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国際海事情報シリーズ80 天然ガスの新たな輸送方式に関する調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


3. CNG船プロジェクト
 本章ではCNG輸送分野で積極的に活動している主要な企業について、その概要を説明する。情報が公開されている限りにおいて、設計のスペック、予想船価、プロジェクトの進捗状況、対象とする航路、輸送量、安全及び環境問題、その他各プロジェクトに固有の特徴を概説する。プロジェクトによって入手できる情報量に大きなばらつきがあるが、これはプロジェクトの成熟度を反映していると言える。
 
3.1 Williams Energy社.(Coselleコンセプト)
 Wlliams Energy社は米国の大手ガス生産・配送会社である。オクラホマ州のタルサに本社を置く同社は、全長14,000マイル(約22,530km)の天然ガス・パイプラインを運営し、米国で消費される天然ガスの12%を配送している。同社の市場価値は約50億ドルである。2001年にWilliams Energy社は「Coselle」CNG貯蔵システム特許の実施権を購入した。同システムはカナダのCran & Stenning Technology社がEnron社から資金援助を受けて1990年代に開発していたものである。
 
出典:Cran & Stenning Technology
 
 Coselle貯蔵システムは、外径6.625インチ(約17cm)、壁厚さ0.25インチ(約0.635cm)のパイプを直径47〜50フィート(約14.3〜15.3m)、高さ16フィート(4.9m)の渦巻き状に巻いたものである。コイル状に巻かれたパイプの全長は約10マイル(約16km)となる。計画ではガスを275気圧に加圧し、常温で格納することになっているが、ガスの格納量を増やすために温度を-10℃に下げることも検討されている。Coselle 1ユニットあたり約300万cf(約85,000m3)のガスを格納することができる。60,000dwtのCNG船にCoselleユニットは18列、6段または8段重で積み込まれる。6段重ねの場合、一隻に108個のCoselleユニットが積み込まれ、輸送されるガスの量は3億3,000万cf(約930万m3)となる。8段重ねの場合、積み込めるCoselleユニットの数は144個に増え、4億3,000万cf(約1,200万m3)のガスを輸送することができる。Coselle設計は米国で特許を取得しており、特許番号は5,839,383及び6,003,460である。
 
Cosselle Coiled Pipe Carousel
出典:Journal of Petroleum Technology, 2003年9月号
 
 液体(液体炭化水素)を格納システムに注入することにより、ガスは送り出される。Coselleユニットの一つに液体を注入し、ガスが押し出されたら同じ液体を次のユニットに注入するというように、順番に荷揚げが行われる。Coselleユニット間はマニフォルドにより連結されており、ユニットごとに液体を注入することが可能である。ガスを送り出すのに使用された液体は貯蔵され再利用される。パイプにガスを注入する際に格納システムの圧力を一定に保つために、同じ液体が使用される。陸上ターミナルまたはオフショア・ブイを経由したガスの積み込みと荷揚げは、船側の高圧、中圧、低圧の3種類のマニフォルドを通して行われる。ガスの積込みまたは荷揚げにかかる時間は通常約18時間と考えられている。
 
 空のCoselleユニット1個の重量は約475tであり、そのうちパイプ重量が435t、コンテナ重量が40tである。輸送船は全長243m、型幅38m、型深さ26mである。設計速度は15.5kt、108個のCoselleユニットを積み込んだ場合の満載喫水は10.3mである。
 
 タグ/バージ・ユニット向けに小型の代替設計も提案されている。タグ/バージは28個のCoselleユニットを積載し、8,000〜8,500万cf(約230〜240万m3)を輸送することができる。この設計では運航速度11ktの15,700dwtタグ/バージを使用することとしている。
 
 同設計の長所のひとつは、標準サイズのライン・パイプ(石油・ガス輸送用鋼管)を使用することである。最大の短所は格納システムが巨大な重量となることである。Coselle 1ユニットあたりの重量は475tであり、一隻の格納システムの総重量は68,400tとなる。また、Coselleコンセプトには多くの問題が残っている。ガス圧、温度、重量、船舶の揺れに伴うコイルのひずみ(Stress/Strain)の問題もその一部である。また、腐食・ハイドレートの発生、スラッグ、そしてガスの積み込み、荷揚げに関連したダイナミクスの問題も今後の課題として残されている。
 
Coselle CNG船
出典:Oil Works Online
 
 プロジェクト開発者は、引合照会を出した造船所が提示した船価見積をもとにして、Coselle船の建造には1億1,000万ドルから1億2,000万ドルがかかるとしている。プロジェクト・コストとしては、船価が投資総額に占める割合は85%であり、積み込み施設が10%、荷揚げ施設が5%を占める。開発者はCoselleCNG運搬船が輸送手段として適しているいくつかのルートを特定している8
 
■Nova ScotiaとNewfoundlandのオフショア・ガス田からカナダ、米国東海岸沿いの市場への輸送
■サハリンのガスを日本、韓国、中国へ輸送
■米国メキシコ湾と北海の大水深におけるstranded gasの製品化
■北アフリカとヨーロッパ間の地中海ガス輸送
■中東とインド間のガス輸送、特にクウェートまたはイエメン産ガスの輸送
■コロンビアのMagdalenaのガスをカリブ海を通過してフロリダの市場まで輸送
■マレーシアのBaram Deltaと中国南部間のガス輸送
■アンゴラからケープ・タウンまでのアフリカ西海岸沿いガス輸送
 
 開発者によれば、設計はABSから概念について承認(Approved in principle)を受けており、DNVは同設計が少なくともその他のガス運搬船と同程度の安全性を有すると考えているという。
 
 メディアでは大きく取り上げられているものの、Coselleプロジェクトは進展を見せていない。開発者は約800〜1,000万ドルで実物大のCoselleプロトタイプを製造し、テストしたいと考えているが、現在まで投資を申し出たものはいないようである。Williams Energy社は独自で開発を進めるつもりはないように見え、パートナーを探している。
 
3.2 EnerSea Transport社(Votrans)
 ヒューストンに本社を置く、株式非公開会社であるEnerSea Transport社はCNG輸送用「容積最適化輸送システム」(Volume Optimized Tansport System: Votrans)を開発、推進している。同社の中核となっているのは元Conoco社の社員である。EnerSea社はこの概念を「実質的な航洋パイプライン」と説明している。
 
Votrans V800 CNG Carrier
Length, LOA 306.0m
Length, LBP 291.0m
Beam 50.0m
Hull Depth 27.4m
Full Load Draft 10.3m
Lightship Draft 7.5m
Capacity(lean gas) 700mmcf
Capacity(rich gas) 800mmcf
Full load displacement 120,300mt
Lightship displacement 87,900mt
Gas Cargo Weight(lean) 19,600mt
Deadweight 40,600mt
Service Speed 18knots
Crew 36
出典:EnerSea Transport
 
 Votransコンセプトでは、ガス積載能力が3億〜20億cf(約850万〜5,700万m3)の船舶を利用することとしている。現時点で事業の焦点となっていると思われるユニットはV800タイプであり、その詳細を次に概説する。全長306mのこのCNG船は、ガスの組成により幅があるが、7〜8億cf(約2,000万〜2,300万m3)を積載する能力を有する。開発者によれば、V800船は市場から2,500海里(約4,600km)以内の距離にあり、一日の生産能力が3〜5億cf(約850〜1,400万m3)のガス田向けに設計されている。このプログラムでは一日の生産能力が1.5〜7億cf(約420万〜2,000万m3)で距岸3,000海里(約5,600km)までのガス田向けに、大型から小型までいくつかのタイプが開発されている。
 
 貨物格納システムには36〜42インチ口径(約91〜107cm)の炭素鋼パイプを使用している。窒素を充填し断熱処理を施した格納システムにパイプは収納される。第一の設計では、パイプを水平に寝かせることにより格納システムを船の全長とほぼ同じ長さにしている。第二の設計では、各パイプはモジュール・コンテナにまとめられ、コンテナを連結することにより連続したパイプとして機能する。ガスは0℃〜-25℃9、140気圧で貯蔵される。EnerSea社は格納システム内の運転圧力が低いため、パイプ壁が薄いものを使用することが可能となり、その結果ペイロードあたりの重量は大幅に減少すると主張している。
 
 開発者は貨物の積み込み、荷揚げに必要なターミナル施設の設備投資は最小限ですむと考えている。EnerSea社によれば、圧力、温度についてのガス調整装置は積み込みターミナルのプラットフォーム上、またはVotrans船上に設置することができる。同社の積み込み、処理システムはガスの損失を7%以下に抑えることができるとしている。LNGではこの数字は最大20%となっている。
 
 Votrans設計の長所のひとつとして、大口径のパイプを使い低温でガスを貯蔵することにより、パイプの重量に対して収容されるガスの量が比較的大きいことが挙げられる。Votransコンセプトはまた、パイプを垂直にも水平にも搭載することができる柔軟性を備えている。欠点は、Coselleが常温輸送であるのに対して、Votransはガスを冷却貯蔵する必要がある点である。
 
 EnerSea社は韓国のHyundai社、日本のK Line社とVotransシステム開発で提携関係を結んでいる。K Line社はVotrans船を所有、運航し、Hyundai社が建造し、EnerSea社はオフショア積み込み、荷揚げターミナルを所有、運営する。この事業関係で3社がどの程度の関与を約束しているのかは明らかではない。最近、EnerSea社は大手エネルギー商社であるEntergy-Koch Trading社がVotrans CNG技術に投資し、北米の顧客向けにマーケティングを行うことに合意したと発表している。
 
Votrans Containment System
出典:EnerSea Transport
 

8 これらの潜在的市場はすべてのCNG輸送提案にほぼ共通しているため、他のCNGプロジェクトの説明では割愛する。
9 公表された資料では両方の数字が使われている。







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