中国
I. 中国造船業
(1) 産業規模 国家統計局の統計によれば、国内の新造船・修繕船工場の総数は386に達している(年間収入500万人民元未満の小規模工場を除く)。造船所は臨海地区と河川沿いに立地し、従業員総数は228,038名。主要造船所は上海、大連、広州の3大造船中心地に集中している。
新造船・修繕船工場以外に、72の舶用機器工場があり(年間収入500万人民元未満の小規模工場を除く)、その従業員総数は45,869名に上る。
第1表 造船関連統計(2000年)
部門 |
工場数 |
従業員数 |
総収入額
(単位:百万人民元*) |
航洋船 |
64 |
118,374 |
19,657 |
川船 |
108 |
33,050 |
2,797 |
漁船 |
46 |
11,680 |
1,145 |
修繕船 |
168 |
64,934 |
639,567 |
舶用機器 |
72 |
45,869 |
4,167 |
計 |
458 |
273,907 |
34,163 |
*1.0米ドル=8.3人民元
(2) 新造船工事量 近年、鋼船の建造量は著しく増加し、2000年の建造量は340万トンを超えた。
第2表 中国における鋼船の建造量(単位;千トン)
年 |
中国本土全造船所 |
1990 |
1,409.9 |
1996 |
3,767.2 |
1997 |
3,845.2 |
1998 |
3,141.4 |
1999 |
3,030.5 |
2000 |
3,462.6 |
注:中国の造船業界では、船舶建造量を主として貨物船の重量トン数、客船、タグ等の排水量を合計した複合値で示している。
ロイズ船級協会の統計によれば、2000年における中国の船舶竣工量は1,483,740GTで、全世界の竣工量に4.72%のシェアを占めた。
第3表 中国の船舶建造量
年 |
隻数 |
総トン数 |
世界におけるシェア |
1992 |
110 |
631,920 |
3.38% |
1993 |
104 |
735,494 |
3.58% |
1994 |
136 |
1,072,503 |
5.46% |
1995 |
159 |
953,068 |
4.20% |
1996 |
138 |
1,102,405 |
4.27% |
1997 |
152 |
1,478,617 |
5.79% |
1998 |
154 |
1,465,765 |
5.77% |
1999 |
144 |
1,556,247 |
5.60% |
2000 |
101 |
1,483,740 |
4.72% |
備考 1.出所:Lloyd’s Register of Shipping〈World Fleet Statistics2000〉
2.上記のデータは台湾を含まず。
II. 中国における造船所の分布と主要造船所
中国の造船所は、上海、江蘇、遼寧、広東、浙江、山東、天津等、主として臨海地域の省や都市に立地している。また広西、安東、湖北、四川、江西の各州にも中小造船所が存在する。
以下の各造船所は、売上高、竣工量、手持工事量、輸出価額から判断して中国の主力造船所といえる。すなわち江南造船(集団)公司、滬東中華造船集団公司、広州国際股?有限公司、上海船廠(以上いずれも中国船舶工業集団公司(CSSC)所属)、大連造船廠、大連新廠、渤海造船廠(以上は中国船舶重工業集団公司(CSIC)所属)の各造船所。CSSCおよびCSIC傘下以外にも揚子江船廠、江都粤海造船廠、新世紀造船所、江蘇省の江揚船廠、南通中遠川崎船舶工程公司、烟台Raffles船廠、福建省の厦門造船廠、馬尾造船廠、長江航運集団金陵船廠等も大規模な建造能力を保有している。
第4表 中国の主要造船所
中国船舶工業集団公司(CSSC)
(計7造船所) |
江南造船集団公司、滬東中華造船集団公司、
上海船廠、蕪湖造船廠、江州造船廠、
広州造船廠、文沖船廠 |
中国船舶重工業集団公司(CSIC)
(計4造船所) |
大連造船新廠、大連造船廠、渤海造船廠、
新港船廠 |
各省の造船所(計14造船所) |
黄海造船廠、江東船廠、江都造船廠、
揚子江船廠、靖江造船廠(新世紀造船廠)、
江揚船廠、金陵船廠、馬尾造船廠、青山船廠、
威海船廠、温州造船廠、厦門造船廠、宣昌船廠、浙江船廠 |
外国との合弁造船所(計3造船所) |
南通中遠川崎船舶工程公司、
上海Edward造船所、烟台Raffles船廠 |
III. 造船業の規制管理システム
中華人民共和国国務院の決定により、国内造船業の規制管理は、1998年に設置された国防科学技術工業委員会(略称COSTIND)の所轄となった。COSTINDの定める任務分担にしたがって、民需生産開発部が造船業の規制管理の実施に当っている。民需生産開発部内に造船課があって、この課が日常的業務を担当する。国内造船産業の管理には様々な側面があるが、開発計画、政策、規則、業界基準の策定、産業活動の監督、調整などが主な側面である。
旧中国造船工業公司は1999年7月1日を以って、CSSC(中国船舶工業集団公司)とCSIC(中国船舶重工業集団公司)に分割された。両企業集団は大規模な国有企業で、また国家から投資の権限を認められた企業体でもある。COSTINDと両大企業との間には、行政上の従属関係はない。COSTINDによる規制管理は両集団の本社を通じて実施される。両大集団の従属企業をCOSTINDが直接管理するということはない。
CSSCとCSICの他にも、中国長江航運集団總公司、中商集団口岸船舶工業公司、中国水産(集団)總公司、中国遠洋運輸(集団)總公司(COSCO)も新造船・修繕船事業(漁船の新造・修繕も含む)を行っている。これらの企業に対しても、それぞれのグループを通じてCOSTINDの規制管理が及ぶ。
いずれのグループにも属さない造船所、修繕船工場、舶用機器工場もある。うち若干は純然たる外国企業または中国と外資との合弁企業である。この種の企業に対するCOSTINDの規制管理は省政府の担当部局に依存している。これらの担当部局は、規制管理システムにおける第2水準の行政部局である。COSTINDから行政指導を受け、所管の地域における造船業の状況を報告し、造船業に関する政策、計画、法令の調整、施行を担当する。
IV. 中国造船業における最近の展開
(1) 1970年代末期まで、中国造船業は専ら国内市場を対象とし、したがって技術的に先進造船国よりはるかに後れていた。79年以降、政府の改革開放政策に則って中国の造船所は国際市場に進出した。当初、中国の造船所は、主としてハンディサイズとパナマックス型の撤積船など、在来型の船舶の輸出を手掛けた。80年代末期からは、さらに複雑かつ大型の船舶を建造している。
1999年には、中国の造船所はいくつかの重要な案件の受注に成功した。
-300,000DWT型VLCC5隻の建造をイラン国営タンカー会社から受注した。8月に契約調印。CISCの大連新廠が中国初のVLCCを建造することになった。その後、南通造船廠が日本の川崎重工業の下請として、300,000DWT型VLCC3隻の建造を受注した。
-南通造船廠は、日本の川崎重工業と提携して、中国遠洋運輸(集団)公司(COSCO)から超パナマックス型5,250TEU積みのコンテナ船2隻を受注した。滬東中華造船廠と大連新廠もそれぞれCOSCOから超パナマックス型5,618TEU積みのコンテナ船4籍を受注している。
-CSSCの広州造船廠はスウェーデン船主から乗客定員1,000名、車輌走行路延長1,500mのRO-paxフェリー(複数)を受注した。この種の船舶が中国に発注されたのは初めてのことである。
(2) 現在では28の造船所で、外国船主向けに5,000DWT超の航洋船を建造している。うち7造船所はCSSC所属、4造船所はCCSC所属、その他は地方造船所と「外国との合弁」による造船所である。
(3) 中国国務院は上海の浦東地区に外高橋造船基地を建造する計画を1999年9月に正式に承認した。新造船所は2基の建造ドックを備え、第1期工事完了時点で1,050,000DWT、第2期工事が完了すれば1,800,000DWTの建造能力を保有することになる。現在、これは中国で最大の造船所となる。
(4) 1999年9月1目付けで、新造・修繕船施設の重複建設または拡張を禁止する規則が発効した。したがって今後、中国では、造船所の新設は必ずしも自由でなくなる。
一部の外国報道機関は、中国が世界の大造船国の仲間入りすると見ている。しかし我々の見るところ、中国はまだ主要造船国とはいえない。造船能力と建造量において、日韓に遠く及ばない。中国で建造される船種は主として在来型で、ハイテク船舶はまだ数少ない。舶用機器の国内自給率も比較的低い。生産性の面では、日韓欧の造船所の後塵を拝している。中国造船所にとって最大の課題は、生産性向上、経営の強化、品質管理の改善により、国際競争に対処するのにリベートを払うなどの手段から脱却することである。
今回アジア太平洋地域における造船業の発展の状況を見るに、中国と同様、地域の多数の国が近年、造船業において大きな飛躍を遂げていることを知って大変喜ばしい。新興造船国の台頭と発展により、アジア太平洋地域は造船業の発展において新たな時代に入ることになるであろう。この目標に向かって、造船業における地域協力を一層密にして、21世紀におけるアジア太平洋造船業の一層の繁栄を目指そうではないか。