2004/12/04 朝日新聞朝刊
決議案、来春にも提出 常任理拡大の国連憲章改正 日本など4カ国
国連改革を検討するハイレベル諮問委員会の最終答申を受け、安保理常任理事国入りを目指す政府は3日、来春にも国連憲章の改正決議案を提出する方針を固めた。日本、ドイツ、インド、ブラジル4カ国の共同提出によって、来年9月に開かれる国連ミレニアム宣言に関する首脳会合の前後で採択されるように各国に働きかける方針だ。ただ、米国や中国など現在の常任理事国(P5)からの支持の取り付けという難問が控えており、実現までの道のりは険しい。(6面に関係記事)
アナン事務総長は最終答申とともに書簡を各国に送り、「加盟国が05年に結論に達することを望む」と求めた。事務総長は最終答申を踏まえた改革案を来年3月に報告する予定。政府はその内容を見極めて改正決議案を出す考えだ。
日本、ドイツ、インド、ブラジルの4カ国は、常任理事国入りで相互支持をして共同歩調をとることを確認しており、国連では「G(グループ)4」と呼ばれている。共同決議案の内容は、安保理の常任、非常任両方の枠を拡大することを基本に(1)具体的な国名を入れる案(2)国名を入れずに増加枠数だけを示し、地域別に国連への貢献度を基準に選ぶとする案――など、複数案が検討されている。米などP5に配慮して拒否権の付与は必ずしも求めない方針だ。
決議案の内容や出すタイミングについて政府関係者は、「今後の活動でどれだけの支持が得られるかで変わってくる。アナン報告が出た後、来年3月から9月の首脳会合までが勝負どころ」と言う。
外務省はまず、加盟191カ国のうち53カ国を占めるアフリカ地域を年末年始に外務省の政務官3人が歴訪して支持固めを狙う。外務省は3日、省内で「国連強化対策本部」(本部長・町村外相)の会合を開き、来年3月から開かれる愛知万博(愛・地球博)への外国要人の来訪など、あらゆる機会をとらえて支持を呼びかけることを確認した。
総会で採択されても、改正が発効するには、すべての常任理事国を含む3分の2以上の加盟国の批准が必要となる。最も影響力の強い米国は、「イラク戦争で対立したドイツの常任理入りには消極的」(外務省幹部)。中国も、アジアで常任理事国が増えることに警戒感があり、小泉首相の靖国神社参拝問題もあって日本の常任理事国入りには慎重姿勢だ。
ハイレベル諮問委員会メンバーの緒方貞子・国際協力機構(JICA)理事長は3日、自民党外交合同部会で「日本は成績では常任理事国の最高の候補者だ。ただ、成績がいいと必ず入るということではない」と、今後のかけひきが難しいとの見方を示した。
◇キーワード
<ハイレベル諮問委員会の安保理改革案>
国連のアナン事務総長のハイレベル諮問委員会(議長・アナン元タイ首相)が11月30日に公表した最終答申に盛られた。安保理改革について(A)新しい常任理事国6カ国と非常任理事国3カ国を追加(B)4年任期で再選可能な準常任理事国8カ国の新設――の2案を提示。両案ともアフリカ、アジア大洋州、欧州、米州の四つの地域枠を設け、各地域で(1)国連分担金(2)任意拠出金(3)国連平和維持活動(PKO)の3分野で上位3国を優先的に選出する。いずれも拒否権は付与されない。
A案の新常任理事国6カ国の地域配分は、アジア大洋州とアフリカにそれぞれ2カ国、欧州と米州にそれぞれ1カ国。答申を参考にアナン事務総長は、3月に改革案を国連加盟国に報告する。
■国連改革の流れと主な日程
04年
12月8日 国連総会で最終答申についての質疑
05年
1月 日本が安保理非常任理事国に
3月 アナン国連事務総長が改革案を報告
? 国連憲章改正決議案を提出
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<採択> <不採択>
↓
加盟国の3分の2以上が賛成
↓
すべての常任理事国を含む加盟国3分の2以上が批准
↓
発効
9月 国連ミレニアム宣言に関する首脳会合
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