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国際海事情報シリーズ80 天然ガスの新たな輸送方式に関する調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


5.4 洋上天然ガス処理施設の問題点(浮体LNG施設)
 CNG輸送と同様に、石油/ガス田上でFPSOコンビネーションを使って石油とLNGの両方を生産するというコンセプトの前にも複数の障害が立ちはだかっている。プロジェクト・コスト、併用型FPSO上のデッキスペースに収まるようにLNG施設の床面積の削減、LNGの洋上積み込みと適切な特化市場を見つけることに関連したオペレーション上の問題点である。
 
 プロジェクト・コスト―先に説明したように、Shellは石油のみのFPSOにLNG生産能力を付け加えると生産ユニットのコストが20%上昇するとしている。現在西アフリカ沖向けに建造されているBongaやKizombaのような大型FPSOのコストは7〜8億ドルであるので、Shellが主張する通りに、コストが20%上昇するとして、LNG生産、貯蔵、出荷能力を追加すると、生産ユニットのコストは1億4,000万〜1億6,000万ドル上昇する。1億4,000万〜1億6,000万ドルのコストが追加されるだけならば、FPSO上にLNG施設を設置することには十分な意味がある。しかし、追加コストがこれよりも大幅に高くなるとすれば、経済性はそれほど魅力的なものではなくなる。そして、コスト増加分が20%を超えることは十分あり得ると考えられる。
 
 LNG施設の床面積の削減―Shellは浮体式生産プラットフォーム上に収まるようにLNG技術を小型化することに大きな努力を費やしてきた。同社はこのコンセプトに少なくとも15年を費やしており、先に述べたように、同社の努力は液化に必要な機材の30%削減という実を結んでいる。しかし、石油処理施設も並べて搭載するFPSOの船体に収まるサイズのLNG生産モジュールを設計する上で、この程度の小規模化で十分であろうか? Shellは400m×70m×36mの石油/LNGコンビネーション・フローターの概念設計を出しているが、このサイズのユニット上に、石油とLNG処理施設と機材、両製品の貯蔵スペースが収容しきれるかは疑問である。
 
 比較のために、昨年ナミビア沖向けにShellが提案した浮体式LNGプラントは514m×70m×36mであった。さらに、LNGプラントは軽いものではない。Fluor Corporationは一日に400万cf(約11万m3)の天然ガスを扱う浮体式LNGプラントの上部構造物の重量は33,600tとなると推定している。
 
 オペレーション上の問題―洋上でLNGの積み出しを行うことに伴う数多くの問題が存在する。Shellは生産ユニットからLNG船への横付け積み出しを計画している。その場合、年間の積み出し可能期間が制限される可能性がある。西アフリカのような穏やかな海況の海域では問題とはならないかもしれないが、海象により積み出しができなくなるような他の海域では大きな問題となる。横づけ積み出しシステムに代えて、またはそれに加えてタンデム積み出しシステムを搭載することで厳しい海況での積み出しを処理することができるかもしれないが、しかし、二重の積み出しシステムを搭載することはコスト増につながり、また、LNG積み出しシステムが生産ユニットの石油積み出しシステムとどのように影響し合うかも不明である。石油とLNGの積み出しが重なることにより、生産ユニット周囲の船舶の運航問題が持ち上がるかもしれない。
 
 適切な特化市場を見つけること―FONGコンセプトは、大量の随伴ガスを再圧入する必要があるが、ガスの生産量がパイプラインや洋上LNG専用プラント設置を支えるだけの量に満たない隙間市場をターゲットとしている。このような隙間市場は存在するのだろうか。おそらくメキシコ湾や北海には存在しない。これらの海域で生産されたガスは陸上にパイプライン輸送することが可能である。西アフリカ沖、東南アジア、ブラジル沖にはFONGシステム導入の可能性があるかもしれない。しかし、この市場は意外に小さいのではないだろうか。
 
5.5 洋上天然ガス処理施設の問題点(GTL生産施設)
 石油/GTLコンビネーションFPSOを利用して随伴ガスを商品化するというIzarのコンセプトは開発のごく初期の、アイデアの段階である。FPSO上に収まるほど床面積の小さいGTLプラントが経済的に実現可能かどうか判断するためには、相当な作業が必要である。このような小規模プラントの設計が可能だとしても、さらに、5.3項に挙げたハードルを越える必要がある。
 
5.6 プロジェクト実現の可能性の評価のまとめ
 全般に、市況から新たに多様なガス関連プロジェクトを実施する機会が開かれていることは確かだと考える。ガス需要は増大しており、価格は高い水準で今後も推移すると考えられる。そのため、今まで再圧入されていたり、無視されていたガスを商品化する新たなプロジェクトヘの投資のインセンティブとなる。
 
 実現の見込みとしては、既存の船体、そしておそらく複合素材パイプ技術を利用した小型の比較的コストの低いCNG輸送プロジェクト、Trans OceanまたCNG Solutionsのコンセプトのものが今後進展の可能性が最も高いと考えられる。Knutsen PNGプロジェクトも、同社がシャトル・タンカー事業に通じており、ガス出荷から恩恵を受ける顧客との関係をすでに築いていることから、他のプロジェクトよりも多少は期待できる。TransCanadaのコンセプトも、特に河川での利用は期待が持てる。EnerSeaとWilliamsの設計はプロジェクトの実質以上に関心をひきつけているように思える。
 
 ShellのFONGコンセプトは同社が小型LNGプラントを開発しており、自社ガス田向けに発注することができることを考慮すると、比較的実現の可能性は高い。Shellは出荷ガスについて社外の顧客を必要としないし、海象が穏やかな西アフリカ沖であれば、オペレーション等の問題も比較的少ないと考えられる。
 
 しかしながら、随伴ガスをCNG輸送または両用FPSOでの洋上液化/GTIL生産により商品化するためには大きなハードルが立ちはだかっている。先に指摘したハードルをどの程度乗り越えることができるかは、今後の課題である。
 
まとめ
 第1章において天然ガスの需要と輸送の動向についてまとめた。
 世界的にエネルギー源としての天然ガスの需要は今後大幅に増加することが予想されている。しかしながら、現在利用されている多くのガス田生産量が飛躍的に増大することは見込まれていない。このため、新たなガス田の発見と開発が必要となってくる。さらに、適切な輸送手段がなかったために、開発されていないガス田、これまで焼却処分されていた原油とともに産出する随伴ガスを活用することが考えられている。
 このようなニーズを満たすため、CNGを初めとする新たなガス輸送コンセプトに関心が集まっている。
 
 第2章においては、ガス輸送手段の概観をまとめた。
 実用化されているパイプライン方式、LNG方式に加え、これまで提案されているCNG船輸送、ハイドレート変換による輸送、天然ガスのメタノール化、電力への転換といったオプションの概観を説明した。実用化されているパイプラインについては技術の進歩とともに、大水深域等の難易度の高い場所でも利用可能となっている。またコストについてもパイプライン、LNGについては相当程度、低廉化が進行している。
 それ以外の技術については実験段階、あるいは概念設計段階にあり、実証段階実験を行うまでには至っていない。天然ガス液体燃料化については実験プラントも稼動しているが、現在のところ、大型実用プロジェクトに結びつくとは考えられていない。
 
 第3章においては、CNG輸送分野で積極的に活動しているプロジェクトについてその概要を説明した。
 常温に近い状態の天然ガスを高圧で貯蔵して輸送するCNG船は既存の要素技術を多く活用できる点で未知の部分が少なく技術的には有利ではあるが、金属製容器を利用したシステムの重量が輸送するガスの量と比較して巨大になるという短所のあるプロジェクトが多い。他方、強化複合素材を利用してこの課題を克服するシステムも提案されているが、この技術については、金属製容器を利用する場合と異なり、技術的に実証されていないという問題が生じる。
 
 第4章においては、大型浮体式の天然ガス処理施設について説明した。
 陸上までのパイプライン輸送が経済的でない海洋ガス田の開発のために、大型浮体式の石油/LNG生産施設、LNG生産施設、石油/液体燃料化施設の構想が提案されている。陸上施設としては実用化されていても、洋上に設置するために解決する課題も多く残されており、かつ建設費が莫大になると予想されることから現時点では、実行段階にあるものはない。
 
 第5章では、第3章、第4章で説明したプロジェクトの実現可能性について言及している。
 最近の天然ガス市況が堅調に推葎していること及び新たな供給源の開発が必要であるという中期的な見通しを考えると、これまで輸送上の問題で開発されていないガスでの活用あるいは今まで再圧入または焼却していたガスの商品化といったインセンティブが働くと考えられるため、CNG輸送、浮体式天然ガス処理施設に対する投資が経済的に実施可能なものになりつつあるといえる。
 CNG輸送のプロジェクトについては、低コストで実現可能と考えられる既存の船体に複合素材製の容器を搭載した実験的プロジェクトが今後、進展の可能性が最も高いと考えられる。また浮体式天然ガス処理施設では、Shell社のプロジェクトが進展の可能性が高いと考えられる。
 しかしながら、新規技術の立ち上げに際しては、パイプライン、LNGといった既存技術との価格競争も考慮せねばならず、CNG輸送、浮体式天然ガス処理施設のいずれにも克服すべき課題は多い。







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