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国際海事情報シリーズ78 米国における舶用ベンチャーの事業化支援制度に関する調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


3-2. 新たなベンチャー事業を支える技術・経営支援プログラム
(米国中小企業庁)
 中小企業庁(SBA; Small Business Administration)は、中小企業を対象として、次に示すような様々な技術支援を提供している。
 
(1)事業主の啓発
 SBAのOffice of Entrepreneurial Developmentは、事業に関するカウンセリングや教育訓練のほか、市場調査や事業計画作成等の技術支援も提供している。
 
(2)中小企業開発センター
 SBAは、将来性のある新興中小企業に経営支援を提供するため、中小企業開発センター(SBDC; Small Business Development Center)のプログラムを管理している。SBDCは、本部のほか、簡単に利用できる支部でも広範な情報やガイダンスを提供することにより、個人事業主や中小企業が1か所であらゆる情報を得られるような支援センターとして機能している。
 
 SBDCのプログラムには民間セクター、学界、連邦・州・地方政府が協力して取り組み、中小企業に経営支援や技術支援を提供することによって経済発展を促している。
 
 SBDCのサービスは、財務、マーケティング、生産、組織、工学、技術上の問題や実現可能性調査による中小企業への支援等、多岐にわたっている。
 
 各州SBDCの運営資金のうち、SBAが拠出しているのは50%以下であり、残りは1つ以上のスポンサーが提供している。これらの見合い資金のスポンサーは、州議会、民間の基金や助成金、州及び地方の商工会議所、州の認可を受けた経済開発法人、公立及び私立の大学、職業訓練校、コミュニティカレッジ等である。スポンサーからの資金の割合は、50%という見合い資金の下限を大きく超える傾向がある。
 
(SCORE)
 米国には、新規起業を支援する非営利の民間組織も多数存在する。SCORE Association (http://www.score.org)もその一つで、ワシントンD.C.を本拠地とする非営利組織であり、起業家教育のほか、全米の中小企業の設立、成長、成功に役立つ活動を行っている。SCOREは、米国中小企業庁のリソースパートナーである。
 
 SCOREは、退職後のボランティアや現役で働きながら活動するボランティア10,500人以上で構成され、公益サービスとして無料で事業に関するカウンセリングや助言を提供している。創設後約40年のSCOREは、全米で600万人以上のアメリカ人を支援してきた。
 
 (国防技術情報センター(DTIC; Defense Technical Information Center))
 DTICは、国防総省(DoD)の科学技術情報を収集・配布する中核的施設である。DoDの情報の多くは、完了した研究についての技術報告書や進行中の研究の要約の形で、DTICによって提供されている。
 
 国防上の任務を達成するために科学技術情報を利用する者の作業効率を高めるため、DTICは13か所の情報分析センターを管理している。これらの情報分析センターには、経験豊富な情報専門化、科学者、エンジニアが配置され、顧客が専門分野の科学技術情報を探し、分析し、利用できるように支援している。
 
 DTICは、SBIR(Small Business Innovation Research)の支援を通じて、小規模なハイテク企業に技術移転の機会や包括的な技術情報を提供している。DoDはSBIR/STTRの公募によって、DoDのニーズを満たすハイテク部門の研究開発への中小企業の参加を促進している。
 
(Tech Net)
 Tech-Net(http://www.tech.net)は、ハイテク部門の中小企業に関する技術情報やリソース及びこれらの中小企業に役立つ技術情報やリソースが保存されたインターネットベースのデータベースである。このデータベースは、研究者、科学者、連邦・州・地方政府のスタッフにとってはサーチエンジンとして、また中小企業にとってはマーケティングツールとして、さらに投資家やその他の資金源にとっては潜在的な投資機会へのリンクとして機能している。
 
 Tech-Netは、中小企業パートナー、中小規模の契約業者や下請け業者、先端技術研究、研究パートナー(中小企業・大学、連邦研究所、非営利組織)、製造センター、投資機会を探す人々に無料でサービスを提供している。
 Tech-Netシステムの企業プロファイルには、SBAのSBIR/STTRデータベースからのデータ、商務省のATP(Advanced Technology Program)データベース、製造センターのMEP(Manufacturing Extension Partners)リスト、そして個々の企業の事業及びマーケティング情報が含まれている。システムに登録されている企業はそれぞれのプロファイルを更新し、SBAは正確な助成金交付情報を維持する。
 このプロファイルによって、中小企業は製造商品や技術サービスの販売を促進し、ニッチ技術市場での可能性を拡大することができる。ホームページを提供している企業は、Tech-Netの各々のプロファイルに自社のWebサイトヘのリンクを張ることにより、このプロファイルを強力なマーケティングツールとして利用できる。
 
3-3. 事業計画の作成
 戦略事業計画の作成に関して中小企業を支援するリソースは、国、地方、地域、またはオンライン上に数多く提供されている。また、SBAは有益な基本情報やワークショップを提供している。これについては、以下を参照のこと。
 
http://www.sba.gov/starting_business/planning/basic.html
(提供:SBA)
 
(事業計画の要素)
 事業計画は様々な方式で作成できるが、SBAはすべての事業計画に共通した要素をいくつかまとめている。これらの概要は以下のとおりである。
1. 表紙
2. 目的の記述
3. 目次
I. 事業
A. 事業の説明
B. マーケティング
C. 競争
D. 運用手順
E. 人員
F. 事業保険
 
II. 財務データ
A. 融資申込み書
B. 資本設備及び物品リスト
C. 貸借対照表
D. 損益分岐分析
E. 利益予測(損益計算書)
3年間の概要
初年度の月別詳細データ
2年目、3年目の四半期別詳細データ
予測の根拠となる想定事項
F. 見積もりキャッシュフロー
 
III. 付属文書
・主要幹部の最近3年間の個人財務状況報告書(すべての銀行にこの書式が用意されている)の所得税申告書
・フランチャイズ事業の場合は、フランチャイズ契約及びフランチャイザーが提供したすべての関連文書のコピー
・建築用敷地の賃借または購入契約書案のコピー
・ライセンス及びその他の法的文書のコピー
・主要幹部すべての履歴書のコピー
・サプライヤーからの同意書のコピー等
 
(事業計画のサンプル)
 次に示すSBAのWebリンクからは、多様な事業計画のサンプルを入手できる。
 
3-4. 技術革新のクラスター
 バイオテクノロジーやソフトウェア/IT等、米国の多くのハイテク産業は、企業、研究・教育機関、政府機関、裾野産業の戦略的な連携を特徴とした多様な地理的クラスターを構築してきた。マサチューセッツ州Woods Hole、カリフォルニア州La Jolla及びメイン州にあるような海洋学センター周辺地域には、船舶・海事関連技術業界のクラスターが形成されている。このようなクラスターについて以下に詳述する。
 産業クラスターには、ベンチャーキャピタルが得やすく、新たな参加者を引きつけるサクセスストーリーが少なくとも1つはあり、質の高い地域の研究機関があるというような共通の特徴がいくつかある。しかし、各クラスターの競争上の強みはそれぞれ異なるため、成功への道筋は様々である。多くの場合基本モデルの属性の1つが強調されている。ここでは、メイン州の産業クラスターの状況について解説する。
 
(地理的な位置)
 メイン州北東地域
 
(戦略プロファイル)
(1)造船業との関係
 米国メイン州には、BIW(Bath Iron Works)のほか中小の造船業が集積しており、小型船や大型船の造船や漁業を通じて、海事関連技術産業とつながりが深い。
 
 BIW(Bath Iron Works)は、海事関連技術分野においてもメイン州のクラスターにおいても特殊なケースである。同社は、その規模や建設する船舶の技術的な質の高さによって、メイン州の重要な新技術開発企業とみなされている。BIWが製造しているのは、唯一の顧客である米国海軍向けの製品1つだけである。同社の製品も市場も非常に専門性が高いため、標準的なクラスターの連携のなかでの機能は限定されている。
 
 しかし最近、海軍ではサプライヤーであるBIWに対する期待が変化し、さらに国防政策へのアプローチも変化しているため、BIWの事業の性質は変わりつつある。これによって、メイン州最大の民間雇用主である同社は、高度な技術力に支えられた経済へと同州が移行していくにあたり重要な役割を果たすことができるようになった。このような変化は、伝統的な海事関連技術だけでなく、実質的にメイン州の主要技術部門すべてに及んでいる。
 
 BIWの研究開発費は1億ドルを超えており、いくつかの分野ではBIW自体が主要研究組織になりつつある。このような分野は、情報技術(ウェアラブルコンピュータ、船舶図の自動作成)、電源節約(静電気ベンチレーション)、発電(燃料電池)、廃棄物処分(マイクロ波汚水処理システム)等である。新しい船舶は主に複合材料で建設される傾向があるが、BIWは船舶建設における複合材料の利用に関しても広範な研究を行っている。新たな船舶プログラムが進むにつれて、BIWの研究の速度と量は加速するとみられる。
 
 BIWに技術を提供している企業は、BIWがある限り、民間市場の潜在能力から利益を得られると考えられる。その結果、地域内の需要だけでなく、地域外の輸出需要も刺激される可能性がある。
 
(2)海洋観測との関係
 メイン州が高度な能力を開発する可能性のある分野の1つに、海洋リモートセンシングがある。海洋リモートセンシングは急成長分野で、船舶運航や海洋開発に繋がりの深い海洋学、気候学、漁業等用途が幅広い。例えば、メイン州では複数の海洋情報源(衛星、リモートセンシング、気象観測所データ、海洋監視データ)を統合して統一されたデータソースを構築するため、いくつかの地域海洋観測所が計画されているが、最初に実現されるのはメイン湾海洋観測システム(GoMOOS; Gulf of Maine Ocean Observing System)である。この情報センターの最終的な所在地はまだ決まっていないが、必要なデータストレージと伝送ネットワークがあれば、どこにでも配備できるので、必ずしも海洋研究施設内に置く必要はない。
 
 Bigelow LaboratoriesやOronoにあるSchool of Marine Sciences等、メイン州のいくつかの研究機関がこのプロジェクトに協力すれば、このプロジェクトは商用開発の中核となる可能性がある。
 
 メイン州には、海洋関係だけでなく、それ以外の分野の資源管理に関しても、リモートセンシング技術の用途がたくさんある。リモートセンシングがもたらす情報に対する地域の需要は、この分野の成長に重要な役割を果たすと考えられる。
 
(3)海洋インフラストラクチャの整備
 メイン州にとって、もう1つ重要なのは、海洋インフラストラクチャの整備である。市場の関係でメイン州自体は必ずしも港湾施設に恵まれているわれではないが、同州のCianbro、Reed&Reed等の企業は、東海岸のあちこちに埠頭、ターミナル、防波堤を設計し建設している。また、海洋環境での建設に利用できる材料の種類が規制で制限されているため、新技術を積極的に追求している企業もある。
 
(支援機関及びインフラストラクチャ)
学界:University of Maine、Bigelow Laboratories、OronoのSchool of Marine Sciences
 
産業界:Bath Iron Works(造船及び技術)、Flotation Technologies of Biddeford(海洋計測機器パッケージ用商業製品)、Cianbro、Reed&Reed(埠頭、ターミナル、防波堤の設計及び建設)
 
3-5. ビジネスインキュベーター
(目的と構造)
 ビジネスインキュベーターは、事業開発の動的プロセスである。インキュベーターは、起業後まもない時期の新興企業を育み、サービスを提供して、成長させる。インキュベーションプログラムの主な目的は、新興企業の事業を成功させ、インキュベーターの手を離れても(通常2〜3年後)財務的に独立維持できるようにすることである。
 
 ビジネスインキュベーターは、通常、次のようなサービスを提供する。
・事業をカスタマイズし、その地域の信頼できる指導者から技術的な助言を得る
・ネットワークの構築を支援する
・提携及び協力の機会を提供する
・経営支援を提供する
・資金調達機会を提供する
・重要な業務または技術サポートサービスへの接触機会を提供する
 
 ベンチャーキャピタルと同様、インキュベーターも有望なクライアントを判断するために選択基準を設けている。多様な業界の企業にサービスを提供するインキュベーターもあれば、ニッチ産業専門のインキュベーターもある。
 
(実績)
 米国では、インキュベータープログラムが活発に行われている。インキュベーターの組織であるNBIA(National Business Incubator Association http://www.nbia.org)によると、北米のインキュベータープログラムは1997年には約500件であったが、2002年には950件まで増加した。現在インキュベーターが支援している企業は35,000社以上に上り、これによって82,000人分の雇用と70億ドル以上の収益が生み出されている。NBIAの情報では、インキュベーターの支援を受けた新興企業の87%はその後も事業を続けているといわれている。
 
(成功事例)
 セクション4では、ビジネスインキュベーターの成功事例も含めて、船舶・海事関連技術のケーススタディをいくつか紹介する。







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