舶交通マネージメント・システムを運用する必要性とそのコスト効果について検討する。
(6)関係者参加の下、常時最新化した情報システムを推薦する。
(7)適切な交通マネージメントを実施する努力を行う。これには交通分離計画、交通規制区域、投錨地設定及びマネージメント、船舶移動調整メカニズムといったものが含まれる。
(8)国家基準に合致し、且つ国際的なMTS使用者に受入れられる安全運航情報システムを育成する案を作成する。
(9)現在の各港湾及び水路の交通マネージメント・システムの成果を比較検討する客観的な方法を考案し実施する。
(10)水路交通情報を陸側のITSとリンクする方法を探究する。







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