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平成17年度 セキュリティ強化の環境下における貿易手続簡易化特別委員会報告書

 事業名 セキュリティ強化に伴う貿易手続簡易化措置に関する調査研究
 団体名 日本貿易関係手続簡易化協会  


はしがき
1. 平成17年度事業計画として、当特別委員会はセキュリティ強化の環境下における貿易手続簡易化措置の調査研究に取組み、8回の会合と「セキュリティ強化と貿易手続簡易化」セミナー(平成17年11月21日)を開催しました。
 
2. 2001年9月11日の米国における同時多発テロ事件を契機として、世界規模でセキュリティ強化の要請が高まり、貿易手続においても既に導入された措置を含め、今後、さらに多様な強化措置が講じられようとしています。米国では、サプライチェーンの安全確保と円滑化の目的を達成するため、国境・輸送セキュリティ政策の下で、電子方式によるマニフェスト提出に関する船積24時間前ルール、コンテナ・セキュリティ・イニシアティブ(CSI)、C-TPATイニシアティブなどの措置が実施されています。また、EUにおいても、近代化された改正関税法の下で、電子方式による船積24時間前ルールが導入されるようです。世界税関機構(WCO)が2005年6月の総会で採択した「国際貿易の安全確保及び円滑化のための基準の枠組み」には、米国の船積24時間前ルール、CSIおよびC-TPATの概念が取り入れられているとも言えますし、また、EUの改正関税法はWCOの「基準の枠組み」に基づいていると思われます。WCOの「基準の枠組み」については、我が国を含め、約100の加盟国が実施の意図を表明しており、各加盟国は「基準の枠組み」実施のタイムテーブルや実施の進捗状況をWCOに提出することになっています。国連CEFACTのフォーラムでも、貿易手続簡易化とセキュリティ強化の連結がグローバル貿易における新しい課題であると指摘する発言や、国際社会が多角的に協力して、この両者の統合を達成するために努力しなければならないことを強調する意見がありました。セキュリティ強化と貿易手続簡易化の統合の過程において、これまでの貿易取引慣行が変更されることが考えられます。
 
3. 国連CEFACTやWCOのほか、世界貿易機関(WTO)、国際海事機構(IMO)、国際標準化機構(ISO)等においてもセキュリティに関するプロジェクトへの取組みが進められています。計画されているセキュリティ強化措置としては、改正SOLAS条約に基づく船舶及び港湾施設に関する保安計画の実施、税関手続の標準化に関するG7イニシアティブ、UCR(単一貨物識別符号)、電子タグ(RFID)の導入、スマート・コンテナの開発などが挙げられます。改正SOLAS条約に基づく保安計画の実施を除いて、これらのプロジェクトは運用次第で物流迅速化ないし効率化の効果も期待できますが、同時に遅延発生ないしコスト増加を懸念させる措置でもあります。
 
4. 例えば、米国向け貨物に適用される船積み24時間前ルールは、輸出者(メーカー、商社など)や運送人(船会社、NVOCCなど)にさまざまな影響を与えています。まず輸出者にとって、これまでコンテナヤードへのコンテナ搬入期限は本船入港日の前日であったのが、米国、カナダ向けのコンテナ貨物は本船入港の3日前に前倒しとなっています。コンテナ詰から船積までのリードタイムの延長に伴い、輸出者は在庫を保有する必要性が生じ、これに伴う金利負担等の経済的影響に加え、サプライチェーン・マネジメントへの影響も生じています。上記のように、船積24時間前ルールが世界的に拡大されることは時間の問題であり、将来的に輸出者への影響はさらに大きくなることが懸念されます。リードタイムの延長、物流の停滞等を防止する観点から関係省庁、関係経済団体の協議による「安全かつ効率的な国際物流の実現のための施策パッケージ」が取りまとめられ、2005年3月に公表されています。
 
5. 次に船会社にとっては、これまでコンテナ船の米国到着48時間前に、仕向港で陸揚げする貨物のマニフェストを税関に提出してきましたが、これに加えて米国向け貨物のマニフェストを船積み24時間前に提出することが運送人の義務となり、これらの情報をすべて電子方式で税関(CBP)に送信しなければならなくなったので、事務処理手順の変更を余儀なくされています。また、EUにおいて船積み24時間前ルールが実施される場合、欧州航路も、コンテナ搬入締切日を本船入港3日前にせざるを得なくなると考えられますが、船会社にとっては短期間に処理するデータの量がさらに増えるので、時間内に適正に処理することが大きな課題になります。日本においてもマニフェスト情報を含む入港関係書類の事前報告(原則として本船入港24時間前)を義務化する方向で関税法が改正される予定です。日本が欧米諸国に同調、協力してテロ対策を進めるのであれば、貿易・港湾手続関係のシステム化が必須であり、電子方式による情報提出の義務化が必要であると思われます。
 
6. わが国の国際物流におけるセキュリティ強化の課題として、諸外国と協力して、輸入貨物の電子マニフェスト情報を事前に把握・分析するための措置を検討する必要があります。また、改正SOLAS条約に基づくISPSコードや、コンプライアンスガイドライン等をふまえ、船舶、港湾施設その他の物流施設におけるセキュリティ対策の強化を図る必要があります。米国におけるC-TPATのように、国際物流の安全確保と円滑化のために、官民の協力が必要です。さらに、国際海上コンテナ輸送のセキュリティ強化のために、外航船舶運航事業者、港湾運送事業者、その他の関連事業者が、それぞれ自主的に、社内体制の整備、社員の能力向上、設備・機器等の整備、他の事業者との連携のあり方などに取組むセキュリティ基準を定める必要があります。国際海上コンテナの陸上輸送(ターミナルにおける蔵置、積み替えを含めて)のセキュリティ強化にも取組む必要があり、これには、EDIおよび電子タグ利用によるそれぞれの事業者間のコンテナ情報の共有のあり方等が含まれます。
 
7. わが国では通関情報処理システム(NACCS)、税関手続と他省庁システムとのインタフェース化、輸出入・港湾関係手続のワンストップサービス(シングルウィンドウ化)などがすでに実施されておりますが、諸外国における輸出入・港湾手続等に関する電子申請の原則化の動向を踏まえ、わが国でも電子申請の原則化を実施する場合に必要な環境整備が急務と考えられます。国際コンテナ物流においては、荷主、船会社、船舶代理店、コンテナターミナル、海貨・通関業者、陸運、検数・検量業者など多くの関係者間で、各種手続や書類の授受、情報交換、貨物の受渡・輸送が行われており、物流の効率化を図るためには、これらの事業者間での情報の伝達を可能な限り電子化し、関係者間で情報の共有化が強く望まれます。グローバルサプライチェーンにおけるコンテナ貨物の円滑な流れとリスク・マネジメントを効果的に実施するためには、サプライチェーンの各箇所でコンテナおよび貨物の情報をリアルタイムで把握し、異常事態が発生した場合に、迅速かつ的確に対応することが必要です。このために、諸外国などの動向を踏まえながら、EDIや電子タグなどの国際コンテナ物流への活用を検討することが重要になっています。欧米の例にみられるように、輸出入・港湾関係手続の完全な電子化はセキュリティ強化と貿易手続簡易化の連結を達成するために不可欠な要因です。
 
8. 本報告書に収録されている調査研究成果が、貿易・港湾関係業界に些かなりとも寄与することがあれば幸甚です。終わりになりましたが、日常業務に忙殺されているにもかかわらず、本特別委員会の委員、オブザーバー及び事務局の方々が、委員会の運営、資料の収集・作成、報告書の執筆などに献身的にご協力下さいましたことに対して心から感謝申し上げます。
 
平成18年3月
 
(財)日本貿易関係手続簡易化協会
セキュリティ強化の環境下における
貿易手続簡易化特別委員会
委員長 朝岡 良平
 
平成17年度 セキュリティ強化の環境下における貿易手続簡易化特別委員会
委員名簿
委員長 朝岡 良平 早稲田大学名誉教授
委員 鬼頭 吉雄 (財)港湾空間高度化環境研究センター 専門部長
委員 佐野 勝俊 日本海運貨物取扱業会 常務理事
委員 佐野 久 三菱商事(株)物流サービス本部付関税担当
 主席マネージャー
委員 杉山 伸幸 (株)MOL JAPAN
 業務グループ グループリーダー
委員 中垣 俊平 日本電気(株)e-Japan戦略推進部 エキスパート
委員 吉田 理人 (株)損害保険ジャパン 企業商品業務部
 貨物保険グループ 課長代理
委員 吉本 隆一 (社)日本ロジスティクス システム協会
 JILS総合研究所 主幹研究員
オブザーバー 後藤 学 財務省 関税局業務課 調整係長
オブザーバー 小林 革二 経済産業省 貿易経済協力局 貿易管理課 課長補佐
オブザーバー 長谷川清次 国土交通省 総合政策局情報管理部 情報企画課
 情報セキュリティ対策企画官
オブザーバー 伊東 健治 (財)日本貿易関係手続簡易化協会 理事
事務局 治田 彰 (財)日本貿易関係手続簡易化協会 専務理事
事務局 富永 悦夫 (財)日本貿易関係手続簡易化協会 常務理事
事務局 浜辺東一郎 (財)日本貿易関係手続簡易化協会 業務第二部長
事務局 能勢 道治 (財)日本貿易関係手続簡易化協会 業務第三部長


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