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国際海事情報シリーズ83 太平洋諸国(オセアニア諸国)における新規造船需要と経済協力に関する調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


5-4. 海上輸送産業
 船舶はマーシャル諸島の主要地域と外側の環礁を結ぶ、基本的な輸送形態である。国内の船籍には69フィートから150フィートの船17隻が登録されている。これらの船は、国有あるいは民間企業が所有するもので、国内ルートのみに使用されている。
 
 マーシャル諸島政府は現在、以下の4隻の貨物船/客船を所有、運行している。
 
(1)2隻の小型船:長さ90フィート、190GRT。30人の乗客と約30tの貨物輸送が可能
(2)2隻の大型船:長さ150フィート、500GRT。90人の乗客と200tの貨物輸送が可能
 
 2隻の大型船と小型船の内の1隻は、もともと1970年代に日本で建造され、ごく最近マーシャル諸島に持ち込まれた。もう1隻の小型船は米国で建造されたものである。
 
 首都や主要港であるマジュロからの往路貨物には肉の缶詰、米、加工製品、及び燃料が含まれ、そのほとんどすべてが輸入品である。マジュロ行きの主な貨物はコプラである。2002年に合計4,168トンが、離島からマジュロのトロバー・コプラ加工管理局(Tolobar Copra Processing Authority)に出荷された。国有貨物船は総額の54%、すなわち2,251トンのコプラを輸送した。
 
 国有船はマジュロから外側の環礁まで1年に約6回の航行を行っているが、定期便はなく、これらの船舶の運行にかかるコストはますます増大し、経済的な負担が高まっている。1隻の船は数カ月前に海から引き揚げられ、現在乾ドックに入渠している。
 
 民有のマジュロをベースとする海運・貿易商社、パシフィック・インターナショナル社(Pacific International Inc(PII))もまた島間の海上輸送サービスを提供している。同社は、1999年に42m(285GRT)の客船/貨物船「Mercy K」(貨物や乗客を運ぶために改造された浚渫船)を購入し、以来、近隣地域で最も大型の上陸用舟艇スタイルの船「Deborah K」とともに使用してきた。
 
 「Mercy K」の運行は完全統合されており、行きは離島で販売する貨物を輸送し、帰りは乾燥コプラを購入してマジュロに戻る。2002年に、PII社はマーシャル諸島のコプラの46%、あるいは1,917トンをマジュロに輸送した。「Mercy K」は60人の乗客を運ぶことができ、1人あたりの片道旅客運賃は平均20米ドルである。この船は、隔月で運航されている国有船でカバーしきれていない離島への乗客/貨物輸送の需要を補うものである。
 
 「Deborah K」上陸用舟艇は、貨物や建設資材を近くの離島に輸送するために使用されている。またPII社はマジュロで2台の引船を運行している。
 
 ウォッジェ環礁の地方自治体は、台湾や日本から資金援助を受け、ハワイから60フィートの船を購入した。これはスイカやかぼちゃをマジュロに輸送するためである。さらに現在、マジュロの実業家数人がコプラの集約と輸入品の販売のために、近くのアルノ環礁まで小型ボートを運行している。
 
5-5. 海事産業
 マーシャル諸島には造船施設が存在しない。現地の企業数社が小規模な修理を引き受けており、舶用機器の整備点検の手間を省いている。
 
 大規模な船のオーバー・ホールはハワイや日本またはフィジーの施設で行われている。運輸通信省が所有する乾ドックは老朽化と貧弱な管理のため、3分の1が稼動しているのみである。運輸通信省は最近、パシフィック・インターナショナル社に乾ドックの管理を依頼し、今後の稼働率が高まることが予想される。
 
 マーシャル諸島で運行されている唯一の国内クルーズ船が「MV Oleanda」である。1967年に建造された、長さ40mのこの船はパシフィック・インターナショナル社とロンゲラプ環礁の地方自治体が共有している。以前フィジー、トンガ、及びニュージーランドで使用されていた「MV Oleanda」は、2003年3月にマーシャル諸島共和国に到着し、現在はロンゲラプ環礁の離島へのダイビングツアー用として使用されている。
 
 この船は冷房の完備した浴室施設つき船室15室に最大34人の乗客を乗せることができ、レストランやバーもある。この船は5泊6日のダイビングツアーを取り扱っている。「MV Oleanda」クルーズツアーの販売は米国市場向けには成功しているが、PII社は船を改修し、日本の観光局の協力を得て日本のダイビングツアー市場に参入することを希望している。
 
 海洋資源局はマーシャル諸島の漁業航海訓練センターを経営している。同センターは、船舶部員が国際的な認定基準(STZW95)に取得するための訓練も盛り込んでいる。ニュージーランドの専門家による船舶の修理と整備に関する短期講習が「需要」に応じて行われている。また、訓練生は船舶修繕の研修を日本で受けている。
 
5-6. 港湾設備
 首都マジュロには国内船用と国際船用の2つの港がある。国内運行用の波止場は長さ400フィート、着岸時の水深が7mである。この波止場は、国有及び民有の貨物船/乗客船と漁船が使用している。長さ1,000フィート、着岸時の水深が11mの国際船用の波止場には、近くに倉庫と大型の貨物用コンテナヤードがある。これらの施設は、太平洋諸島の各港に向けて輸送する貨物の積み替え地としてマジュロを使用するよう、海運業者を誘致するように設計されたものである。
 
 アバイの米国海軍基地には、米国海軍との覚書調印により管理されている国際貿易港があるが、この条件については現在見直しが行われている。アバイ港の拡張された乾ドックと冷蔵コンテナ置場を有する新しい波止場は、十分活用されていない。
 
 離島では、マーシャル諸島資源開発省(MIMMR)が、アルノ環礁、リキエップ環礁、アイリングラプラプ環礁、ナム環礁、アウル環礁で、一部桟橋かはしけを有する(10年間、国際協力事業団から資金が供給された)漁業施設の管理を行っている。モロエラップ環礁にはまもなく新しい施設が建設されることになっている。施設は環礁によって異なるが、冷蔵倉庫やオフィス、及び設備販売店からなるビルが含まれている。上記の環礁のうち4箇所にはマジュロやアバイへ地元で捕獲された魚を運ぶための小型ボート用の桟橋があり、地元の漁師が使用する小型の桟橋があるところもある。
 
 MIMMRが所有している桟橋やはしけを除くと、外側の環礁では一般的に乗客の乗船、下船や荷物の積み下ろしのための桟橋も海岸の傾斜路も装備されていない。しかし、ビキニ環礁やエネウェタク環礁、及びロンゲラプ環礁では、これら環礁のリハビリテーションと1940年代後半及び1950年代前半にこれらの島で核兵器のテストが行われていた時期に移動させられた元居住者やその子孫の移住に向けて、多くの施設が新しく建設されてきた。また戦時の桟橋や水上飛行機用の傾斜路で使用可能なものもあれば、修理によって再使用できるものがいくつかある。
 
5-7. 経済協力の現状
 マーシャル諸島もミクロネシア連邦と同様、米国との自由連合盟約(Compact of Free Association)の下で、防衛、安全保障については米国が権限と責任を有する。マーシャル諸島の経済は、伝統的自給経済と貨幣経済が混在しており、農業(コプラ)と漁業を除き見るべき産業は存在していないため、自由連合盟約下での米国からの資金援助及び基地関連収入に依存している。同援助が継続する自由連合盟約期間(86年から15年間)の間に経済的自立を達成することを最大の目標に置いているが、国家予算の半分以上を依然米国の援助に頼っているのが現状である。米国からの援助は2023年まで継続されることになったが、米国からの援助に変わるものとして、マーシャル諸島政府は、マーシャル諸島世代間信託基金(Marshall Islands Intergenerational Trust Fund: MIITF)を設立した。
 
 二国間援助では、上記のように米国との自由連合盟約があるため、米国が最大の供与国で、2000〜2001年の平均供与額は5,290万ドルとなっている。その他、日本が道路や漁業関連の援助や離島の小規模なインフラプロジェクト等を行っている。
 
 多国間援助では、アジア開発銀行が最大の援助元となっている。海運関係では、2002年に、アジア開発銀行が、離島環礁への輸送インフラプロジェクトに対して、7億USドルの借款と25万USドルの技術援助を実施することを決めた。プロジェクトの内容は、離島の港湾インフラ(波止場、桟橋等)の改善、航海機器の整備、貨物動向のモニタリング、貨物用倉庫の整備、滑走路の拡張とメインテナンス等である。
 
図9. マーシャル諸島への国際援助
Marshall Islands
 
Receipts 1999 2000 2001
Net ODA (USD million) 63 57 74
Bilateral share (gross ODA) 93% 82% 91%
Net ODA / GNI 55.2% 50.2% 63.8%
Net Private flows (USD million) 56 -3 -
 
For reference 1999 2000 2001
Population (million) 0.05 0.05 0.05
GNI per capita (Atlas USD) - 2190 2190
 
Top Ten Donors of gross ODA (2000-01 average) [USD m]
1 UNITED STATES 52.9
2 AS.D B SPECIAL FUNDS 8.0
3 JAPAN 3.7
4 AUSTRALIA 0.6
5 UNTA 0.2
6 NEW ZEALAND 0.1
7 UNDP 0.1
8 UNFPA 0.1
9 GERMANY 0.0
 
Bilateral ODA by Sector (2000-01)
Sources: OECD, World Bank.
出所:OECDウェブサイト
 
5-8. 日本からの経済協力の現状
 マーシャル諸島は日本の水産業界と密接な関係にあり、経済的自立の達成に向けて日本からの援助への期待感が高い。これまで、水産、運輸、教育分野での無償資金協力を実施し、また、幅広い分野での研修員受入れを中心として、青年海外協力隊の派遣等の技術協力を行っている。97年度から実施した無償資金協力「マジュロ環礁道路整備計画」においては、首都マジュロの主要道路のアスファルト舗装の部分改修及び排水溝や歩道の建設を行った。2003年からは「マジュロ病院整備計画」を行っている。
 
図10. マーシャル諸島への援助額推移
出所:ODA白書
 
5-9. 日本の経済協力の可能性
 マーシャル諸島の海運産業には日本の経済協力が可能な分野がいくつかある。
 
(1)小型桟橋の長さ延長
 日本政府は、離島の選定した小型桟橋の長さを延長するための財政的支援、技術支援の提供について検討することができる。これはアジア開発銀行港湾開発プロジェクトに含まれていないが、より大型の船、特に国有の貨物船/客船を取扱うことのできる長い桟橋がいくつかの地域で緊急に必要とされている。
(2)主要コプラ流通センターにおける倉庫及び集約施設の提供
 離島では乾燥コプラを保管する倉庫施設が不足しているため、日本政府は主要なコプラ流通センターにおける倉庫及び集約施設の提供を検討することもできる。またこのプロジェクトには、コプラ栽培者による乾燥コプラ50k入袋の集約ポイントまでの輸送を援助するため、亜鉛メッキ鋼製あるいはアルミニウム製カートを供給することも考えられる。
(3)マジュロの乾ドックの改良
 マジュロの乾ドックは改良を必要としており、日本政府の支援対象としてふさわしいプロジェクトと言える。マーシャル諸島の国際船籍に登録された船舶数の増加に伴い、大型船を扱うために施設を拡大する必要も発生するであろう。また、マーシャル諸島の領海では外国漁船が多数運行しており、約100万USドルの中古の浮き乾ドックを日本が供給することは理にかなっていると思われる。現在のマーシャル諸島の漁船は2年毎にハワイ、日本、韓国、及びオーストラリアに行っているが、このコストは近年大幅に増加している。
(4)漁業船舶研修センターに対する船舶修繕及び整備点検訓練所協力
 マーシャル諸島海洋資源局によって経営されている漁業船舶研修センターには、船舶修繕及び整備点検に関する訓練所を設立することも可能である。日本がこれに対する援助を提供することができれば、この訓練所は国内及び他の太平洋諸国の企業に対してトレーニングを提供することができるであろう。
 
(マジュロの乾ドック)
 
(5)クルーズ/ダイビング船「MV Oleanda」の船室改修
 「MV Oleanda」は日本のダイビング旅行市場に参入するため、日本の旅行者に受け入れられるよう、船室の改修を必要としている。船の所有者は日本の政府機関との協力関係について話し合いたいという意向を示している。
 
(MV Oleanda: ダイバー客がいないときは、環礁内のナイトクルーズ船として利用)







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