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平成17年度 セキュリティ強化の環境下における貿易手続簡易化特別委員会報告書

 事業名 セキュリティ強化に伴う貿易手続簡易化措置に関する調査研究
 団体名 日本貿易関係手続簡易化協会  


2.2 船社の対応
2.2.1 船社の事務処理手順等
 2002年12月2日、米国関税局(現在のCBP = U.S. Customs and Border Protection)は、海上コンテナのテロ対策であるCSI( = Container Security Initiative)を補完する目的で、24時間ルールを施行致しました。これは米国に寄港する各船社に対し、米国外の各港で米国向け貨物が積まれる24時間前までに、AMS( = Automated Manifest System: 米国自動通関システム)を通じ、税関の電子書式(現CBP Form 1302)で積荷目録の情報を送信するよう義務付けたものです。
 
 従来、船社は、本船入港前(コンテナ船の場合、通常48時間前)に、各揚港で揚荷の積荷目録(現CBP Form 3171)を税関に提出し、コンテナを陸揚げしていましたが、これに加え24時間ルールでは積み込み前に積地毎の積荷目録の提出を義務付けられたものです。本ルールの施行により、船社は積み込み前の作業が増加しただけでなく、米国税関に積荷目録の情報を全て電子的に送信しなければならない等、事務処理手順もかなりの変更を余儀なくされました。
 
 原油や鉱石・金属等のBulk Cargoについては、24時間ルールから免責されていますが、自動車やパレッタイズされた貨物等のCBPによりBreak Bulk Cargoとして規定されているものは、コンテナ貨物と同様に24時間ルールの対象となります。但し、Break Bulk Cargoについては、事前に荷主や貨物の明細をCBPに申請1 し、CBPの審査をパスすれば、本ルールから免責されます。また、米国向けの貨物だけでなく、本船が米国の港に寄港した際に、米国向け以外の貨物(FROB=foreign remaining on board)が積載されていれば、その貨物も24時間ルールの対象となります。
 
 24時間前の積荷目録の送信は、NVOCCのHouse B/Lにも適用され、NVOCCは自社の B/L情報をCo-loader分も含めて、船社経由CBPに送信することが義務付けられています。CBP Type 2-Custodian Bondを取得しているNVOCCについては、自社B/Lの情報を直接CBPに送ってもいいことになっていますが、今のところ直接税関に送付している日本のNVOCCは限られており、House B/Lの情報もかなりの部分が船社経由送信されているようです。
 
 24時間ルールに伴うコンテナ船の情報の流れについて、以下具体的に説明します。尚、24時間ルールは米国のほか、カナダでも施行されておりますが、カナダのルールは米国とほぼ同じなので、ここでは北米の例で説明します。
 
 日本の船社は通常海貨業者を通じて出荷主からの積荷の情報を入手しますが、海貨業者は従来の慣行からD/R( = Dock Receipt: 貨物受取証)2 のフォームで船社に情報を送付しています。
 
 船社はD/Rのフォームで送られてきた情報を自社のシステムに入力の上、B/Lを発行しますが、近年EDIによるD/R情報の送信が徐々に増えており、1986年4月に発足したSHIPNETS(現在のPOLINET=Port Logistics Information Network)や1999年10月から稼動したSeaNACCSのACL(船積確認事項登録)を利用した送信は、現在40%を超えたところです。
 
 船社は海貨業者から送られるD/R情報、並びにCLP( = Container Load Plan)を基にB/L及び積荷目録を作成しますが、24時間ルールでは、実際の荷主名、貨物の正確な名称、コンテナのシール番号等、従来B/Lに明記しなくてもよかった情報3を求められているため、D/R上に記載されている受荷主が “to order”の場合や、貨物が“general cargo”等の一般的な名前で表記されているような場合には、海貨業者に正しい名前の確認を行います。
 
 従来船社は、CYへの搬入及び船積書類(D/R情報)提出の締切日を、本船入港1日前としていましたが、24時間ルールが導入され、遅くとも船積み24時間前に積荷目録をCBPに送信しなければならなくなったため、北米航路についてはCY搬入締切日(および船積書類受付締切日)を本船入港の3日前に早め、実際には本船入港の2日前に積荷目録を送信して積荷許可をとるようにしています。
 
<船積み前の日本側関係諸手続きの流れ>
 
 本ルールでは、船長に正確なデータを期限内に送信することが義務付けられており、これに従わなかった場合には船長(=運行船社)に初回$5,000、二回目より$10,000のペナルティが課せられます。尚、直接House B/Lの情報を送信するNVOCCについても、同様に$5,000のペナルティが課せられます。
 
 CBPに送られた積荷目録は、AMSの中で自動的に仕分けされて、各揚地の税関に置かれているMRU( = Manifest Review Unit)に送付され、MRUの検査官(Inspector)が内容をチェックします。積荷目録の記載内容が不十分であった場合には、船社に対しB/L単位で“Not to Load”というメッセージが送られてきます。“Not to Load”のメッセージを受け取った船社は、必要であればMRUにコンタクトの上、何が不十分であったのかを確認し、データを修正します。船社は修正したB/L情報をAMSに再度送信しますが、同時にMRUにコンタクトして修正した情報の再検査を依頼します。修正された情報が問題ないと判断されれば MRUは“OK to Load”のメッセージを船社に返信します。なお、情報が正しく修正されても、MRUの検査官が承認しない時には、船社はWashington D/CにあるCBPのManifest Compliance Divisionに再検査を求めることができます。
 
 CBPは船社から受け取った積荷目録の受信確認はしますが、“Not to Load”のメッセージを発信したB/L情報が正しく修正された場合を除いて、“OK to Load”のメッセージは返信しません。従って、船社は積荷目録を送信して24時間の間“Not to Load”のメッセージがこなかったもの、及びデータ修正後“OK to Load”のメッセージが来たものについてのみ“Safe to Load”として船積みを行います。
 CBPより“Not to Load”のメッセージを受信後、修正データを送信しても、24時間以内に“OK to Load”のメッセージがこなければ、船社はそのコンテナを積むことができませんが、“OK to Load”のメッセージは修正後かなり早いタイミングで送信されてきますので、時間的に積めなくなるというケースはさほど多くないようです。
 
 貨物の記載が十分であっても、MRUの検査官が貨物の内容物について疑問をもった場合には、検査官は貨物の実物検査を求めることができます。実物検査を行う場合には、通常検査官は“Hold for inspection or intensive exam at discharge port”というメッセージを船社に送ります。米国(揚港)での検査となりますので、貨物は“Safe to Load”と同様に船積みができます。このコンテナは米国の港に到着後、CBPにより検査が行われ、問題がなければ“Hold”が解除されて、受荷主へ引き渡すことができます。船積み後であっても検査官は貨物の実物検査を求めることができ、その貨物は“Hold”のステータスに変わります。なお、CBPは積地国の税関に協力を求めて、積地でも検査を行うことができることになっています。
 
 CBPは船積み後、揚地等B/L情報の変更を行うことを認めており、船積み後に情報の変更があった場合には、船社は本船到着前に送信する揚荷の積荷目録にその変更を加えてCBPに送信しています。CBPは受荷主から提出されたデータと照合して、最終的な輸入許可を出します。尚、船積み後の情報の変更については、CBPより新たなルールが施行されることになっていますが、それまでは現行通り揚荷の積荷目録に全ての変更を送信する(29CFR4.12)で対応してよいことになっています。
 
1 Break Bulk Cargoの免責申請には、以下の情報の提出が必要とされます。1.船社のIRS番号、2.貨物梱包の場所や方法、3.寄港地、4.Break Bulk Cargoを運ぶ本船の船名、隻数及びIMO番号、5.荷主のリスト及び荷主がC-TPAT( = Customs-Trade Partnership Against Terrorism)の会員かどうか
2 D/RはCY/CFSへ貨物が搬入された際、B/L正本の引換証として船社が発行していたものですが、現在では多くの情報が電子的に送受信されており、D/Rで本人確認をする必要がなくなってきたことから、ほとんどの船社がD/Rの発行を取りやめています。このため、日本船主協会と当協会は、現行D/Rを見直し、B/L作成に主眼を置きCLP情報も取り込んだ新Formを作成しB/Lを作成するための指示書という意味で名称もB/L Instructionsと変更致しました。新Formは本年4月1日より使用開始し順次切り替えていく予定です。
3 24時間ルールでCBPは以下のデータ項目を船社に求めています。1.米国に向かう直前の米国以外の最終積港、2.船社のSCACコード、3.本船次航、4.最初の米国の港への到着予定日、5.B/L番号及び貨物の最小梱包単位での数量、6.米国向け貨物を最初に受け取った米国外の港、7.貨物の正確な記述(或いはHTSコード)と貨物の重量、8.出荷主の完全な名前及び住所(或いはCBPが付与するID Number)9.受荷受或いは貨物のOwner(或いは代理人)の完全な名前及び住所(或いはCBPが付与するID Number)、10.本船名、ドキュメントが作成された国。公式船舶番号、11.貨物が積まれた米国外の港、12.危険品コード、13.コンテナ番号、14.シール番号
 
2.2.2 船社から見た問題点
 米国の24時間ルールは、米国の海事安全保障上の一環として出されたルールですが、従来の貿易実務に大きな変更をもたらしました。船社は同業界の団体であるWorld Shipping Counselなどを通じ、船積みの実務に支障を来たさないように求めましたが、実務上の問題が再考されないまま導入されたため、全ての貿易関係者が努力して短縮してきた輸出貨物のリードタイムが大きく後退してしまいました。
 
 AMSは米国輸入通関システムであるACS( = the Customs Automated Commercial System)の一部ですが、船社(並びにNVOCC)にしかアクセス(積荷目録の送信)することができません。従来船社は自社のB/Lだけを提出すればよかったわけですが、24時間ルールでは、NVOCCのHouse B/Lも入手の上、電子的に送信することが義務付けられました。加えて、2.2.1.船社の事務処理等手順で述べた通り、米国向け以外の貨物も申告する必要があるため、短時間に大量のデータを入力しなければなりません。船社は“Not to Load”のメッセージを受け取ることがあることを前提に、船積書類の締切日を本船入港3日前に早め、積荷目録の情報を本船入港48時間前に送信するようにしていますが、積荷目録は一つのファイルで送らなければならないことから、時間的にかなり厳しい入力作業を強いられています。日本では、B/L情報を始めとして港湾関係情報の半分以上が書類によって処理されているため、港湾のシステム化の大きな足かせとなっており、EDI化が進まなければこれ以上の時間短縮は困難と思われます。尚、CBPはACE( = Automated Commercial Environment)というシステムを開発中で、ACEでは船社のほか、通関ブローカー、出荷主、輸入業者もデータの送信ができることになるようです。
 
 また、欧州もEU関税法(規則No2913/92)が改正され、24時間ルールを含めて実施規則が2006年中ごろに実施される予定です。欧州の24時間ルールは、提出期限の緩和措置がとられる模様ですが、基本的には北米と同様、コンテナ貨物について船積み24時間前に電子的に送信することが義務付けられています。24時間ルールが導入されれば、欧州航路も、コンテナ搬入締切日を本船入港3日前にせざるを得なくなると思いますが、船社にとっては短期間に処理するデータの量が更に多くなり、時間内に適正に処理することが大きな課題になります。
 
 日本からの輸出は、日本税関が本船入港前に輸出貨物の審査を行い、輸出許可を与える仕組みになっており、ある意味では日米で二重の作業を行っています。日本では書類による通関を認めていることに問題がありますが、日米両税関が協力して簡素化をして欲しいという要望があります。
 
 コンテナの搬入締切日が早まり、リードタイムが伸びたことは、荷主のコストに大きな影響を与えましたが、一方で船社も、積荷の詳しい情報だけでなく、本船のスケジュール等の船社情報もCBPに連絡しなければならなくなったため、情報システムの変更を余儀なくされただけでなく、正確な情報の提供のため、従来なかった作業が発生しており、コストの増加に繋がっています。
 
 北米の24時間ルールは、安全保障上の抑止力にはなるかもしれませんが、船社はコンテナに入っている貨物の内容まで調査することはできず、特に現行の手順では、その費用のわりにテロ対策としての実効性は薄いのではないかと思います。
 
2.2.3 対応策
 北米航路では、24時間ルールのためコンテナ搬入の締切日と船積書類の受付締切日の両方を本船入港日の3日前にしていますが、24時間ルールで求められているのは、積荷目録の送信であり、必ずしもコンテナの搬入がこれに準じなければならないということではありません。しかしながら、貨物情報の多くは最終的にコンテナ積み終わって確定することから、事前に提供された貨物情報の内容が変更することも多く見受けられます。船積後の貨物情報の変更は、CBPも認めていますが、本ルールの罰則の対象は船社であることもあり、CBPへ送付したB/L情報と実際のコンテナの内容が異なったり、コンテナ搬入が締切日に間に合わないようなリスクをできる限り避けるため、コンテナの搬入と書類の締切日を同じ日にしています。B/L情報のかなりの部分は工場出荷前に確定していることから、サプライチェーンを形成するあらゆる関係者が情報を交換し、協力して上記のようなリスクを避ける体制を作り、コンテナの搬入締切日を遅らせる努力を行うべきであろうと考えます。
 
 欧米と同様の船積24時間前ではありませんが、日本においても積荷目録の情報を含め入港関係書類の事前報告(原則として本船入港24時間前)を義務化する方向で、本年中にも関税法が改正される予定です。日本船主協会など海運関係団体は、情報の電子化の義務化を要望しています。
 
 船社は、通関情報処理センター(SeaNACCS)や港湾物流情報システム協会(POLINET)と協力して、B/L情報(D/R情報)のEDI化の促進に取り組んできましたが、一部の外国船社が未加入であったり、システムにNVOCCの概念がない等の理由により中小海貨業者のシステム化が進まず、半分以上のB/L情報が未だ書類で提出されています。日本が今後とも欧米に同調、協力してテロ対策を進めていくのであれば、港湾関係のシステム化が必須であり、情報の電子化は義務化することが望ましい方向と考えます。
 
 最後に、日本では輸出通関という制度があり、本来貨物検査を含め輸出国側が責任を持って輸出を行うのがあるべき姿です。欧州の改正関税法では、AEO( = Authorized Economic Operator)という概念を事業者に付与して、セキュリティに関連する円滑化と税関規則に関連する簡素化を図るようですが、いずれにせよ二重の作業は避けられず、日本の税関は、欧米の税関と直接話し合いをして、少ないコストでより実効性の高いテロ対策を提案していくべきと考えます。


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更新日: 2019年11月30日

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